トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平25情使、第146号) 
*赤色のラインが今回のトレース

鉄嶺山 (673m 揖斐川町) 2020.3.21 晴れ 2人

鉄塔巡視路入口(8:47)→10番鉄塔(8:55)→11番鉄塔(9:04)→12番鉄塔(9:11-9:15) →13番鉄塔(9:35-9:38) →14番鉄塔(9:44)→15番鉄塔(9:56-10:01)→鉄嶺峠・地蔵(10:11-10:14)→最高点(10:23)→鉄嶺山(10:39-10:55)→最高点(11:12-12:21)→鉄嶺峠・地蔵(12:31)→15番鉄塔(12:42)→反射板(13:05-13:15)→15番鉄塔南ピーク(13:35)→14番鉄塔(13:47)→13番鉄塔(13:51)→12番鉄塔(14:01)→11番鉄塔(14:05)→10番鉄塔(14:12)→鉄塔巡視路入口(14:20)

★3月21日に揖斐川町の鉄嶺山に登ってきました。
★2年前に古道を歩いて鉄嶺山を目指しましたが、深い雪に苦戦し山頂手前の最高点で撤退。
★今回は寒谷から鉄塔巡視路に取り付きました。
★高圧線に沿って尾根を一直線に登り、途中から尾根北側をトラバースして稜線に立つ15番鉄塔へ。
★鉄塔から稜線を北に下って、鉄嶺峠のお地蔵様に手をあわせました。
★峠から急斜面を登り切って2年ぶりに最高点へ。
★最高点から北西の尾根の美しい天然林を歩いて鉄嶺山山頂に立ちました。
★山頂の三角点を確認して引き返し、最高点の陽だまりで昼食。
★15番鉄塔まで戻ってさらに南に歩き反射板で大展望を楽しみました。
★帰路は15番鉄塔手前から踏み跡のない尾根を下って鉄塔巡視路に合流し駐車地点に戻りました。
★雪の能郷白山、周囲意を取り巻く小津権現山や花房山、天狗山、湧谷山などを望みながら美しい天然林の中、早春の山旅を楽しんできました。


 旧藤橋村西横山と旧坂内村坂本は、現在、横山ダム湖岸を通る国道303号線で結ばれているが、昔は峠道が両集落を繋いでいた。村境にある峠は鉄嶺峠(くろがねとうげ)と呼ばれ、国土地理院の地図に峠名が記されている。

 峠には1体のお地蔵様が今でも佇んでいると聞いた。峠のすぐ北側にはこの辺りで最高点となるピークがあり、最高点から稜線伝いに北東へ進んだところに標高673mの鉄嶺山がある。現在、横山ダム堰堤からこの山の真下を抜ける鉄嶺山トンネルの工事が進められている。
 
 以前から、峠のお地蔵様に出会い、鉄嶺山山頂を踏みたいと思っていた。平成29年12月に廃道となった峠に向かう古道を坂内側から歩いて鉄嶺山を目指したが、深い雪に阻まれて最高点で撤退した記憶は新しい。今年は残雪が無いことから、鉄嶺峠の南にある鉄塔巡視路を登って鉄嶺山に登る計画を立てた。
 
 鉄塔巡視路の入り口は揖斐川町坂内の坂本集落から南にある寒谷沿いの林道にある。国道303号線を走り、横山ダムから坂内方面に向かい、坂本集落に入った直後に見えるコンクリート工場の手前を左折。左、左へと進んで林道に入る。
 
 林道入り口から1kmほど走ったところの左側に鉄塔巡視路の標示があり、ここが登山口となる。登山口の少し手前に林道のふくらみがあり、ここに駐車。靴を履き替えてスタート。林道をわずかに歩いて鉄塔巡視路に入る。黄色い標示板には「No10→」とあり、「最初の鉄塔が10番鉄塔となる。
 
 杉林の中を登っていくといくつかの石垣が周囲にみられる。ここは昔農地になっていたようだ。折り返すように歩くと前方に鉄塔が現れ、尾根に出た。10番鉄塔から左に向きを変えて東南東に向かって一直線に尾根を歩く。正面の太陽が眩しい。前方には次の11番鉄塔が見える。
 
