トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平22業使、第490号) 

己高山 (923m 滋賀県) 2011.11.13 曇り・雨 2人

登山届け箱のある駐車場(9:30)→尾根コース登山口・一合目(9:50)→二合目(9:54)→三合目(10:13)→鉄塔1(10:17)→四合目(10:38)→六地蔵(10:46)→谷コース分岐点(10:50)→鉄塔2(10:53)→馬止め・牛止め展望台・六合目(11:03-11:07)→八合目(11:27)→鶏足寺跡(11:32-11:36)→己高山山頂(11:58-12:51)→鉄塔3(13:11)→鉄塔4(13:24)→高尾寺跡分岐点(13:48)→石道寺(14:31)→鶏足寺(14:41)→駐車場(15:00)

11月13日に滋賀県の己高山に登ってきました。
登山者用駐車場をスタート。林道を歩き、尾根コース登山口から山道へ。
落ち葉の積もった道を登り、鉄塔を通過。
この辺りから雨となり、撤退も検討。小雨となったことから、雨具を着て山頂を目指しました。
六地蔵、馬止め岩、そして牛止め展望台へ。展望台から見えた、輝く琵琶湖に感動。
ガスの流れる紅葉の始まった美しい天然林を歩いて、灯篭の残る鶏足寺跡へ。
なだらかな道を歩き、ロープ付きの急斜面を登って山頂に立ちました。
今にも雨が降り出しそうな雲の下で、素早く昼食をとり、山頂で出会った二人と一緒に周回コースへ。
ブナなどの紅葉が美しい稜線を南下。登ってきた尾根の南にある尾根を一気に下り、石道寺と鶏足寺に寄って駐車場まで戻りました。
時折小雨の降る天気で、また紅葉も今一つでしたが、美しい天然林を歩くことができ、すばらしい山歩きとなりました。

 今年の紅葉は今一つとは聞いていたが、紅葉の時期に登りたいと思っていた己高山(こだかみやま)に登ることにした。己高山は、滋賀県の木之本にあり、一昨年歩いた呉枯ノ峰のすぐ東側の山である。呉枯ノ峰の帰路、己高庵に寄り登山口を確認しておいた。北陸地方の天気予報は雨の確立が高いが、滋賀県は晴れマーク。

 岐阜市からのアプローチは南回りよりも揖斐川町から八草トンネルを抜ける北回りのほうが速いと考え、国道303号線を西に向かった。ところが揖斐川町に入ると渋滞。揖斐川マラソンの日だった。裏道を抜けて渋滞を回避し、横山ダムの新しい橋を渡る。いつしか空は黒い雲に覆われ、小雨が降りだした。八草トンネル付近では本格的な雨となった。この辺りは北陸の天気のようだ。木之本に入ると雨は止んだが、空は灰色の雲に埋め尽くされている。
 
 川合トンネルを抜けてすぐの信号を南に折れ、己高庵を目指す。古橋集落に入ったところで折り返すように北に向きを変え、左山で走る。己高庵に上がる道を左に見て直進していくと、登山届け箱のある駐車場が右にあった。歩き始めた登山者がある。駐車場の中央に土砂が積んであるが、数台の駐車が可能。ちょうど1台のスペースがあり、ここに車を止めた。男性3人パーティの出発を見送り、靴を履き替えた。なお、トイレは己高庵への分岐手前の西側の高台にある。

 登山届けを記入して出発。己高山の標示を見ながら、車止めの柵を抜けて未舗装の林道を歩く。人工林の暗い林道であり、山ノ神の石や居張瀧の大岩を見ながら歩く。水を引くパイプが道の脇に続いている。林道の分岐が現れ、大きな己高山鶏足寺跡登山案内図があった。左は砂防堰堤の工事現場へ行く道であり、ここは右。堰堤工事の重機を左の川に見ながら歩くと再び分岐。ここは標示に従って左へ。「この時期特に熊に注意」の看板を見て、熊鈴を付ける。

 橋を渡ると「仏供谷登山口・尾根コース」の標示。林道を直進すれば谷コースとなる。ここは一合目であり、山道に取り付く。この辺りの紅葉はまだまだであるが、窪んだ登山道にはたくさんの落ち葉が積もっていた。一合目から5分も歩かないうちに二合目を通過。ミズナラやアカマツなどの天然林の中、よく踏まれた道を登る。
 
 三合目を通過。木製の標示板が壊されているのは熊の仕業であろうか。小雨が降り始めたが、樹林帯でそれほど気にもならない。道が左右に分岐している。どちらへ行くかよく分からないが、足跡のある右に進む。左に鉄塔が現れ、樹木が切り払われた潅木帯に飛び出した。雨が本格的に降り始めた。樹林帯まで急ぐ。伐採地にも分岐があったが、ここは左。林の中に入り、雨具を着ることにした。
 
