妙法ヶ岳【華厳寺〜横蔵寺縦走】 (667m 谷汲村) 2004.11.3 晴れ 2人

華厳寺駐車場(9:20)→華厳寺本堂(9:30)→東海自然歩道本道合流(9:41)→奥の院(10:05-10:09)→稜線(10:21)→妙法ヶ岳山頂(10:41-10:46)→鉄塔(10:49)→4750m(コース半分)の表示(11:34)→606m三角点・ベンチ(11:51-12:58)→林道横断(13:12)→シャクナゲ平(13:19)→横蔵寺旧跡の石碑(13:32)→仁王門跡・熊谷直実の墓分岐点(13:39)→稚児岩(13:42)→熊谷直実の墓(13:44-13:48)→仁王門跡・熊谷直実の墓分岐点(13:52)→林道横断(14:10)→曼陀羅の滝(14:13)→横蔵寺(14:18-14:23)→横蔵集落(14:35)→(自転車)→華厳寺駐車場(15:16)

 3年前の4月、残雪の妙法ヶ岳から望んだ白銀の小津権現山の印象は今でも強烈に覚えている。あの時、妙法ヶ岳から先を横蔵寺まで歩いてみたいと思いつつ、今日まで実現しなかった。と、いうのも起点に戻るためには車2台または本数の少ないバス利用となるため、なかなか踏み切れなかった。今年、西台山に出かけた時、華厳寺から横蔵寺の道の状況をよく観察してみると、横蔵寺から華厳寺へはトンネル手前の僅かな坂道を登れば後は下り。これなら自転車でも戻れそうだ。

 らくえぬの職場の秋のハイキングの下見も兼ねて、東海自然歩道の「谷汲・信仰と巡礼の道」を歩くこととした。MTBを2台車に詰め込んで谷汲村を目指す。紅葉の時期でもあり華厳寺への参拝客は多く、9時頃には村営駐車場に入る車が何台かあった。駐車料金は400円。参拝客に混じって、ザックにストック姿はよく目立つ。

 開き始めた参道の店を見ながら歩くのは楽しい。山歩きのおやつに名物の草餅5個300円を購入。階段を上りきって本堂で参拝し、今回は本堂から右手に出て、ため池を右に見ながらぬかるんだ道を登った。さきほどの賑わいはすっかり消え、ヒノキの大木が静粛の空間を創り出している。

 5分ほどで大きな道に出る。標識には東海自然歩道本道まで0.2kmの表示。東海自然歩道は本巣市神海駅から華厳寺の裏を通り妙法ヶ岳を経由して横蔵寺まで稜線伝いに伸びている。方向が反対のような気がしたが、本道合流の表示に従って右に進む。道はすぐに暗いズギ林に吸い込まれる。5分ほど歩くと、三叉路。ここで自然歩道に合流する。奥の院1km、妙法ヶ岳2.1kmの表示。

 フユイチゴを見ながら左へ。谷川を渡り返してスギ林の中を登っていくと5分ほどで再び三叉路。前回は、華厳寺本堂奥の満願堂から山道に入るコースを歩き、この三叉路に出た。ここから先は、前に歩いたコースとなる。横蔵まで9.5kmの表示。東海自然歩道の資料によると、旧名鉄谷汲駅から横蔵バス停まで10.7kmである。先月の大雨のためであろうか、崩壊地ありの注意書きもある。

 奥の院までは33の仏像が小さな社に祀られており、ここには13番の仏像がある。谷川を渡り返す。立派な木造の橋もある。谷川の所々には小さな滝があり、16番の仏像の近くには一段と美しい滝が流れている。仏像を数えながら歩く。道は一旦林道に接するが、すぐに山道へ。奥の院0.3kmの標識を過ぎれば、数分で奥の院の前に出る。下りてくる参拝者にどこまでと聞かれ、横蔵までと言うとびっくりされた。

 奥の院で手を合わせ、一息。奥の院では準備であわただしそう。掃除中の男性に行き先を聞かれ、横蔵と告げると、かなり距離がありますとのこと。その言葉にせかされるように、奥の院を後にする。裏のトイレ辺りからは谷汲村の集落が朝日にきらめいていた。すぐ上の休憩所の脇を抜けて、丸木階段を上る。鉄塔巡視路の分岐もあるが丸木階段を登れば道を間違えるようなことはない。