 10分ほど登って11番鉄塔を通過。後方には坂内の集落と湧谷山が見え始めた。12番鉄塔手前の右側のヒノキ林は間伐が行われた直後であり、切り捨てられた木が放置してある。11番鉄塔から10分もかからずに12番鉄塔に到着。熱いので長袖Tシャツ1枚になって13番鉄塔に向かう。

 鉄塔巡視路はここから尾根を左に外して右山のトラバース道となる。左側の谷を見下ろしながら落ち葉の道を歩くと急斜面のジグザグ道となる。道が削り取られて狭くなっているところがあり落ちないように慎重に歩いた。北には樹間から最高点のピークが望める。
 
 上部に行くにつれて後方が開け、湧谷山が美しい。頭上には高圧線が走っており、高圧線の真下に巡視路がつけられている。ジグザグ道を登りきると13番鉄塔に着く。ここからの展望もすばらしい。12と13番の標高差は100mほどあり20分ほどかかった。
 
 今、登ってきたトラバース道は滑り落ちそうで下りで通りたくない道であり、帰路はこの鉄塔から尾根を下ることにしてすぐ先に見える14番鉄塔を目指す。右山で落ち葉の広い道を歩くと数分で14番鉄塔に到着。葉がないこの時期には、左に最高点と、その向こうに天狗山が望める。
 
 ここから再び右山のトラバース道となる。小さな谷を横断して急な登りとなり、息を切らしながら前方に見える鉄塔に向かう。鉄塔手前はかなりの急斜面でつかまるものもなく、滑りながら15番鉄塔下に出た。
 
 15番鉄塔は稜線の上に立っており、ここから東にある巡視路を下ると16番鉄塔がある。鉄塔周辺は切り開かれており、西側の展望が素晴らしい。湧谷山の右遠方に雪山が見える。位置から推定して三周ヶ岳であろうか。
 
 15番鉄塔から鉄嶺峠へは真北に稜線上を下る。急斜面を下るとすぐになだらかになる。稜線上には踏み後があり、左は天然林、右はヒノキ林の明るい尾根で、倒木もあるが問題なく歩ける。

 岩のある急斜面を下りきると鉄嶺峠に着く。坂内側への古道は明瞭であるが、横山側は急峻な斜面で道の痕跡はほとんどない。出会いたかったお地蔵さまは峠から北に一段上がったところに佇んでいた。
 
 胸の前で手を重ね、何かを念じるように目を閉じ、横山集落を見下ろすように立っている。昔、多くの村人や旅人がこの険しい峠を越えて往来し、ここで手を合わせたに違いない。我々も手を合わせて今日の山旅の安全を祈願した。色あせた赤いハチマキが頭に巻いてあり、風に揺れていた。
 
 お地蔵様を後に最高点への登りにかかる。天然林の中、傾斜が次第に増してくる。疎林でつかまる木がないところもあり、落ち葉で滑りやすい。一歩一歩ゆっくりと登って最高点に到着。2年ぶりに落ち葉が敷き詰められた最高点に立った。
 
 目の前に天狗山が堂々と横たわっている。ここから鉄嶺山へは北東に延びる尾根を歩く。ユズリハが自生する斜面を下って気持ちのいい天然林を歩く。前方右には小津権現山、左には天狗山。木々に葉がない時期だけに見られる景色を楽しみながら小さなピークを越える。
 
 踏み後があるのかないのかよくわからないが、疎林の広い尾根でありどのようにでも歩ける。なだらかな小さいピークを1つ越えて、次のピークに緩やかに登っていくと鉄嶺山山頂に到着。灌木に覆われており、開けた場所はない。
 
 平らで広い山頂で三角点を探すと、東に歩いたところに落ち葉に上に頭を出す三角点があり、周囲に石が置いてある。三角点の位置が分かるように色あせた赤布が枝に結びつけてあった。東側には小津権現山が見えるが、木の葉がある時期には展望は得られない。
 