 ザックを下ろして雨具を着ていると、駐車場で出会った男性3人パーティが傘をさして下りてみえた。止みそうにないので下山するとのこと。見上げれば、空は黒く、止みそうな気配はない。迷ったが、我々も撤退をすることとし、下りにかかった。高圧線下の展望地まで下りると、琵琶湖方面はかなり明るい。再び作戦会議。1時間登ってきたが、もう少し登って様子を見ることにした。雨具の上着だけを着て、Uターン。

 四合目を通過。イワウチワの群落を見ながら適度な斜面を登っていくとササに覆われた道となった。雨は小降りになったが、ササの水滴でズボンが濡れる。ササの道を抜けると六地蔵のある広場に出た。落ち葉の上に中央の大きな石仏を囲むように小さな6体の地蔵様がならんでいる。合わせて7体の地蔵があるが、・・・。手を合わせて先を急ぐ。

 道を覆っているススキを分けると、谷コースとの分岐点があった。表示板の塗装が剥げ落ちて文字が読みにくかったが、左へ下る道は「仏供谷登山口」と書いてあるようだ。さらに上っていくと、左側に鉄塔が現れた。この山には2列の送電線が平行して走っている。切り開きで空を見上げると幾分明るくなり、いつの間にか雨は止んでいた。
 
 黄色に色づいたタカノツメのトンネルを抜けて尾根道を登っていく。秋特有のシカの臭いが鼻を突く。標高600mを通過し、紅葉している木々が増えてきた。落ち葉の道を歩くと道を塞ぐように岩が現れた。ここが「馬止め岩」である。岩を越えるとすぐ上にある六合目の「牛止め展望台」に着いた。駐車場で見かけた男女3人パーティが昼食中だった。雨のためここで昼食をとって引き返すとのこと。南から西の展望が得られ、低く垂れ込めた雲の下で琵琶湖がオレンジ色に輝いて美しい。山本山の向こうに竹生島が浮かんでいる。南には高圧線が渡る深い谷を挟んで帰路に下るなだらかな尾根が見える。谷から白いガスが湧き上がってくる。

 3人に挨拶をして休息もそこそこに歩き始める。落ち葉に埋まったV字状の岩を登り、紅葉が美しい林を歩く。右山となり、紅葉したブナが増えてきた。樹林帯の中をガスが流れはじめ、幻想的な世界が広がる。フォギーのフィルターを通して見るように、霧の中に紅葉の木立が異次元の世界を作り出している。雨模様の山でないと見られない美しい光景である。
 
 尾根を跨いで左山となる。道は水平。山側は杉林。カエデが真っ赤に紅葉している。紅葉したコアジサイを足元に見ながら八合目を通過。わずかに下って登り返すと平坦な場所に出た。こぶ杉と書かれた新しい標示プレートがあり、谷側に幹に大きなコブがある珍しいスギがあった。
 
 もう一段上に登るとさらに広い場所に出た。苔むした灯篭や案内板があり、ここが鶏足寺跡である。案内板には古代から中世にかけて繁栄した寺院の想像図が描いてある。ここまで麓から山道を歩いて2時間かかる。この場所にこのような大規模な寺院があったことは驚くべきことである。濡れた落ち葉の跡地で当時の寺院の賑わいを思った。喉を潤して山頂を目指す。
 
 左山でササの斜面をトラバースしていく。後方には寺跡の敷地全体が見える。また、樹木の切れ間から琵琶湖が望めた。トラバース道が続く。この辺りは雪が多いことから樹木の根元が大きく曲がっている。トラバース道を終えると尾根に突き当たり、「頂上へ分岐点」の表示がある。直進の道もあるが枯れ木で止めてある。道は直角に急な尾根を上がっており、右側にはロープが張ってある。コハウチワカエデの赤い紅葉が美しい。急斜面を、落ち葉を踏んで一歩一歩登っていく。木々の葉はかなり落ちているが、まだまだ紅葉が美しい。急登が続く。前方から下ってきた単独男性に挨拶して、さらに登る。
 
 なだらかになると誰もいない広い山頂に着いた。ちょうど2時間30分かかった。三角点の前で写真を撮って、米が供えられてあるご神体と思われる岩に手を合わせた。雨が今にも落ちてきそうな雲が頭上を流れている。急いで昼食にした。おでんとネギチャーハンを予定していたが、短時間でできるメニューに変更して、おでんの残り汁にご飯を入れてネギ雑炊にした。これが意外においしかった。寒い時期には雑炊がいい。いつものコーヒーもやめて、シェラカップでお茶を沸かして体を温める。いつもより短時間で昼食を終えた。
 
