トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号) ※一部誤動作あり
東長谷 (852m 揖斐川町) 2009.2.11 晴れ・曇り・雪 2人

六社神社(8:51)→橋(8:54)→ホースのある尾根(9:08)→天然林へ(9:57)→650.8m三角点付近(11:10)→人工林のあるピーク(10:36)→東長谷山頂(10:50)→1つ目のピーク(11:06)→2つ目のピーク(11:16-11:22)→東長谷山頂(11:45-12:51)→650.8m三角点(13:19)→人工林へ(13:27)→茶畑(14:03)→六社神社(14:14)

 揖斐の山で以前から気になっていた山が東長谷・高天神である。旧春日村の中心街の南にある山で、「岐阜の山旅100コース美濃(上)」にも掲載されている。今年は雪が少ないことから、この時期に登ってみることにした。高天神までのコースタイムは4時間近くかかる。雪のある時期でもあり、今回は2時間程度で登れる東長谷までとし、春日村を目指した。

 正面に見える国見岳の山腹は白いが、周囲に雪はない。モリモリ村入り口のトイレに寄って、狭い集落を抜ける。さざれ石公園方向に右折して橋を渡ると、右手高台に春日小学校、左には六社神社の鳥居が現れる。六社神社の境内の隅に駐車させていただき、靴を履き替えた。雪は少ないと思ったが、国見岳の雪の状況から、安全策としてピッケルとワカンを持った。
 
 神社の鳥居を出て、車道を左へ歩くとすぐにカーブがあり、谷側にトタン板で作られた小屋とカーブミラーがある。ここから車道を左に入り、マンホールの蓋を踏んで、コンクリートの細い道を下っていく。かなり急な道で、一気に谷底まで下る。広い川には2本の丸木に鉄編を張った簡易の橋があり、鉄パイプの手すりも付いているが、渡りにかかるとちょっとスリルがある。恐る恐る渡って茶畑に入る。イノシシ避けのトタン板が張り巡らされており、トタン板の外側を回り込もうと右往左往したが、どうも抜けられそうにない。まさに茶の木畑に入る状態である。やむを得ず茶畑の縁を通って奥まで登っていくと、1枚のトタン板が外してあり、ここを抜けた。

 竹やぶの尾根に取り付く。急な斜面を登ると竹やぶは杉林となり、掘れた道を急登する。登り始めて数分で、黒いホースが横たわる尾根に飛び出した。なお、ここまでの登りのルートをよく覚えておく必要があることを下山時に痛感した。下りでは、いくつかの道が派生しており、中には谷に落ち込む雨水が作った窪みもある。
 
 ホースを跨いで人工林の道を登っていく。溝が現れ、溝の中を登るが落ち葉が深く、落ち葉の下に隠れた倒木や石ころがわずらわしい。また、倒木が邪魔しているところもあり、溝を出たり入ったりして登っていく。かなりの急斜面もある。右の天然林の樹間から国見岳から続く伊吹北尾根が朝日に赤く染まっている。北尾根の山腹には採石場があり、掘削する音が聞こえる。眼下には中山集落が見える。なだらかな道もすぐに急登となり汗をかき始めたので、シャツを脱いで長袖Tシャツ1枚で登っていく。

 人工林と天然林の境を、尾根を外さないように歩く。溝はあるものの、道と呼べるような痕跡はない。それでも、ヤブではなく、木々の間を縫って自由に歩くことができる。アカマツの大木も多い。時折、赤テープや黄色いプラスチックの境界杭が現れる。ひたすら登っていくと、ややなだらかになり、クマやシカによる皮剥ぎを防ぐための青いテープが巻かれた木が現れる。枝打ちのされていない人工林を左に見ながら歩く。右手の伊吹北尾根を見るとだいぶ登ってきたことが分かる。振り向いて、驚いた。富士山のように美しいシルエットの山が樹間に見える。鎗ヶ先山である。かなり木が邪魔しているが、この方向から目の前に見る鎗ヶ先山は実に美しい。

