トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号) ※一部誤動作あり
貝月山 (1234m 揖斐川町) 2008.8.31 晴れ 2人

貝月スキー場駐車場(9:11)→第1ゲレンデトップ(9:31)→第2ゲレンデトップ(9:52)→第1ゲレンデ分岐点(10:04)→イワウチワ群生地(10:34)→長者平コース分岐点(11:09)→小貝月山頂(11:19)→江美の池(11:30)→貝月山山頂(11:41-12:54)→小貝月(13:13)→第一ゲレンデ分岐点(14:02)→林道合流・第1ゲレンデトップ(14:19)→貝月スキー場駐車場(14:36)

 今年の夏は毎日のように積乱雲が発生する不安定な天候。雷雨や集中豪雨も多い。8月の最後の休日は不安定な大気ではあるが、雨は降らないとの予報。急遽、山に行くことにして、近場の山を検討。揖斐の山はヤマビルの宝庫であるが、花崗岩質の貝月山はヒルも少ないと考え、ほとんどが尾根歩きのヒフミ新道を登ることにした。貝月山の登山口は、西の「ふれあいの森」、南の「長者平」、そして東の「貝月スキー場」がある。貝月スキー場からのコースはヒフミ新道と呼ばれている。ヒフミ新道はまだ歩いたことがなく、積雪期の下見も兼ねてこのコースを選んだ。

 いつものように揖斐川右岸を北上する。空気が澄んでいて揖斐の山々がきれいに見える。国道303号線のトンネルを3つ潜ったところから揖斐高原スキー場日坂ゲレンデ方面に右折。久世温泉を左に見ながら登っていくと貝月スキー場が左手に現れるので、左折してゲレンデ下の広い駐車場に車を停めた。コスモスなどの花畑がある緑のゲレンデが美しい。ゲレンデはパラグライダーの滑走路となり、またキャンプ場もあることから、駐車場には何台かの車が停まっていた。

 靴を履き替えて出発。目の前に見えるゲレンデは第1ゲレンデ。左の傾斜がきついゲレンデは第2ゲレンデである。この2つのゲレンデの間に舗装された林道があり、まずはこの道を歩く。オートキャンプ場のサイトやバンガローを見ながら林道を登っていく。左は谷で、路肩にはスモモと思われる木が並んでいる。名前が書かれていることから、一般の方が植樹をされたようだ。右の山沿いにはアカソと思われるイラクサ科の植物に覆われている。アカソの群落に混じってオトコエシが白い花を咲かせており、花から花へと飛び回るミヤマカラスアゲハがカラスの濡羽色の美しい羽を見せてくれた。ヒメキマダラセセリやキンモンガ、アブ、甲虫など多くの昆虫がオトコエシの花に集まっている。オミナエシ同様、とてもいい香りとはいえない花ではあるが、彼らにとってはいい香りなのであろう。
 
 林道を歩くこと20分、第1ゲレンデトップに到着。蝶や花の写真を撮りながら歩いたので、2人の距離が開いた。ネットでは第1ゲレンデから山道に入るとの情報を得ていたが、先頭が林道をそのまま歩いて行ったので、山道を探すことなく、林道を登った。帰路に分かることになるが、実はこのゲレンデトップのすぐ上で、右の土手に山道が分岐しており、少し上に「貝月山登山口」の白い標示板があった。山道は草に覆われ、また標示が上すぎて見落としてしまったようだ。

 この林道は冬にはスキー場の林間コースとなる。このため、路肩にネットが設置してあるところが時々見られた。林道は正面の尾根に突き当たって、左に大きくカーブしていく。GPSを見るとかなり遠回りしていることに気が付いた。やはり、第1ゲレンデトップで登山口を探すべきだったと後悔しながら歩く。しかしヤマジノホトトギスやミドリシジミなどが見られ、林道歩きも退屈しない。
 
 林道を登りつめていくと、法面と舗装工事を行っている場所に出た。最近の大雨で、路面の土砂が大きくえぐられたところもある。歩きにくい道を右山で蛇行しながら登っていくと、リフト終点と東屋のある展望地に出た。GPSを見ると、第2ゲレンデトップである。工事用のトラックや重機が置いてある。展望がよく、蕎麦粒山や小津権現山、そして手前には一昨年に歩いた山ノ谷の尾根が望めた。

 登山口を探す。「警告」と書かれた大きな看板の横から尾根に山道が続いている。看板には、「登山者・ハイキングの皆さんへ、決して山を甘く見ないでください」と書いてある。まさにその通りと、自分に言い聞かせて山道に入る。「マムシに注意」の標識を見ながらなだらかな山道を歩く。この尾根の下を先ほど歩いてきた林道が通っている。尾根は右が人工林、左が天然林。花崗岩の山であり、雨水で掘り割りになったような道もある。ストックを忘れたので、枯れ木を拾ってストックの代わりにする。

 10分ほど歩くと右の斜面に道が下っている分岐点を通過。右の下りには「第1リフト」と書いてある。第1ゲレンデトップから登れば、林道をショートカットしてここに繋がっていることが分かった。帰路はここを下ることにした。
 
 なだらかな道は遊歩道のように広くよく踏まれている。道は一部クランクしているがほぼ真っ直ぐ。時折人工林が現れるが、主体は天然林。明るい尾根に出ると、左後方に鍋倉山の稜線が望めた。穂を出し始めたススキの明るい道を少し下って登り返す。前方には緑の尾根が続く。日の当たる尾根は暑いが、ひと頃の暑さは無い。時折、涼しい風が吹き抜けるのが気持いい。ホツツジがたくさんの花を咲かせている。顔の周りを飛ぶ小バエがうるさい。この時期にもハエがいるようだ。急傾斜のところでは、足を止めて振り返り、鍋倉の山を眺める。後方には小津権現山も立ち上がってきた。青空に綿雲が浮かぶ。緑の濃い夏の山は活力にあふれてすばらしい。

