権現山の写真
権現山【南】 (317m 岐阜市・各務原市) 2002.7.14 曇り時々晴 2名→3名

六所神社(7:02)→白山神社・洲原白山分岐点(7:11)→白山神社(7:23)→鉄塔(7:27)→伊吹の滝分岐点(7:38)→山頂直下分岐点(8:00)→権現山山頂(8:08-8:49)→伊吹滝分岐点(9:11)→白山神社(9:21)→六所神社(9:35)

 近頃、休日も何かと多忙で山行も停滞気味。台風が近づいているが、日曜日はなんとか天気は持ちそうだ。10時まで空き時間ができたので、ちょっと早起きして、近場の山を歩くことにした。

 4月に山火事のあった権現山を見ておきたいと思っていたこともあり、権現山に決める。権現山という名の山は、この辺りだけでもいくつかある。今回登る権現山は、岐阜市と各務原市の市町村境の山で、東海北陸自動車道の2つ目の長いトンネルがある山である。(1つ目のトンネルは尾崎権現山) この権現山は、地図には名前が記載されていない。老洞峠を隔てて、その北にある同じ標高の山には、地図上に「権現山」と記されている。

 今年の4月5日午後、岐阜市芥見地内から発生した林野火災は、異常乾燥と折からの強風に煽られて非常に速い勢いで燃え広がり、隣接の各務原市まで含め、およそ500haもの山林を焼失するという、国内における林野火災としては稀に見る大規模な被害をもたらした。北と南の2つの権現山の山塊の大部分が焼失した。

 南の権現山の山塊は、Vの字を左に倒した形で、権現山はちょうどVの字の頂点にある。南側からの登山口はいくつかあり、伊吹の滝から登るのが一般的である。今回は、滝のさらに西にある六所神社から権現山の往復を試みる。

 六所神社は岩滝集落北の山際にある。集落の狭い道を山際まで入り、神社西にある岩滝公民館への坂を上り、公民館を左にさらに登ると10台ほどの駐車場がある。ネムノキが満開の駐車場は、朝早いこともあり、静まり返っている。

 身支度をして、山側への道を登り、東に六所神社の境内を見ながら、草むらの道を折り返すと、白山神社登山道の標識がある。白山神社への参道はブロック板で階段が作られ、しっかりとしている。常緑樹の薄暗い林の中を左に進み、須原白山への分岐点に出る。ヤブ蚊の猛攻撃で立ち止まることができない。

 分岐点を右に進み、白山神社をめざす。山の南斜面に付けられた道からは、所々で南側の展望が得られる。目の前を走る自動車道とその向こうの各務原市街。削り取られた三井山の姿も見える。道に沿って白山神社手前の電話アンテナまでコンクリートの電柱が続く。咲き遅れたクチナシの白い花がまぶしい。早朝とはいえ、夏の朝日に照らされて汗が噴き出す。

 朝露で滑りやすい岩の階段を上れば白山神社の大きな拝殿に着く。お賽銭を投げて、神社から北東につけられた道をヒノキ林に入る。少し下って、展望のよい鉄塔下を通り、長い尾根歩きなる。火事の焼け跡が現れる。真っ黒になった大地から真っ黒な木々が直立し、まるで戦場を歩いているようだ。しかし、多くの木々の根本からはたくさんの新枝が伸び始めており、ススキやワラビなどの草も繁茂し始めている。山は生きている。自然の生命力を感じる。

 その時、前方からやって来る一人の男性が目に入った。なんとクーさんではないか。クーさんは、今月、HP「クーの山歩記」を公開し、私のHPに紹介をしたばかり。伊吹北尾根以来の再会である。偶然とは思えない偶然に互いにびっくり。クーさんは伊吹の滝から白山神社をめざしており、ひとまず別れた。

 直ぐに、伊吹の滝への分岐点に出て、そのまま尾根を直進。皮肉なことに、樹木がないだけに風通しがよく気持ちがいい。尾根の途中にあった休息所の小屋は跡形もなく、コンクリートの土台だけになっている。傍らに「火の用心」と書かれた真っ赤な防火用ドラム缶が置かれている。なんとも言えない光景である。

 多少の起伏を上下しながら、尾根を真っ直ぐに東に進み、少し下って分岐点に出る。見上げると、北へ真っ直ぐに続く広い階段の先には鳥居があり、そこが山頂である。分岐点すぐ上に、昭和9年の台風で鳥居が飛ばされ、その柱が落ちた地点が表示されている。鳥居の笠の部分は山頂の土留めに使われている。

 この坂がきつい。数分で登れるが、息が切れる。振り向けば、ゴルフ場を眼下に展望がすばらしい。山頂手前で下山する登山者にあいさつをかわし、ようやく頂上へ。山頂も焼け野原になっているが、多度神社の社と山名表示板は山火事後に設置されたようで、新品であった。

 曇り気味で遠くまでの展望はないが、南側には濃尾平野が広がる。コーヒーが沸く頃、クーさんが山頂到着。3人で、休日のモーニングコーヒーを楽しむ。その後、北山に向かってもう一つの尾根を西に歩く。この辺りには、ヒカゲツツジがたくさんあったが、生き残っているのだろうか。

 北側眼下に老洞峠に続く峠道が見える。目の前には焼けこげたもう1つの権現山、さらに向こうには、誕生山と頭を雲に隠した天王山が望める。以前、展望台であった場所からは、西方に金華山が望める。さらに西に進んだが、道は不明瞭になり、下りにかかった。北山の位置はよく分からない。時間もないので、今日はここまでとし、今来た道を下った。

 長い南尾根の途中に北へ岩が突き出た見晴台があり、ここから見る金華山方面の景色は、諏訪山団地を手前にまるで箱庭を見るようだ。クーさんとは、伊吹の滝分岐点で、またの再会を約束して別れた。分岐点からは、他の登山者に会うこともなく、六所神社の駐車場に着いた。落下したネムの花で車が覆われていた。

 山火事の恐ろしさと自然の生命力の力強さを実感し、また偶然の出会いに驚かされた今日の山歩き。早起きは、やはり何かいいことがある。
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