白山1
白山2
白山 (2702m 白川村) 2004.7.25 晴れ・曇り 2人

大白川駐車場(4:52)→白山室堂4.9km地点(5:52)→白山室堂3.9km地点(6:39)→大倉山山頂(7:05)→大倉山避難小屋(7:08)→白山室堂1.9km地点(7:40)→カンクラ雪渓(8:10)→白山室堂0.5km地点・南竜ヶ馬場分岐点(8:51)→室堂(9:05-9:26)→御前峰(10:07-11:15)→大汝峰分岐点(11:52)→大汝峰山頂(12:13-12:35)→お池巡りコース合流(12:52)→室堂(13:28-13:42)→白山室堂0.5km地点・南竜ヶ馬場分岐点(13:54)→カンクラ雪渓(14:19)→白山室堂1.9km地点(14:38)→大倉山避難小屋(14:50-15:00)→大倉山山頂(15:04)→白山室堂3.9km地点(15:19)→大白川駐車場(16:11)

 「岐阜県の山歩き」というタイトルを付けたからには、どうしてもレポートしなければならない山がまだいくつか残っている。その1つが白山。信仰の山でもあり、また高山植物の豊富な花の山でもあることから、7月には大勢の登山者で賑わう。室堂の山小屋は予約制であることから、昨年、南竜ヶ馬場でのテント泊を計画したが、天候不順のため今年に延期した。しかし、今年も1泊での山行の計画が立たない。であれば、思い切って日帰り登山を計画。28年前に、大白川から登ったことがあるが、室堂手前の急登で、かなりバテた記憶がある。とても日帰りは無理と決め込んでいたが、コースタイムからすると前夜泊で早朝出発であれば、十分に日帰りできる距離である。先週の別山日帰りで自信がついたところでもある。

 前日の夜、夕食をすまして家を出た。東海北陸自動車道荘川ICから御母衣湖畔を走り、白川村平瀬の手前から、「白山公園」の案内に従って左折。ここから白水湖のある白山登山口までの13kmは、舗装道路でありカーブで対向車に注意すれば問題は無い。西に傾く6日月を追いながら車を走らせる。所々の路肩で明るいランプをつけて夜間採集する光景がみられた。昔、我々も経験がある光景で懐かしい。 この道はちょうど三方崩山の直下を走っている。昨年9月に三方崩山に登った時は、この切れ落ちた谷を見下ろしながら歩いたことを思い出した。

 山側からの流れを2.3度渡り、ようやくキャンプ場が近づいてきた。キャンプ場手前の広場で若い女性2名に車を止められた。駐車料金が必要と思い、小銭を探していると、女性から「カードをお持ちですか?」と聞かれた。「?? あの白山登山に来たのですが・・・」「登山の方ですか。駐車場は奥です。」「何かあるの?」「キャンプ場でイベントがあるんです。」このイベントは、明日の早朝に、歩き始めて分かることになる。

 真っ暗な中、直進すると、再び若者の検問。登山であることを告げると、奥の駐車場の右のほうに止めるように言われた。すぐに突き当たりの大きな駐車場に到着。たくさんの車が停まっている。白山登山者の車のようだ。中にはテントを張って早朝登山を目指すグループもいる。トイレの前に車を停めて、周囲を散策。駐車場を一周してみたが暗くて登山口が分らない。見上げれば頭上を天の川が流れている。登山口は明日になれば分るだろうと、缶ビールを飲んで、エアーベットに体を沈めた。次々にやって来る車の音を聞きながら、深い眠りに落ちた。

 4時。携帯のアラームで目が覚めた。薄暗い中で朝食を済ませ、身支度。周囲から人声が聞こえ、あわただしくなってきた。北の山にはヘッドランプの灯りがチラチラみえる。トイレの左側を登っていくパーティーが見えた。どうやら登山口はここらしい。天気は良さそうだ。5時前に出発。ここから山頂までの標高差は1500m弱。今回もロングコース。ゆっくりゆっくり登ることにした。

 トイレの横から200mほどで上段の駐車場を抜けログハウスの横に出る。このログハウスから右へ続く道の先に正式な登山口の表示がある。この駐車場に停めると最も登山口に近い。ログハウスに登山届を提出。小屋の脇から急斜面に付けられた丸木階段のあるジグザグ道に取り付く。なだらかな尾根に出て、左側に深い谷を見る。谷川の音が響き渡る。尾根が崩壊して、ロープの張られた場所が1箇所ある。後方から、太鼓の音が響いてくる。歓声も聞こえる。どうやら、昨夜のイベントは徹夜で音楽祭をやっているようだ。

