カシミール3Dで作成 青線は推定トレース(トレースに失敗しました) →
*このHPの地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)

  南木曽岳からの展望と花を見る
南木曽岳 (1677m 長野県) 2006.6.10 曇り 3人

駐車場(下段)(8:48)→駐車場(上段)・ゲート(8:53)→登山口・金時の生湯(9:10)→周遊コース分岐(9:26-9:30)→喉の滝(9:41)→コウヤマキ自然林表示板(9:56)→ベンチ・新道旧道分岐(10:15)→山頂まで530m表示(10:30)→兜岩(10:51)→南木曽岳山頂(11:00-11:10)→避難小屋・展望地(11:24-13:04)→摩利支天(13:23-13:28)→第1展望台(13:38)→崩壊地(14:00)→周遊コース分岐(14:33)→林道合流(14:45)→男滝・女滝分岐点(15:02)→男滝・女滝(15:07-15:13)→駐車場(上段)(15:17)→駐車場(下段)(15:20)

 昨年、横川山の山頂から、特徴のある形の山が間近に見られた。登山者から、その山が南木曽岳であること、そしていい山であることを教えてもらった。それ以来、この山を登りたい山のリストに加えたが、なかなか実現できなかった。梅雨入り直後の休み、晴れ間が期待できるとの予報に、前夜、この山を選んだ。

 急ではあったが、見当山でご一緒したBOGGYさんの参加を得て、早朝、中央自動車道を長野県方面に向かう。中津川ICを下りる頃、雲が低くたれ込め、周囲の山には雲が・・・天気予報は晴れか曇りだったのに・・・。国道19号線で長野県に入り、南木曽大橋を渡った次の信号交差点を右折して256号線へ。妻籠宿への道である。妻籠宿を通過し、ホテル木曽路を左に見ながらしばらく走ると「南木曽岳・南木曾蘭キャンプ場」の案内が左にある。ここを左折。

 南木曽蘭キャンプ場への道は狭いが舗装されており問題はない。ちょうどキャンプ場の開場の日であり、多くの作業車が止まっていた。駐車場にトイレがないかもしれないと思い、道沿いのキャンプ場のトイレに立ち寄る。ここから、更に上って少しだけ未舗装道路を走ると駐車場が現れた。4台ほど駐車してあり十数台駐車可能。身支度する登山者の姿も見られた。

 この駐車場に停めて、歩き始める。登山口へは駐車場からさらに100mほど林道を上がる。すぐに、数台駐車できる広場に着く。ここには休息小屋とトイレ、協力金箱、登山届け用ノートが置かれていた。ノートに書き込んで、案内板でコースを確認。コース途中から時計回りの一方通行となり、周遊して戻ってくる。

 登山口までは林道を十数分歩くが、駐車場から林道に入った所に赤いゲートがあり、ここから遊歩道を通れば林道をショートカットできる。ゲート前で小さなアヤメのような花が咲いていた。ヒメシャガである。名前はよく聞くが、見たのは初めて。

 薄暗い遊歩道を歩く。昨日の雨で、木道はツルツルになっており、滑らないようにゆっくり歩く。「男滝・女滝180m」の表示。滝は帰りに寄ることに。林床には針のような細い柄に数ミリの白い傘を付けたキノコが無数に見られた。よく見ると、アスナロの落ち葉から生えている。不思議なキノコもあるものだ。真夜中、月の光が差し込む森の中で小さなキノコたちがざわめいている様子が想像できた。

 林道に出て、白い砂をサクサクと踏みながら、ヒメシャガやハナニガナを見ながら歩く。前方に岩を露わにした男性的な双耳峰が見える。左が南木曽岳の山頂である。「金時の生湯」と呼ばれる池を右に見て、次のカーブ地点左側に登山口がある。登山口からは谷を遡る。谷に大きな堰堤を見ながら、ホウやトチなどの広葉樹が頭上高く葉を広げる新緑のトンネルを歩く。コシアブラの大木も見られた。

 昨日の雨で濡れた滑りやすい木橋を渡って林道の登山口から15分ほど歩くと下山道との分岐点に出る。ここからは時計回りに一方通行で周遊コースとなる。ここで一服。チョコレートが美味しい。谷の音を聞きながら左の道へ入ってすぐに、谷の向こうに「金時の洞穴」を見る。木橋を渡り、ロープ付きの大岩を上り、山頂まで1.7kmの表示を通過。涸れた谷を渡る辺りには、ヒメシャガの可憐な花やムカデが首を持ち上げたようなシシガシラと思われるシダが葉を広げる。