 広い山頂を歩き回ってみたが、展望地はない。木々の向こうの天狗山や湧谷山を眺めた。南にはこれから向かう丸い山があり、目的の反射板が小さく見えた。
 
 時刻は11時。最高点まで戻って昼食にする。風を受けない南側で反射板を見ながら昼食会場を作った。メニューはチャーハン。アウター不要の暖かい日だまりでゆっくりと昼食を楽しんだ。2年前、深い雪に覆われた同じ場所で昼食をとったことを思い出しながらコーヒーを淹れて食事を終えた。

 さて、次の目的は前方に見える反射板。まずは登ってきたルートを15番鉄塔まで戻る。最高点から急斜面を滑り落ちないように木々につかまりながらゆっくり下る。つかまる木がないところは低い姿勢で滑るように下った。

 再びお地蔵様に手を合わせて鉄嶺峠から15番鉄塔に向かって登り返し、10分ほどで鉄塔到着。反射板へは南へ向かう。斜面を登り切って道はなだらかとなり、東側が人工林の尾根を歩く。
 
 痩せ尾根はやがて広い尾根となり、落ち葉の積もった気持ちのいい天然林を歩くようになる。鉄塔から反射板までの標高差は100mほどであり、きつい登りはない。しばらく歩いたところで尾根が少し東へ回り込むところがあり、ここを直進したことから広い窪地に出た。
 
 小枝を避けながら歩きやすい場所を拾って東へ軌道修正。次第に灌木が密集してきたが苦になるほどではない。緑色の葉をつけた植物はユズリハだけであるが、シカに食われて葉がないユズリハが多く見られた。
 
 緩やかに登っていくと前方左に反射板が現れた。反射板の下は素晴らしい展望台になっており、北側180度の展望が得られる。眼下に藤橋の集落、その向こうには横山ダムが青々とした水を貯めている。
 
 左には天狗山と今登ってきた鉄嶺山、右には小津権現山。前方遠くに見える雪山は能郷白山のようだ。反射板から南へさらに歩けそうではあるが、今回はここまで。登ってきた道を引き返す。
 
 登りの時、反射板手前で窪地を通過したが、帰路は忠実に尾根を歩いた。水たまりを通過し、往路と同じ道を下って15番鉄塔が見える辺りで、鉄塔巡視路を使わず尾根を降りることにする。
 
 GPSで尾根の芯を確認して西に向きを変える。倒木や灌木が行く手を阻むところもあるが、うまく回避すれば難なく下れる。尾根は拾いやすく方向を誤るようなことはない。10分ほど下ったところで14番鉄塔が近づいてきた。
 
 14番鉄塔手前は切り倒された木々の間を抜けて鉄塔下に出た。ここから13番鉄塔までは往路と同じ巡視路を歩く。鉄塔下で灌木に付けられた3本の引っかき傷を見つけた。熊の仕業に違いない。傷跡に付着した土が乾いていないことから、直前に付けられたものであろう。周囲を見回しながら鈴を鳴らして13番鉄塔まで歩く。
 
 13番鉄塔からは再び尾根を下る。鉄塔直下は急斜面であり、木につかまって下っていく。尾根は南にふくらんでおり、枝がうるさいところもあるが、鉄塔巡視路のトラバース道より安心して下れる。
 
 この鉄塔間も10分ほどで下り12番鉄塔を通過。11,12番鉄塔を経由して棚田跡を通過し林道に戻った。
 
 鉄嶺峠のお地蔵様に出会い、美しい天然林を歩いて鉄嶺山山頂を踏み、さらに反射板から素晴らしい展望を楽しめた。実に達成感のある山歩きとなった。鉄塔巡視路以外は踏み跡が薄く、また登山者は皆無でクマなど野生動物との遭遇もありうるので、万全な装備と慎重な行動が必要だと感じた。雪が無く木の葉のない時期に登るのがベスト。

 下山後、横山ダム付近から反射板を探したがなかなか見つからない。と思ったら、尾根を1つ間違えて見ていた。反射板を確認し、すっきりした気分で帰途についた。
★鉄嶺山からの展望

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