トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号) ※一部誤動作・トレース未記録あり
片知山 (966m 美濃市) 2007.2.1 晴れ 2人

板山神社(9:10)→人工林入口(9:16)→鉄橋(9:20)→谷を渡る(9:54)→岩屋観音(10:27)→稜線(10:30)→大岩の隙間(10:40)→片知山山頂(11:00-12:22)→岩屋観音(12:55)→板山神社(13:51)

 高賀山付近にはいい山が多い。主峰となる高賀山・瓢ヶ岳・今淵ヶ岳の高賀三山をはじめ、周囲には矢坪ヶ岳や南岳がある。いずれも登頂しているが、瓢ヶ岳から東に続く稜線の先端にある片知山は高賀山群で取りこぼしている山である。この時期、いつもの年なら美濃の山は深い雪に覆われているが、今年は雪が少ない。週末に登る山を片知山に決めた。

 13年間乗った愛車を交換して2日目であり、新しい車の試運転も兼ねて、美濃市を目指す。慣れないナビの案内で、天王山の西にある大矢田トンネルを抜け、板取川を渡って東進。片知川に架かる谷戸橋手前から左折して片知川を遡る。この道は瓢ヶ岳の登山口へ続く道である。車を進めると道脇にたくさんの車が停まっている。釣竿を持つ人が多く、どうやら渓流釣の解禁日のようだ。

 口板山集落に入ると、右手に板山神社が現れる。神社前を通過した山側の墓地の前に駐車スペースがあり、ここも釣人の車が停まっている。まだ駐車可能なスペースがあったのでここに車を停めた。冬型の気圧配置が強まって、朝から強い風が吹いているが、頭上には青空が広がる。身支度して、まずは板山神社で今日の安全祈願。境内にトイレがあったが、鍵がかけられて使用ができなかった。神社前には「瓢ヶ岳登山口道」と書かれた古い板があった。神社東の道に出て、石仏に手を合わせ、一直線の道を北へ歩く。民家周辺の畑にはネットと電気柵が張り巡らされており、ネットの高さからサルを防ぐもののようだ。民家周辺までサルがやって来るらしい。

 民家が途切れると、小広場があり、3台の車が停まっていた。登山者の車だと思ったが、登り終えてそうではないことが分かる。人工林に入ったところで、「岩屋観音洞窟付近にスズメ蜂の巣があるので注意」の紙が張ってあるが、この時期は問題ない。雪折れが目立つ荒れた人工林を歩くと、すぐに鉄の橋を2つ渡る。谷を右に見て進むと、左に奇妙な建物が現れる。透明の樹脂で囲まれた温室のような建物で、鉄パイプで水が引いてある。何かを栽培するための施設であろうか。
 
 正面に大きな堰堤が現れ、突き当たって左を巻き、右谷でトラバース。人工林の中の大きな岩を見ながら歩く。石仏もある。岩屋観音まで、次々と石仏が現れる。人工林の下草はササで、ウラジロも見られる。掘れたところや水が流れるところを通過。道に横たわる倒木もある。右の谷には、ところどころに小さな滝が見られた。石の階段を登ると右の岩の上にお地蔵様が立ち、岩の横に巨木がある。落ち葉から、トチノキのようだ。人工林に差す陽がヒノキの幹に反射して美しい。
 
 なだらかに歩くと、左からの谷を渡る。きれいな水がたまった淵の横を渡り、もう1つの谷を渡る。ここで谷が二手に分かれており、登山道は右の小さな涸れた谷に沿って続いている。右山で歩くと、「片知山560m」と書かれた黄色い小さなプレートがあり、石の階段を登る。この辺りは天然林となっており、苔むした岩の上に石仏が佇んでいる。歴史を感じさせる古道を進むと、再び人工林の中、岩を踏んでの登りになる。石積みも見られ、古くから人々の生活と里山が深い関わりがあったことが分かる。

 小さい谷を左に渡り、石段を登る。ここにも片知山の標示がある。ササ付きの急斜面をジグザグ登って左山で歩く。切られたばかりの小枝が道に落ちている。登山道の整備をしている人がいるようで頭が下がる。ここは岩屋観音へ続く参道であり、常に手入れがされているようだ。ササの道をつめると道は左の斜面に取り付く。この角に大量のペットボトルが放置されている。森林作業の何かに使うものなのだろうか。

 ここから谷を離れて、ササの急斜面をジグザグと登っていく。急斜面の登りではあるが、ジグザグ道であり、きついことはない。1時間ほど歩いたので、お地蔵様のあるところで休憩して、パンを食べる。いくつかのお地蔵様を見てきたが、それぞれ表情や姿が異なり、妙法ヶ岳の奥の院までの道を思い出す。

 一息ついて、再び登りにかかる。いつしか天然林となっている。後方には樹間に下界が見える。大岩を見ながら、再び人工林を左に登るとトタン板でできた建物が現れる。巨大な岩が覆いかぶさっている。岩屋観音である。建物の扉は閉ざされており、観音様に対面することはできなかった。岩屋を後にササの道を登り、振り返ると岩屋の岩の大きさに驚く。何と大きな岩であろうか。岩の上部に一面に落ち葉が積もっており、木も生えている。この大岩は間違いなく山の神が宿っていると思った。