 先ほど登ってきた谷の最上部を西に横切り、尾根に出て整然と並ぶスギ林の中、ジグザグの階段を登る。急斜面に付けられたこの道は結構きつい。中にはかなり大きな段差の丸木階段があり、足を上げるのに一苦労。奥の院から20分ほどでこの苦しい道を登り切り稜線に出る。北側の視界が開け、大きな鉄塔も見える。山頂まではもうひと登りある。またまた丸木階段。展望はないが、黄色くなりはじめたシロモジなどが疲れを癒す。下ってくるご夫婦の登山者に出会った。今まで登山者に出会わなかっただけに、うれしい。妙法ヶ岳の少し先まで行ったが熊が出そうなので引き返したとのこと。華厳寺で熊に出会わないようにとお参りをしておくべきだったか・・・。

 稜線に出て20分ほどで前方に茶色に緑字のよく見かける山名表示板が目に入った。妙法ヶ岳山頂である。中央に二等三角点。横蔵までの概要図の看板があり、北側に冠山と書かれていたが、恐らく小津権現山のことだと思われた。先は長いので記念写真を撮って山頂を先へ下る。

 すぐに前方に白く輝く巨大な鉄塔。その向こうに小津権現山から花房山の稜線が美しい。北にはセピア色をした西台山が雲を背景に浮かび上がっている。南に見える山は小島山であろうか。揖斐川が光っている。3年前には、鉄塔の東側が伐採された直後であり、舟伏山などが見渡せる展望地になっていたが、今ではすっかり潅木の林になっている。

 再び広葉樹の稜線歩きとなる。左にヒノキ林を見ながら丸木階段を下り登り返してピークへ。自然歩道であり、ピークにはタバコの吸い殻入れが設置されている。この先、小刻みにいくつかのピークを越える。広葉樹あり、スギ・ヒノキの人工林あり、アカマツも見られるようになる。右前方下に山肌に付けられた林道があり、車も見える。ササクサに注意しながら急な石の階段を登り返す。この辺りのシロモジの黄葉がすばらしい。台風の影響であろうか、道にはかなりの落ち葉が散っており、かなり葉を落とした木々も見られる。今年の紅葉はあまり期待できないかもしれない。

 山頂から30分ほど歩いた。何度ピークを越えたのであろうか。左に大きな岩が現れ、「シャクナゲ採取禁ず」の標識。今まで稜線上を歩いてきたが、この辺りから左山で北斜面を歩くようになる。苔むしたスギの切り株から真っ白なキノコがたくさん出ていた。今、話題のスギヒラタケである。美しいキノコだ。天使の翼とも呼ばれるキノコであり、一枚を手に取ってみると、ちょうどカニチップスのような感じで、食べてみたくなるが、そこまでの勇気はない。右下に先ほど遠くに見えた林道と車がある。森林作業の車のようだ。

 「境界見出票・北越製紙」の看板を見る頃、道は北に向きを変える。このコースはV字型になっており、この辺りがV字の一番下の曲がり角に当たる。左山で斜面をトラバースして北方向へ急斜面を登りピークへ。痩せ尾根を下っていくと、右手に今まで歩いてきた妙法ヶ岳とそれに続く連続したピークが樹間から見える。痩せ尾根の登り下りが続く。妙法ヶ岳の写真を撮ろうと、木が邪魔しない場所を探しながら歩いたがなかなかいい場所がなく、妙法ヶ岳はどんどん後ろに下がっていく。やむを得ず、右の潅木の中に分け入って写真を撮った。それにしても気持ちのいい尾根だ。落ち葉を踏んで歩く秋の山はいい。

 またまた冠山の描かれた白い標識が現れる。4750m地点でちょうど中間地点。2時間以上歩いてまだ半分の距離である。先は長い。11時半を過ぎたので、昼食にいい場所はないかと歩く。右手はヒノキ林。下の方からチェーンソーの音が響いてきた。間伐の作業が行われているようだ。ヒノキ林の中のピークを越えていく。今度は左下に白いガードレールのある林道が見えてきた。登山道には今切り倒されたばかりのヒノキが短く切られて転がっている。チェーンソーの音も大きくなった。