 谷を渡り返して、左方向へ登ると、正面に大きな山が見える。これまで、あまり標高を稼いでいないため、これから急登が始まるのであろうか。「喉の滝」を右に、林床にギンリョウソウを見ながら木道をトラバース。「金明水」の表示を通過して、南木曽岳名物のコウヤマキの原生林に入る。いつしか谷を離れ、斜面をジグザグと登っている。1年で僅かにしか成長しないと言われるコウヤマキの巨木が天を突く姿は、他では見られない光景である。これを見られただけでも、ここに来た価値はある。

 地面に白い合弁花が落ちている。見上げれば、シャクナゲがピンクの花を咲かせている。後方から単独男性が登ってきた。「きついですね」と汗を拭きながらあいさつ。先に行ってもらう。「コウヤマキ自然林」の表示を見る頃、コウヤマキの樹間から前方に2コブの山が見える。山頂まではまだまだ。明るいコウヤマキの尾根道にはたくさんのブドウ状の花が落ちている。3〜4月に咲いたコウヤマキの雄花である。

 尾根は急斜面に突き当たり、そこには木の階段とクサリ場が上へと続く。おもしろくなってきた。後方にコウヤマキの林を見ながら、登り切って岩場で休憩。樹間から恵那山を眺めるが、木が邪魔でうまく写真が撮れない。一息ついて、ひと登りすると、ベンチのある明るい広場に着いた。ここで休めばよかった。ちょうど夫婦が休息を終えて出発するところであった。

 ここは新道・旧道の分岐点。旧道は左のワイヤーが続く岩場。右の新道は木道の迂回路。迷わず旧道の岩場へ。花崗岩の大岩を三点支持で登っていく。甲斐駒の直登コースを思わせるが、その超ミニ版。岩場から振り向くと丸い恵那山がすばらしいが、写真を撮る余裕がない。

 一登りで新道と合流。登り切ったところは見晴らし良好。一眼レフで恵那山を撮った。手前は富士見台や横川山の山群であろう。ファインダーを覗き込むのに夢中で、ササで隠れた路肩を踏み外して崖から落ちるところだった。足下には注意。

 ササ付きの急斜面をジグザグにトラバース。下界には妻籠の集落が見える。山頂まで530mの表示を通過。この辺りはササのきつい急登。一歩一歩の登りが続く。顔の周りに虫がまとわり付き、3匹ほど飲み込んでしまった。山頂は虫が多いかも・・・。オウレンの葉を見ながら、ヒノキの大木の尾根を歩くと、前方にピーク。右方向にもピーク。かなり近づいてきた。ササ付きの急登尾根は容赦なく続く。最後のがんばりどころ。微妙に花色の違うイワカガミがたくさん咲いており、疲れを忘れさせてくれる。右手に兜岩を眺める。長い年月が作り上げた大自然の造形物だ。ウスギヨウラクを見ながら、大岩を乗り越えるとようやくなだらかな道になった。GPSが山頂間近を教えてくれる。

 金時池を左に、木道の割木が積まれた草地を抜けると山頂到着。二等三角点といくつかの山名表示板。1667mと1679mの2つの標高が書かれていた。樹木に囲まれて展望はないが、南側の大岩に出ると、見晴台がある。濃い色のシャクナゲが大きな蕾を付けている。途中で追い抜いた夫婦が登ってみえた。

 記念写真を撮って、展望地を目指す。すぐに小さな神社と見晴台があり、見晴台の大岩に登ると、北側が大展望。まだ雪を乗せた御嶽山がぼんやりと確認できた。ここから一旦下って登り返す。樹木は無くなり、気持ちの良いササ原となる。展望も良く、後方に恵那山。北に御嶽山が見える。足下にはマイズルソウが白い花を咲かせている。

 ピークを越えるとササ原に赤い屋根の避難小屋。そして、その向こうに広がる中央アルプスの大パノラマに歓声。これが見たかった。先ほどの疲れも忘れて避難小屋まで写真を撮りながら下った。避難小屋にはトイレもあり、内部はきれいだ。小屋の先には山の名前が書かれた看板2枚。ベンチでは焼き肉を楽しむパーティー。看板の裏の岩の上からは木曽駒ヶ岳から南木曽駒ヶ岳へ続く縦走路が美しい。アルプスは目の前。看板を見ながら1つ1つ山の同定が始まる。思い出の三ノ沢岳や未踏の空木岳に登りたいと思った。南には摺古木山や安平路山が大きい。これも登ってみたい山のリストに加えておこう。穂高方面が見えないのが残念。