 ササの道を登っていくと青空が広がり、ササに覆われた稜線に出た。木柱が1本立っている。いきなり冷たい北風に襲われた。葉の縁が白くなったチシマザサが強風で同じ方向になびく。風とササのざわめきが混ざってすさまじい音を立てる。稜線を左に登ろうとしたが、きわめて道が薄い。ササの丈が低いので、どこでも歩ける。稜線上を歩くと次第に道が明瞭になってきた。ここまで長袖Tシャツ1枚で上ってきたがさすがに寒い。稜線の南側は人工林になっており、人工林に入り込んで風のないところでシャツを着た。

 急緩繰り返しながらササ尾根を歩く。南半分が人工林ではあるが、木漏れ日がササにスポットライトのように当たり、気持のいい尾根歩きである。赤テープがあるが、稜線を外さなければ道を誤るようなことはない。時折ルートファインディングしながら、10分ほど歩くと大きな岩が稜線を塞ぐ。岩の間をよじ登って、稜線歩きが続く。右には樹間から白い山が見える。中央アルプスのようだ。御岳山は雲に隠れて見えない。相変わらず、急緩繰り返しながらの稜線歩きが続く。単調ではあるが、雰囲気のいい稜線である。風が強く、吹き飛ばされそうな帽子を押さえながら登る。急登になったので、GPSを見ると山頂はもう目の前。
 
 小さな黄色いプレートの「山頂まで約1分」の文字を見ながら登り詰めるとススキが茂る空き地に出た。ここが片知山山頂である。枯れたススキのヤブには所々に雪が残っていた。北の一角が裸地になっており、三角点と古い山名標示板があった。東側に僅かの切り開きがあり、ちょうど恵那山が見える。その手前に恵那山とそっくりの形で重なっている山は笠置山のようだ。恵那山と笠置山が相似形で重なって見えたのはこの山が初めてである。位置を変えると木が邪魔しているが、真っ白な中央アルプスも見えた。

 標識の後ろには瓢ヶ岳へと向う道が下っている。少し降りてみると、急斜面のササの中に道が続いている。樹間から南岳や瓢ヶ岳が大きく見えた。瓢ヶ岳まで縦走してみたいものだ。ススキのヤブに入ってみると、朽ちた木材や鉄柱・ボルトが散乱している。かつてここに反射板があったらしい。風の弱い場所を探し、三角点の横でランチにする。メニューはフカヒレ雑炊と缶詰。マイナーな山であり、誰も登ってこない。木立やススキを揺らす風の音だけが響く。とても2月とは思えない温かい陽だまりで1時間以上、のんびりと食事を楽しんだ。

 帰路は同じ道を戻ろうと山頂を下り始めたところで木に地図が掛けてあるのに気が付いた。地図を見ると片知山山頂から瓢ヶ岳方向へ下った辺りから林道に下りられるコースが書いてある。このコースを歩こうか迷ったが、林道歩きが1時間ほどかかりそうなので、往路と同じ道を下ることにした。
 
 稜線上の大岩に登ってみると、ここからも恵那山と笠置山が望めた。ササ尾根をどんどん下っていくと、踏み跡が薄いのに気が付いた。正面には小ピークが迫っていた。登りに歩いていない場所だ。うっかりして、岩屋観音へ下る分岐を見落としていた。50m程戻って、分岐点を発見。この分岐点には標示が無く、木柱が1つ立っているだけなので要注意の場所である。南の下に岩屋観音の青い屋根が見えるので、注意していれば見落とさないのだが・・・。

 岩屋観音から石仏を数えながら降りることにした。道脇にある石仏とはいえ、足元を見ながら下りているので互いに見落とすこともしばしば。1人で数えるとかなり見落とすであろう。ペットボトルのあるところから谷歩きとなるが、ここで正面に誕生山が見えた。下りは速い。石仏を数えていると、石仏の上部に番号が彫られていることに気が付いた。谷を渡るところの石仏は上から数えて15体目であり、18番と書いてある。逆算すると32体はあることになる。集落奥の登山口まで下りて、数えた石仏は全部で30体あった。見落としがあると思われるが、一般的には33体あるのであろうか・・・。登山口のところで、放し飼いの犬がまとわりついてきた。サルを追うための犬か・・・? 集落道から矢坪ヶ岳と思われる山を西に見ながら、板山神社に戻って、無事に下山できたことに手を合わせた。釣り人の車はなく、我々の車だけが取り残されていた。

 地図にあった片知山山頂の西から林道に下るコースの登山口を確認するために瓢ヶ岳登山口方向に車で登ってみた。大きなヘアピンカーブを過ぎた退避路のある近くに登山口の標示を確認。いつか、このコースも登ってみたい。

 片知山は、人工林も多く、また展望も少ないことから、高賀山や瓢ヶ岳に比べると人気のある山とは言えないが、岩屋観音や多くの石仏など古くから人と関わりのある山であり、歴史をたどりながらの山歩きが魅力。稜線のササの道もいい。谷歩き・稜線歩きで山頂に至るコースは高賀山とよく似ていると思った。日の長い時期なら、瓢ヶ岳まで足を延ばせる。次は別のコースで登ってみたいと思った。
 山のリストへ