岩岳 (1000m 本巣市) 2005.2.13 曇り・雪 9人

上葛橋手前駐車地点(8:00)→農道終点登山口(8:08)→岩岳への分岐・案内板(8:22)→主尾根出合い(10:24-10:33)→岩岳山頂(11:23-13:00)→主尾根出合い(13:36)→駐車地点(15:15)

【参加者】ミツルさん、カッペさん、sizukaさん、katakuriさん、ジオンさん、ジェリーSさん、ベッカムさん、RAKU、らくえぬ

 先月のオフ会で、ミツルさんとカッペさんから「根尾村の岩岳に行きませんか」と誘われた。「岩岳?」「4月のイワウチワの大群落で有名になった山だよ」 調べてみるとネット情報は少なく、「プリンスNORIの隠れ家」さんなどのHPにレポートが掲載されていたが、厳冬期の記録は見つからなかった。

 そんな中、ミツルさんとカッペさんに下見山行をしていただいた。この時はコース間違いなどで中間地点までの下見となったが、これが大いに役立った。この山は急登でも知られており、夏道でも山頂まで2時間半はかかる。雪の時期なら3時間以上かかることは間違いない。

 日程は13日と決まった。なにしろ得体の知れないマイナーな山である。掲示板で急登のPRが行き届き、参加者は僅かと予想したが以外にも9人が参加。この時期、経験者無しでは登れそうにない山であり、ミツルさん、カッペさんの案内はありがたい。とにかく急登で、スノーシューでは歯がたたないとの情報もあり、今回はワカンと軽アイゼンを装備した。

 本巣の道の駅に集合。おなじみのメンバーであるが、今回初対面はジェリーSさんの同級生。お会いしていきなりお菓子付きの名刺をいただいた。これには、みんなびっくり。名刺には住所・氏名の上に「登山家」とあり、槍ヶ岳の写真が印刷されているではないか。インパクトあるデビュー。なお、「登山家」さんのハンドルネームは、下山後「ベッカム」さんと決まる。この話しは、最後に。

 トイレをすませて、車2台で157号線を根尾村に向かう。根尾村中心部手前から山県市の案内に従って根尾村市街地に向かう右への枝道(418号線)に入り、再び山県市の案内板に従って右折。1kmほど走ったところで左への道が現れる。ここを左折。目印は、曲がった右手に「豆腐」の看板を掲げたお店らしき家がある。なお、この左折地点西側に簡易なトイレがある。(利用できるかは未確認) さらにコンクリート工場を右に見て山に入ると左にカーブして根尾東谷川にかかる上葛橋が現れる。418号線を左折してから橋までは500mほどの距離。

 車は橋の手前の広くなった路肩に停めることにした。2台が限度。路肩は除雪した雪で埋まっていた。こんなこともあろうかとミツルさんが大きなスコップを持参。さすがである。我々の車にも冬場だけはスコップを装備しているので、2本のスコップで駐車場を確保。橋を渡ったT字路で車をUターンさせ、路肩の雪に車を乗り上げた。雪がカチカチに凍って除雪に一苦労。スコップ隊の皆さん、山に登る前からお疲れさま。

 車は来ないだろうと思っていたところ、3台ほど車が入ってきた。中には犬を乗せたハンターの車も見られた。路肩に停める場合には、他の車の邪魔にならないように要注意。身支度後、出発。橋を渡ったところで山に入った猟師の方と無線交信をしている人から、帰りはワカンが必要と言われた。

 登山道は橋を渡りきったT字路を右に登る。ツルツルに凍った農道を滑らないように歩く。石垣の水田の間を抜け、タラの畑の先からスギの人工林に入る。雪は浅く、このところの新雪が降っていないので、コーヒージュガー状態。サクサクと人工林を登っていく。水を引く塩ビパイプに沿って細い道を登る。真っ直ぐに立ち上がったスギ林が美しい。トレースがあり、それを追う。

 登山口から15分ほどスギ林の斜面をトラバースしていくと、「岩岳・タンネ」の表示板。ここから左折し、主尾根目指して直登となる。表示板は大きく、入口の木にもテープが巻かれているので見落とすことはないと思われるが、林業用の作業道が真っ直ぐ伸びているのでうっかりしていると直進してしまう。ミツルさんたちの下見の時には、この看板を見落として時間をロスしたことから、山頂にたどり着けなかったそうだ。

 この分岐より、トレースが消えた。先頭はカッペさん。夜の冷え込みで凍り付いた雪は締まっているが、それでも数歩に1回は膝下まで沈み込む。いつ沈み込むか分からないという状態での歩行は辛い。沈み込む回数は人により違い、おそらく荷物の重さに関係がありそうだ。かなりの急登になってきた。急登とはこれのことかと思っていると、「この先、木を掴んで登る」とミツルさん。これからが手強そうだ。