 道は急緩を繰り返しながらブナ林を登っていく。休憩しているパーティーを追い抜く。実を付けたアカモノやマイズルソウ、黄色い花のオトギリソウやミヤマコウゾリナが見られる。倒木をまたいだりくぐったりして、歩き始めて1時間ほどで美しいブナ林に入る。後方の樹間から差し込む朝日が美しい。白山室堂まで4.9km、大白川まで2kmと書かれた表示板を通過。室堂までは6.9kmあることになる。まだ、先は長い。

 ブナ林のジグザグの登りで1時間目の休憩。先ほど追い抜いたパーティーに追いつかれる。各務原市からの皆さんでした。この先、ササが多くなり、展望のいい所もある。ササの中のブナやダケカンバの大木が朝日に映えて美しい。ササ藪を切り開いたばかりの歩きにくい場所もあり、滑らないように通過。オオバミゾホウズキ、ヨツバヒヨドリ、トリアシショウマ、タマガワホトトギスなどが見られた。

 展望のいいガレ場を2箇所ほど登る。ロープが設置してあるところもあり、落石のないように注意。この辺りのダケカンバはすばらしい。緑色の白水湖も美しい。東に回りこむところがあり,ここから三方崩山がシルエットで浮かんでいた。昨年9月に登ったすばらしい山である。室堂まで3.9km表示を通過。半分歩いた。まだ、音楽祭の音が聞こえる。

 初めての下山者とすれ違った。朝、室堂を発った登山者のようだ。緑の美しいなだらかな道を歩くと、右手前方に2つのすばらしい山が! 目指す白山だ。左が御前峰、右が剣ヶ峰。なんと遠いことか・・・。前方に白山を見ながら展望の良い尾根に出る。左が急斜面でヤマハハコなどが見られる。左の山にガスが湧きあがり始めた。ヨツバシオガマや赤い実を付けたノウゴウイチゴが現れる。

 再び左側が切れ落ちた展望のいい尾根に出る。斜面にはシモツケソウ、ニッコウキスゲ、オオバギボウシなどのお花畑。展望を楽しみ、北に回り込んでオオバミゾホウズキの黄色い花を見ながら表示板へ。「大倉山2038.6m」の表示。コースタイムよりも少し早く大倉山に着いた。山頂からの展望はない。大倉山避難小屋まで0.3kmの表示があるので、とりあえず小屋まで行くことにした。

 ダケカンバの美しい尾根からは白山が見える。ゆるやかに下って避難小屋に到着。小屋で休息したパーティーと入れ替わりに中をのぞいてみた。小さめではあるが、実にきれいな小屋である。トイレと水場はない。ここで2回目の休憩をとろうかと思ったが、道はまだ下っている。鞍部から登り始めた辺りで休憩することとし、小屋を後にした。ササの中の掘割の道を下る。ダケカンバが美しい。白山が手前の山に隠れてしだいに見えなくなっていく。鞍部から丸木の階段を登る。お花畑の斜面につけられた道はすばらしい。後方には大倉山がぐんぐん低くなっていく。その向こうには三方崩山の崩壊地が荒々しい。

 少し登って休憩。ミカンやコンニャクゼリーがおいしい。この辺りから下山の登山者も増え、にぎやかになってくる。休息後、すぐに室堂1.9km地点通過。赤土のジグザグの道には、イブキトラノオやハクサンフウロなど白山を代表する花が登山道を飾る。3時間近く歩いているが、花を見ていると疲れも忘れてしまう。キヌガサソウやテガタチドリを見ながら、左が崩壊した崖に出る。前方には黄色い花がたくさんある緑の斜面が望めた。ニッコウキスゲだろうと思ったが、近づいてみるとマルバタケブキやオタカラコウなどキク科の大柄な花達だった。この辺りにはグンナイフウロ、エゾシオガマ、イワオウギも見られる。