 昼食を終える頃、男女2名の登山者が山頂に到着。途中で出会って一緒に登ってきた二人で、女性は京都から電車でみえたとのこと。さらに男性が1名到着。雨模様の天候の中、我々が最後の登山者だと思い、ちょっと心細かったが、まだ登ってくる人がいたことがうれしい。5人で帰路のルートを確認。稜線から外れる分岐点が要注意らしい。山頂の東側に展望地があり、目の前の山は見えるが、金糞岳や伊吹山は雲の中。
 
 周回ルートへの入口は登ってきた道の反対側にありよく踏まれている。単独男性が先に下り、我々4人はその後を追った。ほとんど葉の散ったブナやミズナラの道を下る。それでもカエデなどまだ紅葉している木々も残っており、美しい天然林を見ながら歩く。小雨がぱらついたが、すぐに雨は止んだ。なだらかな道となり、正面にはこれから目指す778mピークが見える。

 鞍部に向かってササの道をゆっくり下っていく。紅葉した美しいブナ林の回廊が続く。今日の山歩きのハイライト。感動の稜線歩きである。あまりの美しさに写真を何枚も撮った。太陽が出ていればもっと美しいに違いない。

 山頂から20分ほど歩いて鉄塔の下に出た。この鉄塔は登ってきたときに通過した2つ目の鉄塔からの送電線が通っている。鉄塔を過ぎると、紅葉の回廊はさらにすばらしいものとなった。ブナの黄色を主体とするトンネルが続く。778mピーク付近で左の尾根への分岐があるが、枯れ木で止められていた。その先で左にスギ林が現れ、すぐに稜線を離れる分岐点があった。ここも直進しないように枯れ木で止めてある。折れたプレートも地面に置いてあった。

 右に直角に曲がって斜面を下る。結構な急斜面である。プラスチック階段が設置してある。稜線から数分下ると鉄塔のある展望地に出た。ちょうどガスが消え始めたところであり、さらに東へ続く送電線の先に稜線の鉄塔が見えた。琵琶湖の竹生島も見える。登ってきた尾根も目の前に見える。紅葉した山肌が美しい。暑いのでここで雨具を脱いだ。

 さらに紅葉の天然林を下る。この辺りもタカノツメの黄色が美しい。ナラ枯れの木にはナメコが群生していた。短い間隔で樹木に赤ペンキが塗られているが、踏み跡はしっかりしており、道を誤るような場所は無い。カエデ類が多いが、紅葉はこれから。だが、寒さで既に枯れ上がっている木も見られる。

 一気に下って高尾寺跡への分岐点に着いた。我々は直進するが、左に下っても高尾寺跡を経て林道を歩き駐車地点に戻ることができる。ここまで一緒に下りてきた2名は左に下り、直進する我々と、ここで別れた。直進は鶏足寺までの尾根歩きである。踏み跡は明瞭。いくつかの倒木を跨ぎながら下っていく。赤ペンキが続いている。ナラの株元にヌメリスギタケを見つけた。美しい食用キノコである。
 
 ぐんぐん下っていくと明るい尾根からは時折下界の田園や高時川、琵琶湖などが見えた。雲の隙間からこぼれた陽が湖面をオレンジ色に染めている。雲の切れ間が広がり、日差しが尾根を照らすようになった。もう雨の心配は無い。人工林に入るとすぐに林道が見えた。
 
 未舗装の林道を歩くと茶畑に出て、大勢の人が行きかう遊歩道に合流した。遊歩道を左に100m行けば石道寺、右に300mで鶏足寺の標示があり、まず石道寺へ下る。きれいな寺の本殿に参拝して引き返し、鶏足寺に向かう。参道の階段を大勢の観光客に交じって登る。それにしても大勢の人が集まる寺である。おそらく紅葉の名所と思われるが、参道周辺のモミジのほとんどは紅葉しておらず、10日くらい後が紅葉最盛期と思われた。
 
 鶏足寺本殿で参拝。本殿の扉は閉じられており、階段をやっとの思いで登ってきた観光客は皆がっかりしてみえた。ザックカバーにストック姿はこの場所に似合わない。そう思って階段を下っていくと登山姿の二人が登ってみえた。山中で別れたお二方だった。高尾寺跡へのコースにはすばらしい大杉があったそうだ。二人と別れて遊歩道を山沿いに歩き、売店の並ぶ田園を横断して駐車場に戻った。車は2台になっていた。すっかり晴れた空の下、紅葉の山を眺めた。

 今回は小雨の降る天気ではあったが、こうした天気でしか体験できない山歩きとなった。滋賀県の山は実に歴史遺産が豊富であり、この山の鶏足寺跡も貴重な遺産である。また山頂からの稜線歩きはすばらしい。次回は、クリンソウの咲く時期に谷コースと高尾寺跡コースを歩いてみたい。
 
 己高庵でお湯につかり、4時頃に帰途についた。もう揖斐川マラソンは終わっていることから、再び国道303号線を走ったが、揖斐川町はまだ大渋滞だった。
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