 カッペさんは、先月、雪の鎗ヶ先で先頭を歩いて膝を痛めたこともあり、先頭を若手のジェリーSさん、ベッカムさんに交代。スギはいつの間にかヒノキに変わり、雪の上に落ちた細かい枯葉がふりかけのようできれいだ。歩いたばかりのイノシシの足跡が登山道を横切っている。ツボ足のイノシシもかなり沈み込んで歩きにくいだろう。道は窪地となって続く。あまり沈み込むので、窪地を避けて土手の上を歩いてみるが、状況は変わらない。

 40分ほど歩いて人工林の中で小休止。タバコ組は一服。休息後、歩き始めてすぐに右側が天然林となり明るくなった。人工林との境を歩く。道もなだらかになり、葉を落とした雑木林の右手前方にはこれから目指す岩岳方向の2つピークが望めるが、山頂手前の山のようだ。突然、雪に足を取られるので、あちらこちらで悲鳴か聞こえるのが楽しい。

 人工林が切れ、左側の展望が開けた。「きれい!」歓声が上がる。雪に覆われた西の山並みがすばらしい。真西に林道を従えて聳える台形の山は、雷倉である。この時点ではよく分からなかったが、雷倉の左に頭を出すのが花房山のようだ。右後方には舟伏山が大きい。山頂の大きな切り開きが真っ白になっている。この位置から見る舟伏山は凝縮されて力強く見える。

 ミズナラやシロモジの広葉樹林帯の中、ゆるやかな雪の道は気持ちがいい。ミズナラの枯れ木が目立ち、たくさんのキノコが付いている木も見られた。シロモジなどの丸い花芽はかなり膨らんでいる。大きな足跡がある。熊ではないかとの声もあったが、正体不明。ワカンと猟犬の新しい足跡がルートを横切っている。

 天然林の中で休憩後、知らぬ間に道は急になってきた。若い2人がテープを追いながら歩きやすい場所をルートファインディング。雪で木が寝ており、それを除けながら歩く。下から斜面を見上げると、潅木の根元に覆い被さった雪の下は地面が露出しており、美しいツララができている。中には木の枝を流れ落ちた水がそのまま凍って枝を巻き込んだ氷柱もある。実にきれいだ。

 左にヒノキの幼木の植林地帯が続く。足を取られながら、木々を掴んで登る。大きな段差を越えるところは四つんばいになって登る。このイノシシ歩きは沈み込むこともなく、結構調子がいい。テープを追うが、時々テープが途切れる。見回しながらテープを探す。テープは植林との境を上っている。ジェリーSさんがやや右へルートを外して合流するのに難儀している。岩も現れ、ペンキで○印が付けられているものもある。すごい急斜面をひたすら登る。息が切れるが、何か楽しい。「ソノドの雪版みたい」とkatakuriさん。

 30分程急登したであろうか。右へ伸びる稜線が近づき、尾根に合流した。尾根からは北の大パノラマが広がる。根尾村の集落から目の前を真っ直ぐに駆け上がっている尾根は倉見へ続く。その向こうの山間に真っ白な美しい山が曇り空に溶け込んでいる。純白の能郷白山である。雷倉方面の展望もよく、田園地帯も見下ろせる。

 ここから道は右に直角に曲がり、東へ延びる尾根を登る。前方には目指す山が盛り上がっている。この地点から山頂まで標高差はまだ200m以上あるそうだ。ここから先頭に立った。なだらかな歩行も気休め程度。すぐに尾根は急になる。幸いにもこの辺りの雪は締まっており、沈み込む頻度はかなり減った。尾根は広く、忠実にテープを追う。疎林の中、曲線を描く雪の尾根が美しい。

 小動物の足跡が続いている。小さな楓の葉ようで、長い線を描く爪の跡も所々に見られた。どうやらテンの足跡のようだ。ウサギの足跡もある。深夜、舟伏山の上あたりにはアンタレスが赤く輝き、満天の銀河が雪原を青く染める。ガラスの粉を散りばめたようにキラキラと光る雪の上をテンやウサギ達が駆け回る光景を思い浮かべながら、斜面を登っていく。

 雪は堅く、歩きやすい。ザックザックといい音をたてながら、テープを追って木々の間をジグザグに歩く。樹間からは大展望が続く。北に見える倉見への長い尾根が美しい。斜面を登り切ってピークへ。ここで先頭を替わる。5〜6m下って再び大きな岩がある尾根を登る。前方には岩岳がどんどん近づいてくる。

 ピークから10分ほど急登すると展望のいいテラスに飛び出す。振り向いて、樹木に遮られることなく望める西の山々の大パノラマに誰もが足を止める。岩岳はあまり展望がないと思っていたが、この時期の展望はすばらしい。ここから再び少し下って、雪屁のある痩せ尾根を通過。右側は崖になっている。舟伏山も大きくなり、朝焼けのように曙色の空が縞模様を作っている。平野部は天気が良さそうだ。