 紅葉したイワウチワの葉を見ながら、落ち葉の積もった溝を歩いていくと、天然林の尾根に出た。1時間以上歩いたので、明るい尾根で休憩にする。溝の中に雪が現れた。後方には鎗ヶ先山が立ち上がり、その奥の峰は鍋倉山へと続く。手前の尾根の向こうに貝月山も見え始めた。左には倉谷を挟んで894mピークが迫る。どの山も雪は少ない。眼下には春日村の民家が見える。周囲のミズナラは枯れているものが多く、カワラタケやナメコなどのキノコが生えた幹が目に付く。

 5分ほど休んで歩き始める。左の谷への斜面は疎林で、満開のマンサクの黄色い花が美しい。尾根を左に外して右山で落ち葉の急斜面を登る。ナラ枯れなどで倒木が多く、木に邪魔されずに鎗ヶ先山や貝月山が望めた。貝月山の左にはブンゲンが頭を出している。展望地はないが、樹間からこれほど展望が得られるとは思わなかった。正面に再び人工林が見え始め、溝は時計と反対周りにカーブしている。このカーブする右手辺りに650.8mの三角点があることを、帰路発見した。また、下山時に、直進しないように注意が必要な地点でもある。この辺りの左斜面も疎林であり、人によって伐採されたか、自然に枯れたか分からないが、ひこばえがたくさん見られる。カモシカの糞が落ちており、皮が剥ぎ取られた樹木も見られる。

 防風林のように並ぶ針葉樹林帯に沿って登ると、雪のたまった深い溝が現れた。溝の中を歩いたが、落ち葉が深く歩きにくいので、左右に分かれて溝の縁を歩く。かなりの急斜面を登っていく。急斜面の登りはピッケルが役に立つ。急斜面を登り切ると広い尾根となる。丸い穴があり水が溜まっているところが1箇所あった。倒木した木の根の穴であろうか。ブナやミズナラの木の間を縫いながらゆっくり登っていく。ところどころに雪が残る林は美しい。この山の魅力はまさにここにある。溝は続いているが、落ち葉に覆われて道があるかどうか分からない。しかし、疎林でどこでも歩ける。木々は淘汰され、競争に負けたものは立ち枯れて、地面に倒れ、落ち葉に埋もれて土に返っていく。かつてこの辺りも人の手が入り、2次林となっているが、近年は手付かずの状態なのであろう。四季を繰り返しながら、林は自然環境に適合した形に変化していく。この美しい落ち葉の林が何時まで形成されているのかは分からないが、心が休まる癒しの世界はいつまでも残したいものだ。

 溝を外さないように広い尾根を登っていく。雪が増えてきた。雪はアイスバーン状態で、風で飛ばされてきた落ち葉が雪にくぼみを作っている。歩いたばかりのカモシカの足跡が交差している。帰路、同じ道を戻れるように、なるべく雪にトレースを付けて歩いた。枯れたミズナラの大木にキツツキが開けた穴がいくつか見られた。時折現れる赤テープを追うと、前方に再び針葉樹林が見えてきた。登りつめると雪の積もった平地に出た。緑のユズリハがたくさん見られる。クリのイガもたくさん落ちている。ここが山頂だと思った。広場を横断して人工林に取り付き、三角点を探すが見つからない。GPSを見ると、山頂手前の810m付近であることを知る。

 山頂に向けて人工林に沿って歩く。イワウチワの群落が増えてきた。シャクナゲも見られる。尾根が狭まり、前方に三角形のピーク。このピークが東長谷山頂のようだ。最後の登りにかかる。右手の樹間に伊吹山が見えるが、曇り空に溶け込んで輪郭がよく分からない。北には鎗ヶ先山がさらに美しい尖がりを見せる。東から回り込むように雪を踏んでピークに出た。僅かに残る雪の上に三角点があった。木立に囲まれているが、木に葉がないこの時期には、周囲の山が見える。山頂から水平の尾根が南に続き、その左のくぼ地に水が溜まってかなり大きな池ができていた。池は凍って白く、神秘的な表情を見せる。歩き始めて、ちょうど2時間。まだ、11時前なので、高天神方向へもう少し歩いてみることにした。
 
