トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平21業使、第478号) 

三池岳 (972m 三重県) 2010.11.3 晴れ・曇り 2人

八風射撃場駐車場(8:54)→中峠分岐点(9:58)→坂中地蔵(10:08-10:13)→八風峠(10:33-10:38)→三池岳山頂・三角点(10:51-12:22)→お菊池(12:41)→福王山分岐点(12:46)→林道(23:44)→八風射撃場駐車場(13:50)

 浅黄色の空にゆるやかな稜線を描く養老山が次第に近づいてくる。「ベニドウダンがみごとな5月末と11月初旬の紅葉がおすすめ・・・三池岳。」助手席でガイドブックをめくりながららくえぬがつぶやく。三池岳は昨年登った竜ヶ岳の南にある山だ。三国岳を予定していたが、急遽行き先を変更して、一字違いの三池岳に向う。行き先を変更すると地図が問題となるが、今回はガイドブックの地図とGPSがあれば山中での位置が把握できる。

 国道365号線を南下して三重県いなべ市を抜け、菰野町に入ったところで八風キャンプ場の案内に従って右折。集落の狭い道を上り、山中に入る。正面にはこれから登る三池岳がある。山肌は色づき紅葉が期待できそうだ。橋を渡りキャンプ場の入口を右に見てさらに車を進めると、路肩に駐車した車が現れ、準備をしている登山者も見られた。さらに進むと広場があり行き止まり。広場は数台の車でいっぱい。Uターンして、路肩の駐車スペースに停めた。全部で10台ほどの車が停まっており、人気のある山だと思ったが・・・。

 靴を履き替えて、クサリの車止めがある林道に入る。すぐに伊左衛門の碑が右側にあり手を合わせる。この道は古くから伊勢と近江をつなぐ交通の要衝であり、八風峠を越える古道にはいくつかの歴史的資源がある。林道は雨にえぐられており、崩壊したところは迂回して丸木橋を渡り、再び林道に戻る。木々の間から釈迦ヶ岳に続く紅葉の稜線を見上げる。八風神社中の鳥居、嘉助の碑、八風神社御旅所の碑を通過。まだ咲いているアケボノソウに感動。

 歩き始めて25分ほどで林道が終わり大きな川に出た。川を埋める大きな石が白く、眩しい。川に出る手前で右へロープのある道があり、ここを登る。丸木で階段が作られており、川を左に見てツバキなどの広葉常緑樹の潅木帯に入る。薄暗い中、落ち葉の踏み跡をたどる。炭焼きの跡も見られる。
 
 次第に踏み跡が薄くなるが、赤テープや赤マジックの印があるのでさらに進むと、道が消えた。どこで間違えたのだろう。テープのあるところまで戻ってルートファインディングするが道が無い。こういうときは戻ることが鉄則。戻りかけて、眼下の川原に案内板があるのを見つけた。少し戻ったところで、急斜面にかすかな踏み跡が川原へ下っている。どう見ても正式ルートではないが、ここを下りてみると案内板のある正しいルートに立った。我々と同じように道を間違えた人がここを下ったようだ。それにしてもどこで間違えたのであろうか。

 広い川原は砂地で大きな堰堤が左にある。飛び石を渡って流れを越え、対岸を歩く。倒木を跨ぎ、アップダウン。左の急斜面から流れ出た小谷を渡り、浮石に注意しながら歩くと、谷は荒れて石が押し出されたような場所となる。ここからも正面に紅葉の稜線が見える。15分ほど谷を歩いて標識が現れ、木橋を渡って再び右側へ移る。川に沿って斜面を5分ほど登ると中峠と八風峠の分岐点に着いた。釈迦ヶ岳へは中峠方向へ行くが、三池岳は左。

 急斜面のジグザグ道を登る。道には石が多い。振り向けば対面する山の紅葉が美しい。次第に道がなだらかになり、落葉樹の高木が多くなってきた。中峠分岐点から10分ほど登ったところで坂中の地蔵の標示が現れ、3体の石仏が岩の間に佇んでいる。ここでも手を合わせる。このすぐ上が展望地となっており、田園が見下ろせ、また右方向には伊勢湾が朝日に輝いていた。青空には羊雲が流れる。ここで5分ほど休憩。

 展望地を後に、左山で歩く。山側のザレた斜面にはイワウチワの群落が見られ、また右の樹間からは三池岳山頂方向の稜線が見える。やがて道は九十九折れとなり、登り切ると落ち葉に埋もれた尾根となる。この尾根は稜線から派生している尾根であり、両脇がササのところもある。シロモジやコハウチワカエデなどの紅葉が美しい。右山となったところで下ってくる単独男性に出会った。今日初めて出会った登山者だ。

 再び潅木の尾根となり、道の溝にたまった落ち葉をカサカサと踏みながら歩く。イワウチワの群落を見ながら左山で歩いて砂礫と岩の急斜面を登り赤く紅葉したドウダンの下を潜ると話し声が聞こえ、鳥居が現れた。八風峠到着。5人の登山者が休息中。挨拶をして中峠方向の高い位置に登ると東側の展望がすばらしい。南には釈迦ヶ岳。この稜線を辿れば釈迦ヶ岳に行くことができる。北側には竜ヶ岳がなだらかに横たわり、目の前には三池岳山頂や三角点のあるピークが望めた。三池岳や八風峠の紅葉が美しい。黒い雲が広がり、怪しい空模様となってきたので先を急ぐ。
 