 焼き肉の煙を避けて、一段下の岩の上でランチにする。隣で先ほどのご夫婦が昼食中。BOGGYさん恒例のチャーハン弁当が出てきた。今回はカレーチャーハンで新メニュー。夏向きの味で美味しい。リボン型のマカロニが入ったカポナータも美味しい。白ワイン付き。

 隣のご夫婦にもお裾分け。トマトソースのおいしさに「なぜお店を出さないの?」と不思議がられた。BOGGYさんがHPのアドレスを紹介。料理の話題で大盛り上がり。我々の持参したメニューはうどん入りカニ鍋。夏に食べるメニューではないが、夜中に山行を決めたため、あり合わせのランチ。サクランボのデザートとコーヒー付きのフルコースで今回も腹一杯。目の前に大展望、ササの中にはイワカガミが咲き、昨年の横川山のように、虫が飛び回ることもなく、のんびりとランチタイムを終えた。

 下りは周遊コースのため、目の前に見えるピークを目指す。ササ原を鞍部まで下って、右手に古い小屋を見ながら登り返して展望のよい岩のピークへ。双耳峰の左側である。ここからは南アルプスの峰々が望めた。ヒノキとササの尾根を歩き、表示に従って摩利支天に寄ってみる。ぬかるんだササの道を歩き、手前に石碑、その先には大きな岩がある。岩に登ってみると南側が大展望。西には笠置山も見える。岩の先から下を覗き込もうとしたが、ちょっと怖い。

 分岐まで戻って、ヤブっぽいササ道を下る。登山口まで2km・70分の表示を通過し、グングン下っていく。階段あり、木道あり、クサリあり。展望はいいが足下に注意。第一展望台を通過。階段を上がると大岩の上に出られるが、これはパス。

 ハシゴ、木道、岩、クサリ・・・真っ逆様に下りていく気分だ。そして、とんでもない木のハシゴが現れた。垂直に近いササの斜面にハシゴが設けられ、クサリが1本付けられている。ハシゴの先がササの中に消えて見えない。後ろ向きで一歩一歩、踏み外さないように下りていく。まるでインディージョーンズの吊り橋が切れた状態である。木が乾いて滑らないが、雨の日には注意。これを乗り切って、まだまだ急降下が続く。汗が噴き出す。

 ヒノキ林となり、シャクナゲもいくつか見られた。小休止して、更に下る。小さな崩壊地からは右手に険しい山が見えた。再びコウヤマキの林に突入。これでもかと垂直階段、クサリ場、木の根の斜面が続く。足がガクガクしてきた。山頂から1時間以上歩いて、ようやくなだらかになった。蕾をつけたトンボソウと思われる植物も見られた。右手には登りで歩いた尾根がよく見える。

 登山口まで0.9kmの表示を通過。その先が土砂崩れで登山道が崩壊しており、迂回路の新しい道が切り開かれていた。満開の大きなヤマツツジの木を見ながら、道はしだいに右にカーブし小さな涸れた谷を渡って谷川の音が聞こえると、合流点に出た。やれやれ。無事到着。

 この先は楽勝。午後の日差しを受けた緑色のトンネルを歩いて、林道に出た。近道に入り 、東屋の先から「男滝・女滝180m」の表示に従って滝を見に行く。ゆるやかに登って数分で滝に着いた。2つの谷筋の奥に男滝と女滝が白い水しぶきを上げている。それほど大きな滝ではないが、美しい。ここから、谷に沿って下り林道に出て右へ歩くと、トイレのある駐車場手前に出た。下山届けを記入して、駐車場まで戻った。帰路、登山口近くにある木曽路館の湯に浸かって汗を流し、中山道・馬籠峠を経由して中津川市に抜けた。

 実に変化に富んだ山であり、面白かった。この山の下りの急降下は、他の山では味わえない魅力であろう。木道や岩場、木の根の斜面など、足下の注意が必要。特に雨天や雨上がりは要注意。何と言っても、オンリーワンであるコウヤマキの原生林はすばらしい。また、この時期にはシャクナゲやヒメシャガが美しい。マルバノキも多く、秋にはすばらしい紅葉が見られるであろう。
 山のリストへ