 なだらかな尾根を歩く。ヤブは薄く、木々の隙間を縫う。気持ちのいい空間である。しばらく水平に歩いて、ヤセ尾根に出る。左には幼木の人工林があり、この辺りにもユズリハが多い。前方に次のピークが見える。1つ目の880mほどのピークである。尾根にはイワウチワの群落が続く。花の時期に登ってみたいと思った。鞍部から、太陽を正面に登りつめるとピークに着いた。南に高天神と思われる山が見える。地図を見ると、2つ目のピークがこの先にあるのでそこまで行ってみることにする。

 左前方に小島山を見ながら下る。赤テープがあるが、踏み跡はほとんどなく、ヤブも濃くなってきたが、十分に歩ける。鞍部から登り返して2つ目のピークに着いた。高天神はかなり近づき、林道も見えるようになった。いつしか空は厚い雲に覆われて、伊吹山は半分が雲に隠れていた。今回はここまで。高天神へはまたいつか登ろう。ピークを後に、東長谷山頂に向かって歩いてきた尾根を戻る。
 
 粉雪が舞い始めた。風が強くなり、1つ目のピークに戻る頃には、本格的に雪が降り始めた。ジャケットを着てピークを下る。前方の東長谷が白く霞み、周囲の山は雪にかき消されて見えない。伊吹山方向から吹いてくる強風が尾根を越える。吹雪の中、東長谷山頂に戻った。吹雪は納まりそうもない。人工林まで下って昼食にしようかとも思ったが、たまには雪の中でのランチもいい。山頂の北の窪みにシートを敷いてランチの準備。ガソリンストーブ2つでおでん鍋と煮込みうどんを作った。粉雪が木に積もり始め、池がスモークをかけたように幻想的な光景をつくる。

 唐辛子の利いた熱い煮込みうどんをすすりながら、癒しの空間に実を沈める。不思議に落ち着く世界だ。食事を終える頃、雪が止み、頭上一面に青空が広がった。見上げると、高速でちぎれ雲が流れていく。クリの木が枝を広げている。どこかで見た光景だ。そう、今日の山旅は、昨年の3月に登った倉見のイメージにそっくりである。溝の登りや、下部の人工林、上部の天然林、雪の状況、手付かずの自然が残る山頂付近、そしてこのクリの木・・・。シュンシュンと湯気をたてるパーコレーターを前に、いつまでもこの陽だまりにいたいと思った。

 山頂を後に、登ってきた道を下る。帰路は、鎗ヶ先山を見ながら下った。こんな急斜面だったのかと思うようなところが何箇所かあった。650・8mの三角点を確認して、ルートを誤らないように常にGPSを確認しながら下る。人工林の中も、急なところは慎重に下った。溝の中は、落ち葉の中にある濡れた倒木で滑りやすいので、できるだけ溝の外を歩いた。黒いホースを越えて、急斜面の樹林帯で、道を誤って谷に下りかけた。保安林の標識から下は道ではなく、その上で分岐しているので要注意の地点である。道が怪しいと思ったら戻ることが鉄則。茶畑に着くころ、小雨が降り始めたが、さほど雨に濡れることなく、神社まで戻った。

 この山は、登る人も少なく、しっかりした道はない。尾根を登る単純なコースであるが、尾根が広いところや、急傾斜の場所では、道迷いや滑落に注意が必要。十分な装備で登れば、山頂付近のすばらしい自然に出会える。お気に入りの山が1つ増えた。揖斐の山はいい。次回は、新緑や紅葉の時期に、高天神を目指したい。

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