 北に回りこんでカンクラ雪渓の表示。室堂まで後1.2km。またまた展望のいい尾根に出た。痩せ尾根でタカネナデシコやミヤマオトコヨモギに出会う。雲が垂れ込めた空に別山がすばらしい山容を見せる。1週間前にはあの山頂に立っていた。先週、展望が良ければ、別山からこの尾根が見えたに違いない。尾根の途中から崩壊が進み危険なため、通行止めの表示。北側に迂回し、ハクサンシャクナゲの花を見ながら再び尾根に出る。シモツケソウやマツムシソウ、イブキトラノオなどすばらしいお花畑の斜面を見下ろす。28年前に白山に登った記憶はすっかり薄れているが、この急斜面のお花畑の記憶ははっきりと残っている。28年前と同じ場所に立っている。時の流れはなんと速いことか・・・。

 右手に雪渓や御前峰を見ながら、展望のよい直登丸木階段に取り付く。息が切れる。下山者から、「この急登の後は室堂までなだらかですよ」と声をかけられた。最後の頑張りどころ。ハクサンコザクラやクロユリ、チングルマの群落、その向こうに堂々の御前峰。最高のロケーション。ハクサンコザクラとは28年ぶりの対面。感動である。

 急坂を登り詰めて、ハイマツやナナカマドの道を歩く。こんどはコバイケイソウやミヤマリンドウのお出迎え。賽の河原、南竜ヶ馬場の分岐点を通過し、前方に室堂の小屋の赤い屋根が見えた。この辺りのクロユリの大群落はすばらしい。1uにいくつクロユリが咲いているのだろうか。とにかく見事である。

 思ったよりも早く、4時間15分ほどで室堂に着いた。大勢の人で、小屋の前の広場は大賑わい。知らぬ間に湧き出たガスで御前峰山頂は見えない。ベンチに座って行動食で一息。20分ほど休憩して、神社でお賽銭を投げ、山頂を目指す。ここから御前峰山頂までは石の敷き詰められた広い参道が続く。ちょっと、登山というイメージではないが、この道も結構登りがいがある。クルマユリを見ながら、一歩一歩登る。後方の室堂の赤い屋根が小さくなっていく。別山はかすかに見える。

 室堂からちょうど40分、コースタイムどおりで御前峰到着。さすがここの白山神社は立派である。手を打って、標識のある山頂へ。石の山頂は大勢の登山者で埋め尽くされていた。順番を待って写真を撮ってもらう。ガスが流れ、その切れ間から北側の剣ヶ峰や大汝峰、雪渓や池が見える。ちょっと早いが山頂で昼食にする。冷えたビールがおいしい。ランチメニューは簡単にできるリゾットとラーメン。周りをよく見れば、皆さん小屋のお弁当。こんなところで自炊している人などいない。いつもの山の雰囲気がなく、観光地に来たようでちょっと恥ずかしい。

 1時間ほどの昼食の後、お池めぐりのため、御前峰をお鉢に向かって下る。奇怪な岩が並ぶ間を慎重に北側へ下る。ザレた急斜面で滑らないように注意。この辺りは砂礫で高山植物は少ない。油ヶ池の表示板を通過。この池をスタートに、全部で7つの池を巡る。最後の千蛇ヶ池までは0.8kmある。次に雪渓の美しい紺屋ヶ池。少し歩いて、一番大きな翠ヶ池に出る。翠ヶ池の後方には剣ヶ峰は名前の通り鋭い峰が空を突き刺す。イワギキョウ、チングルマ、ヒメクワガタ、イワツメクサなどが咲き乱れている。

 時計と反対周りに歩き、血ノ池を経て、大汝峰への分岐点に出る。時計と大汝峰山頂を見比べながら、あの距離なら十分に登れる時間はあると判断。ハイマツの道を歩いて大汝峰を目指す。この辺りのミヤマリンドウの群落はすばらしい。麓に着くと釈迦新道、中宮温泉等の分岐点。大汝峰までは0.5km。大汝峰から下ってきた単独男性に出会った。聞けば白山釈迦岳から縦走してきたそうだ。これも日帰りではロングコース。たいしたものだと感心。