 道は登り坂になる。今度はちょっと大きなピークのようだ。腹も減ってきた。ゆっくり登り詰めると、ヒノキ林の中に立派な木のベンチとテーブルがあり、ご夫婦の登山者が休息中。ベンチから10mほど西に三角点があった。地図を見てここが606m地点だと分かる。だいぶ横蔵に近づいた。ご夫婦は横蔵から登って見えたようで、互いにこの先の状況を聞いた。2人は妙法ヶ岳方向へ出発。我々はここで昼食とする。

 豚トロの網焼きと煮込みラーメンにコーヒーとキウイフルーツのデザート。華厳寺の売店で仕入れた草餅が美味しかった。樹林帯の中で展望はないが、秋の木漏れ日の中で食べるランチは最高。

 ここから、北へ人工林の中を下る。結構な急坂である。珍しいキノコを見つけた。地面の卵のような殻から伸びた真っ白な柄とこうもり傘をすぼめたようなしわのある黒っぽい傘。アミガサタケかと思っていたが、帰って調べてみるとスッポンタケ。傘には昆虫を引き寄せる臭い粘液を出すが、中華料理に使われる食用キノコ。このキノコの学名は外観からとんでもない名前が付けられているのには笑ってしまった。和名はまだ品がいい。

 前方から大勢の登山者が登ってきた。聞けば、浜松から来た40人の団体さん。これから華厳寺まで歩くと言う。夕方には着くだろうが、それにしても浜松からというのには驚いた。606mピークから15分ほどで林道に出た。自然歩道は林道を100mほど右に進み、舗装された道の左側に繋がっている。

 うっそうとした人工林の中には大きな株スギも見られる。たくさんのシャクナゲがあり、シャクナゲ平の表示。こんな針葉樹林の中でもシャクナゲは育つようだ。イワウチワのあるヒノキやスギの巨木の林をジグザグに下る。スギの枯れ木にはスギヒラタケがたくさん見られた。中には落ち葉の中に散乱したスギの枝から出ているものもあり、まるで地面の中から生えているように見える。

 谷川があり右に池、その向こうに石碑とのぼりが現れる。横蔵寺旧跡である。かつて横蔵寺はこの場所にあった。政所や仁王門などがあり多くの僧侶が住んでいたが、戦国時代に信長により攻め滅ぼされたらしい。今ではヒノキ林となっているが、平らな地形から当時の様子を想像することができた。

 ここから右へ細い道が派生しており尾根へ上がっている。踏み跡もしっかりしているので、どちらへ行こうか迷ったが、左の本道を下った。すぐに東屋のある仁王門跡に出た。ここからも右へ道があり、熊谷直実の墓と書かれていた。先ほどの細道はこの墓に続いているようだ。墓へは登りになるがせっかくだから行ってみる。

 すぐ上に馬場跡、さらにその先に巨大な稚児岩が聳えていた。「稚児の悲しいエピソード」と書かれており、どのようなエピソードか知りたいと思った。その先に熊谷直実の墓がたくさんの石像に囲まれてひっそりと建っていた。直実は平敦盛の首を取った後、修行僧となって放浪しこの地で亡くなったという。古き歴史の地の後方には堂々たる小津権現山がこちらを見つめている。

 引き返して、人工林の急坂をジグザグに下る。ファミリーの一行と出会い、横蔵寺が近いことが分る。林道を横断し、曼陀羅の滝を通過。水量は少ないが、癒しの空間が広がる。左に県民いこいの森を見下ろしながら横蔵寺の裏に出た。ここにも冠山の描かれた看板があった。大勢の観光客に混じって参道を下り、横倉バス停へ。バスの時間を見ると華厳寺へ行くバスは7時40分の後は11時台しかない。横蔵に車を停めて7時40分のバスで華厳寺に向かえば縦走可能である。

 停めておいた自転車で華厳寺に向かう。トンネル手前の坂は最も軽いギアで上ったが、結構登りがいがあった。山登りよりもきついとらくえぬ。トンネルからは下り坂。猛スピードで下ってあっという間に華厳寺に着いた。横蔵からちょうど30分かかった。

 このコースには大展望こそないが、天然林や人工林の稜線を歩くすばらしいコースである。また、登り口と降り口に観光地があり、旧跡なども見られる。ハイキング気分で歩けるコースである。
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