 道は、やがて尾根を外れて左山となる。右の路肩にブルーシートがかけられている。石灰岩が風化した砂地の道が崩れかけている。崩壊が進めば、登山道は侵食されてなくなりそうだ。ナラやブナの樹林帯に入り、左山が続く。木漏れ日が地面を揺らし、気持のいい道が続く。一旦、明るい尾根に出るが、再び道は北斜面に回り込む。イワウチワ群生地の標示。左右の天然林の林床一面にイワウチワが敷き詰められている。頭上を覆う落葉広葉樹が逆光で緑のトンネルを作る。このコースで最も美しい場所だと思った。イワウチワの花の時期には、花の絨毯が見られるに違いない。そんな時期に登ってみたいものである。

 この気持のいい道が15分ほど続く。久瀬中学校作の「ふるさと登山」の看板がある。時計回りにカーブを描いて、再び明るい尾根に出た。かわいいヤマジノホトトギスを足元に、展望のいい場所を通過。鎗ヶ先山から鍋倉山にかけての稜線の向こうに、小島山が頭を出し始めた。かなり標高をかせだ。11時を過ぎ、前方にピークが見え始めた。小貝月かと思ったが、GPSを見るとその手前のピークのようだ。9時過ぎに歩き始めてから休息なしで歩いてきた。小貝月に着いたら休息にすることにして、水を補給。
 
 明るい道を左山で登る。ここにもイワウチワ群生地の標示がある。道は展望地に出ると、すぐに分岐点があり、標識によれば、左の急斜面を下ると旧春日村の長者平へ至る。伊吹山を見ながらピークの南側を巻くと、前方に丸いピークが現れた。これが小貝月だと思ったが、ピークを回り込んだところで、右に「小貝月山頂上へ」の標示。今、巻いていたピークが小貝月だった。

 小貝月山頂を踏むためヤブっぽい暗い細道に入る。オクモミジハグマがひっそりと白い花を咲かせている。1分ちょっとでホツツジがたくさん咲いている山頂に出た。が、ものすごい虫が蚊柱を作っている。ハネアリのようだ。手や顔にたくさんのハネアリがとまる。目も開けられないほど。休息どころではない。展望を確認する暇も無く、逃げ帰るように山頂を後にした。雪の時期には入道のようなのっぺらぼうの真っ白な小貝月であるが、夏は潅木に覆われて、全く違うイメージであるのに驚いた。
 
 登山道に戻り、一旦下って前方のピークに向かって登り返す。山頂まで0.7kmの標識を通過して、ピークの南側に出ると前方にひときわ大きいピークが現れた。山頂は見えないがこのピークの先が貝月山である。ここから一旦下る。鞍部の左に小さな池があった。「江美の池」と書いてある。黒いオタマジャクシがたくさん岸辺に並んでいる。池を後に、石が転がる斜面を登りきると、後方に雲に頭を隠した伊吹山と伊吹北尾根がよく見える。ヒオドシチョウが道案内。シャクナゲ群落地の看板が地面に落ちていた。
 
 ここからひと登りで展望台の建つ、いつもの貝月山山頂に到着。今まで山頂に登ったのは雪解け直後の4月と厳冬期のみ。これほどササに囲まれているとは予想もしなかった。ベンチの横にキンミズヒキが金色の花をたくさんつけている。まずは、展望台に登ってパノラマを楽しむ。北には蕎麦粒山や小津権現山、天狗山など揖斐の名峰が個性ある山容を見せる。遠くに能郷白山がひときわ高い。西に目を向けると、目の前のブンゲンから南へ虎子山、そして雲の消えた伊吹山が美しい。先ほどまで小さかった綿雲が少し大きくなってミニ積乱雲になっていた。青空に浮かぶ白い雲が美しい。
 
 この山頂でもハネアリがたくさん飛んでいる。ベンチの横でランチにした。虫除けに蚊取り線香をつけると、虫が消え、蚊取り線香の威力を知る。フカヒレ雑炊と缶詰にコーヒーとクッキーのフルコースランチ。ランチの後、「ふれあいの森」への遊歩道や日越峠への道を覗いてみると、ササに覆われてとても歩けるような状態ではない。ヒフミ新道はきれいに整備されているのだが・・・「ふれあいの森」から登らなくてよかったと思った。

 1時間ちょっと、山頂に滞在して、登ってきた道を下った。1時間弱で第1ゲレンデの分岐点に到着。左折して帰路は、山道を第1ゲレンデに向った。人工林と天然林の境を下って15分ほどで林道に合流。登りに見落とした看板を発見。もう少し下に設置してあると、見落とさないのだが・・・。登ってきた林道を下る。オトコエシの花にやって来たアオバセセリを発見。久しぶりに出会う蝶である。第1ゲレンデの下部を横切り、パラグライダーの練習をする若者を見ながら駐車場に戻った。青空は消え、曇り空になっていた。

 ヒフミ新道は、なだらかな尾根歩きが中心で、美しい天然林や展望のある明るい尾根歩きなど変化に富んでいる。道はしっかりしており迷うような場所は無いが、登山口から3.7kmとロングコースであり、時間に余裕を持つことが必要。イワウチワの咲く時期や紅葉の時期、残雪期にも登ってみたいルートである。
★貝月山からの展望



★貝月山の植物・昆虫



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