 急登を登り切って再びなだらかになる。山頂までは急登の間にこのような平らな段がいくつかある。南を見て驚いた。濃尾平野が見える。見覚えのある山容は百々ヶ峰、その右には手前の山から半分だけ姿を現す金華山が小さく望めた。気が付けばワタムシのように細かな雪がフワフワと舞っている。空を仰げば北から流れてきた灰色の雲が頭上を覆っている。風もなく、雪が舞う穏やかな雪山。癒される時。

 後方のカッペさん達を確認しながらゆっくり登る。山頂までは後僅か。木の根の周囲の穴をのぞき込みながら、山頂が見える尾根に出た。いきなり東側の大パノラマが目に飛び込んでくる。今まで舟伏山だけ見えていたが、ここからは舟伏山を一番右に、独特の形をした日永岳、そして目の前に一段と大きな大白木山が180度大パノラマで広がる。手前に適度に木々があり、幹や枝を通して見るのでより印象的なパノラマである。夏にこの絶景は見えないだろう。そして、再び驚いた。舟伏山と日永岳の間に、白い裾野が見える。御嶽山だ。さらに白い山は中央アルプス?

 雪屁の壁を左に山頂への緩やかな道を歩く。全員、まずは山頂からの大展望を楽しむ。山頂の木のかなり高い位置に立派な岩岳の山名表示板が掛かっていた。先ほどの小雪も止み、薄日が差す。天気が崩れないうちに記念写真を撮った。カッペさんセルフタイマーがすぐに切れて大笑い。写真の後は雪の上にシートで輪を作っていつものように豪華ランチがスタート。

 今回はアルコールに関しては下りのことが気になって自粛気味。(我々はいつもノンアルコールビールですが・・・) しかし、sizukaさんには九州の日本酒「美少年」を持ち上げていただき、またジェリーSさんの黒猫のドイツワインまで登場。短時間にミツルさんのキムチ鍋、ジオンさんの野菜炒め、katakuriさんの豚汁、我々の燻製にふかひれ雑炊、ジェリーSさんの枝豆やベッカムさんの鉄火巻きなどいつものように回ってくる。katakuriさんは、雪に強い年代物の灯油ストーブを持参。メタを使う懐かしい道具。昨日、使い方を覚えたばかりでもちゃんと使いこなせるところがすごい。

 ジオンさんのぜんざいやコーヒーが沸く頃、雪が舞い始めた。東側の山の大パノラマがソフトフォーカスをかけたように次第に白く霞んでいく。それでも風はなく、寒くはない。sizukaさんがストックで雪の深さを測る。ストックの先が地面に届かなかった。後片付けをして、下山は雪が緩んでいることを考えてワカンを付けた。久しぶりのワカン。歯が良く効く。急斜面ではトレースの穴を避けてザクザクと歩いた。どこでも歩けるのが楽しい。ミツルさんも途中からワカン走行。

 急斜面の尾根はシリセードで下る。みんな子どもに返ってキャーキャー言いながら滑る。木々の間をカーブしながら滑るのでジェットコースターのようで楽しい。最後尾をカッペさん、ベッカムさんと歩く。ツボ足のカッペさんが雪にはまり込んで足が抜けなくなった。周囲の雪を掘り起こして救出。登りでも抜けなくなったそうで、さらにこの後も2度抜けなくなって、今日は災難つづき。雪の下に木の根などがあり、これに引っかかると抜けなくなるようだ。

 尾根から南への急斜面の下りもシリセード。あれだけ苦労して登ってきた急斜面も一気に下る。途中、休息。最後尾のベッカムさんが「誰かストックの先を落しませんでしたか?」との問いに、見れば私のストックの先が折れていた。あまりにも勢いよくシリセードしてきたので折れてしまったようだ。ジオンさんはベタベタになりながらも、人工林の緩斜面もシリセード。ワカンでヒノキ林の中を歩いてみる。枝打ちされていない人工林の中、枝を避けながら迷路のように歩くのがおもしろい。

 麓に近づくと、雪は緩んでおりさすがのワカンでも足をとられる。登山口手前でワカンをはずし、駐車地点まで戻った。「ご苦労様」「楽しかった」と靴を履き替える。ベッカムさんが背番号23のTシャツに着替えて、サッカーファンであることが分かった。ハンドルネームはここで「ベッカム」さんと決まった。「ちょっと○○なベッカムだな」と言った人も。後日、メールをいただき、奥様は「ビクトリア」さんであることが分かった。また、新たな仲間が増え、これからの山行が楽しみだ。

 岩岳はマイナーな山であるが、思わぬ拾い物をした気分。この時期、展望もすばらしく、急登も大勢で登ればとっても楽しい山歩きとなること間違いなし。テープを追えば山頂にたどりつけるが、雪山に登るなら、雪のない次期に登っておきたい。イワウチワの開花時期に登りたい山でもある。
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