 少し下ってなだらかな尾根を歩く。三池岳三角点のピークから駆け下りる斜面の紅葉は黄色や赤色のモザイク模様が美しい。また、今登ってきた尾根にスポットライトのように雲の切れ間から差し込んだ太陽の光に紅葉が映えて、これがまたきれいだ。北西から冷たい強風が吹きつけ、手が冷たい。山頂は目の前だが、ここで手袋をはめる。真っ白な砂礫の尾根を蛇行して小ピークを越え、急斜面を下る。鞍部から登り返して花崗岩が風化してできた白いザレ場を通過し、風になびく枯れた草の斜面を登り、三池岳山頂に立った。

 南の釈迦ヶ岳から西にかけて紅葉の大パノラマが広がる。既に葉を落とした木も多いが、黄色や赤色の樹木が入り混じったモザイク模様の山並はまるで油絵の世界。釈迦ヶ岳へと続く稜線が美しい。北には竜ヶ岳の上部が見える。パノラマ写真を撮っていると、八風峠で休息していたパーティが空荷で山頂に到着。ザックは峠に置いてあるとのこと。寒いので山シャツを着て、北へササの道を下ると、ガレ場上部から東側の展望が得られた。斜面は紅葉した木に埋まっている。右手には下りの尾根コースが見え、その紅葉の美しいこと。シロモジなど黄色に紅葉する木々が多く、黄色が目立ってこんな光景はなかなか見ることができない。下方に見える山々はまだ紅葉していないことから、紅葉の山が引き立つ。ここでも一眼レフでたくさんの写真を撮った。

 山頂に戻ると駐車場で出会った単独男性に写真撮影を頼まれた。山頂は強い風が吹き、風を遮る場所がなかったことから、すぐ隣にある三角点のピークまで行ってみる。踏み跡をたどると、三角点手前で竜ヶ岳の展望地があった。三角点の周囲はササに覆われ僅かの裸地がある。展望は北側が少し開けている。ササを風除けにして三角点の横でランチにする。メニューはカレーうどんと缶詰。先ほどの単独男性が尾根コースを下山し、それ以降、誰も登ってこない。駐車場にたくさん車があったが・・・。静かな山頂でのんびりと昼食を楽しむ。流れる雲の隙間から陽が差すと温かい。コーヒーで締めくくってランチを終えた。

 帰路はここから尾根コースへ。ササ付きの天然林を下る。道はなだらかになり、紅葉のトンネルを快適に歩く。実に雰囲気のいい尾根である。左の樹間からは竜ヶ岳が望めた。右には逆光に映える紅葉の向こうに釈迦ヶ岳がシルエットとなっている。三角点から10分ほど下ると左側がきれ落ちた尾根となり、前方に白いガレ場が見えてきた。急傾斜の道を降りてガレ場上部に出た。眼下の谷は紅葉の木々で埋め尽くされている。ガレ場上部を通過する道は砂礫で谷側に傾いていることから、足を取られないようにゆっくりと歩く。すばらしい展望であり、谷を隔てた山の紅葉が美しい。その向こうには竜ヶ岳。紅葉の写真を撮るために陽が当たるのを10分ほど待っていたが、思うように陽が差さない。あきらめて先へ進む。

 ザレ場から2分ほど下ると小さな池が現れた。お菊池である。この池の伝説は有名な怪談「番町更屋敷」そのもの。茶屋の大切な皿を割ったお菊がこの池に身を投げ、そのたたりで陶器を持って峠を越えると嵐になるという。池の近くに白いものがあったので近づいてみると割れた白い皿だった。これには驚いた。伝説にちなんで誰かが置いたのであろうか。それとも・・・。落ち葉の沈んだ池の水面に映る紅葉の木々が美しい。

 池から下って福王山への分岐点を通過すると急降下が始まる。ササの中の道を木につかまりながら下る。ザレたところや岩のあるところ、木の根がむき出しになったところなどこれでもかと急斜面が続く。ゆるやかになり砂礫のヤセ尾根を通過し、急傾斜が終わったかと思ったが、再び急傾斜となる。ロープのある岩場を下りて倒木を越える。常緑樹が増え、谷側の音が聞こえるようになった。
 
 30分ほど急斜面を下り足が痛くなった頃、ようやくなだらかな道となった。大きなモミの木があり、道は左方向へ。右には滝が見下ろせ、常緑樹の尾根となる。右の斜面にロープがあり、踏み跡もあるが直進の跡のほうがしっかりしているのでまっすぐ歩くと前方にピークがある手前で道が怪しくなった。ピークに向って踏み跡が続いているが倒木や小枝で進入が止められているようにも見える。ロープのあるところまで一旦もどって道を確認するが間違ってはいないようだ。
 
 倒木を跨いでピークを登ると「崩落迂回路」の標識があった。ピークを巻くように道は右にトラバースし、ヒノキの人工林となる。幹に書かれた赤丸印を追って歩く。尾根から折り返した辺りで、作業道に入り込んだりもしたがルートファインディングしながら下って林道に下りた。林道には尾根コースの登山口の標示があった。2分ほど林道を歩くと重機が置いてある広場に出た。ここが射撃場のようだ。広場の入口に向って歩き、立入禁止の簡易ゲートを出ると駐車地点のすぐ近くで、朝、車で通過したところだった。まだたくさんの車が停まっている。単独2人、5人パーティ1組の7人にしか出会わなかったことから、ここに駐車した大部分の人は釈迦ヶ岳に登っていると思われた。
 
 最高の紅葉に出会えた山歩きとなった。三池岳は2時間で登れる手軽な山で、歴史的遺産や美しい天然林が多く、また谷や尾根など周回コースは変化に富んでいる。そして展望も一級。道はしっかりしているが登りの渡渉手前で山側に入り込みやすい。また、尾根コースの林道手前の迂回路と人工林付近も注意。ザレ場上部や尾根コースのザレた急斜面も慎重に。次回は釈迦ヶ岳まで足を延ばしたいと思った。
★三池岳からの展望


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