 岩のペンキでつけられた○印を追って、急斜面を登っていく。踏み跡が分かりにくく、ペンキが頼り。浮き石も多く落石に注意。イワギキョウやイワツメクサがたくさん咲いている。10分程で急登をこなし、稜線を歩けば麓から20分程で山頂到着。山頂は広く、表示柱の横には石積みの壁の中にお社があった。別山や御前峰など白山の山頂には大小はあるがどこにも同じような造りのお社がある。信仰の山である。お社の裏からは翠ヶ池を従えた御前峰と剣ヶ峰がすばらしい。3山の中では、この山頂からの景色が最もいいのではないだろうか。

 記念写真を撮って山頂を後に下りかけると、登ってくる単独男性に出会った。山頂の避難小屋を管理してみえるグループの1人で、避難小屋の様子を見るために登頂されたそうだ。避難小屋? 北を見れば石積みがある。その中が避難小屋になっているらしい。せっかくなので中を見せてもらう。石積みの中には小さな小屋があり、板で2段ベットのように寝られる仕掛け。「ここで泊まることを目的に来る人がいますが、それは禁止しています。それを書きに来たんです。」小屋にはノートが置かれ、古い記録は印刷して本として残されていた。「この小屋が壊れれば、もう環境庁の許可が下りないから、時々整備に来てます。」 こうした方々のおかげで避難小屋が守られていることを思うと頭が下がる。冬にこの小屋は巨大なエビのしっぽになるそうだ。小屋の裏からは、双六岳を思わせるなだらかな稜線の向こうに、釈迦岳が優美な姿を見せる。いつかは登ってみたい山だと思った。

 時間もないので、男性と別れ、室堂を目指す。大勢の登山者が休息中の千蛇ヶ池で室堂への道が2手に分かれる。花が多そうな遠回りのコースを選んだ。室堂までのコースタイムは40分。近道よりも10分ほど時間がかかる。広めの登山道を下る。ミヤマダイモンジソウ、シナノキンバイ、ハクサンコザクラなどここも美しいお花畑が続く。道は南斜面のハイマツの中を室堂目指してゆっくり下っていく。団体さんの後について、スローペース。小さな流れを渡りクロユリが現れると室堂到着。

 当初の計画の10分遅れで1時40分に室堂を出発。今夜、小屋泊まりの登山者がたくさん登ってくる。別山は雲に隠れているが、三方崩山は午後の光に崩壊地が赤く輝き、その頭上には巨大な入道雲が湧き上がっている。まさに、夏の風景。眼下の白水湖がきれいだ。

 急な丸木階段を下り、お花畑の斜面を通過したところで、オレンジ色の帽子の団体さんが登ってきた。小旗には福崎町と書かれている。「福崎町?」「兵庫県にあります。早朝出発して来ました。まだまだ登ってきますよ。」元気のいい皆さん、花を楽しみながら登ってみえた。ロングコースの下りはさすがに疲れる。大倉山避難小屋でエネルギーを補給。

 4人の男性パーティーに抜きつ抜かれつ下った。彼らの足は速く先に行ってもらい、彼らが花の写真を撮っている間に追い抜くという繰り返しが続いた。ガケカンバからブナの林へ。後ろにピッタリつかれて下るのは気持ちがいいものではないが、道を譲っても追い抜くことになるのでそのまま下る。後方4人はなかなか止まらない。後で思えば、この辺りに止まって写真を撮るような花はない。こうなると何か意地のようなものが出てきて、彼らのペースと同等又はそれ以上であれば道を譲る必要はないと思い、競歩のように風をきって全力で下った。こんな下り方はタブーで事故のもと。分かっていながら、子供のように下った。この早歩きが、後に思わぬ幸運をもたらすことになる・・・。しだいに差が開いてきた。ここで気を抜いてはいけないと、すっかり競争気分。4人の方もなんという夫婦だときっと話題になってるだろう。

 足が痛くなりそうなところでログハウス。両手を上げてテープを切る姿が浮かんだ。と、突然、小雨。小雨は一気に豪雨となった。車までの100mを今度は本気で全力疾走。さすがにヘトヘトで走れなかった。ちょっと濡れたが間一髪。早歩きもいいことがあるが、2度とこんなことはしないと反省。

 白山は1泊の山だと思っていたが、十分に日帰りできる山であることを発見。花は一級、まさに花の山。28年前と変わらない花に出会えたことがうれしかった。帰路、平瀬の温泉で汗を流し、物凄い雷雨の中、自動車道を下った。次に白山に登るときは、南竜でテン泊しよう。もう一度、今日の花達に会うために。(白山の花達
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