トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平23情使、第517号) 

野坂岳 (914m 福井県) 2012.4.30 曇り 2人

野坂いこいの森登山口(9:40)→栃の木地蔵(10:11)→行者岩(10:42)→一の岳(10:56)→二の岳(11:17)→三の岳(10:27)→避難小屋・野坂岳山頂(11:35-12:46)→三の岳(12:51)→二の岳(12:59)→一の岳(13:19-13:26)→登山口(14:07)

★4月30日に福井県の野坂岳に登って来ました。
★「少年自然の家」をスタート。アカマツ林を抜けて広い道を谷沿いに登りました。
★ニリンソウやイチリンソウ、さまざまなスミレ類などの花が切れ間なく続く道は見事。
★水場を後に谷を離れ、人工林を抜け、前方のピークに向かって歩きました。
★強風の行者岩に立った後、「一の岳」を経由。後方には敦賀市街地や敦賀湾が霞んでいました。
★「二の岳」を通過し、美しいブナ林の尾根へ。すばらしい癒しの世界に感動。
★雪渓を見ながら、ブナ林の銀色の世界を「三の岳」へ。
★「三の岳」を過ぎると、避難小屋の建つ山頂が目の前に。
★カタクリやイワナシ、ショウジョウバカマの花を見ながら野坂岳山頂へ。
★強風の山頂からは360度の大展望。避難小屋の前で暖かいランチ。
★曇天で遠望は得られませんでしたが、いろいろな花と萌黄色の春の山に大満足の山旅となりました。


 連休の隙間を見つけて日帰りの山歩きの計画を立てた。当初は久しぶりに鈴鹿の山に登ろうと思ったが、南ほど降水確率が高い。方向を北に変えて、福井県敦賀市の野坂岳を選んだ。敦賀市街の南に位置する人気の山であり、ここなら連休の渋滞もない。敦賀の山は今回が初めてとなる。

 国道303号線で八草トンネルを抜けて木之本ICから北陸道に入る。混雑する賤ヶ岳SAに寄って、琵琶湖産子アユや山菜の天ぷらを購入し、昼食のメニューを充実。敦賀ICを下り、野坂岳の登山口である野坂いこいの森を目指す。いこいの森への道は単純ではなく地図を見ていてもよく分からないが、小浜線の粟野駅を目指せばいい。
 
 ナビに頼ったが2度ほど道を間違え、いこいの森の入口に到着。粟野駅の西側からいこいの森に向かって新緑の道を登る。一番奥まで登るとトイレがあり、10台以上停められる駐車場に着いた。ほぼ満車であったが、何とか停めることができた。駐車場のサクラはほぼ散り終わっているが、まだ咲いている木もある。靴を履き替えていると、隣の車の人が下山してきた。早い下山にびっくり。

 駐車場を後に、登山口に入り、無数の松ぼっくりが落ちているアカマツの広場を横断して舗装された道を登る。トキワイカリソウのピンクの花を見ながら歩くと「野坂山山頂 約2時間30分」の消えかけた標示があり、未舗装の人工林の遊歩道となる。人工林の中に、銀色の葉を広げ始めたヤブニッケイがたくさん見られる。

 落下したユキツバキの花を見ながら小さな流れを渡ると、足元に白い花を見つけた。ニリンソウとイチリンソウが咲いている。テレビ塔への分岐点を通過し、両脇に側溝のある広い道を歩く。スミレが現れた。タチツボスミレかと思ったが、よく見るとナガハシスミレである。昨年の春に登った富山県の小佐波御前山で見て以来、1年ぶりに出会う花だ。

 人工林を抜けると右に谷を見る道となり、ニリンソウやイチリンソウの群落が見られる。特にニリンソウはたくさん咲いているが、一輪のものが多く、ニリンソウらしくない。タチツボスミレに交じってスミレサイシンも見られる。ミヤマカタバミはほとんど花が開いていない。トリカブトの群落も多く、ニリンソウとよく似た葉をしており、食用のニリンソウと間違えてトリカブトを食べて中毒になるニュースをよく耳にするが、このように混在していると芽吹きの時期には誤ってトリカブトを採取することもありそうだ。

 切り捨て間伐された人工林を右に、谷を左に見ながら登っていく。スミレ類やニリンソウ、キケマンなど春の草花が賑やかだ。早朝から登る地元の登山者と思われる何人かとすれ違った。人工林が終わると散り始めたサクラの木の下を通過。前方には萌黄色の谷が美しい。水場である栃の木地蔵があるところで谷を渡って左方向へ直角に向きを変える。桜の木があり、ここから敦賀市街や敦賀湾が一望できる。しかし春霞で遠くは見えない。

 折り返して杉林を抜けると満開の桜。今、この辺りの標高が満開の桜前線である。再び折り返して大木の杉林を歩く。雪が多く、根元が曲がった木が多い。突き当たって尾根に出ると山頂まで約2kmの標示。直角に右に向きを変え、尾根を左に外して緩やかな道となる。芽吹きの天然林が美しく、道の脇にはミヤマカタバミやスミレサイシン、ナガハシスミレ、トキワイカリソウなどの花が続く。

 前方に見える山肌に大岩が見える。後に、この大岩が行者岩であることが分かる。すぐに行者岩分岐点が現れた。行者岩に寄ってみることにして右のトラバース道に入り、ロープのある垂直に近い大岩の横を登ると大岩の上に出た。ものすごい強風が吹いて、立っていられないほど。晴れていればすばらしい展望に違いないが、今日は霞んで展望は得られない。すぐに分岐点まで引き返す。下ってきた単独女性と挨拶。山頂はすごい風が吹いていると聞いた。

 キブシやマメザクラの花を楽しみながら展望のいい道を歩くとベンチと石仏のある一の岳に到着。石仏に手を合わせてノンストップで先に進む。ジグザグと登ってピークを右山で回り込んでいくと前方に二の岳のあるピークが見えてきた。タムシバやムシカリの白い花がまだまだ早春であることを教えてくれる。

 尾根道となりブナが多くなってきた。白い花のスミレはオトメスミレのようだ。エンレイソウが地味な花を付けている。クローバー状の葉と花の形が似ていることが面白い。道脇にササが現れたが、ササの葉が全く付いていないのはシカの仕業であろうか。

 なだらかな道となり、見事な枝振りのブナが続く。右下は人工林となっている。二次林の潅木帯となり、足元にはこれから花を付けようとしているツクバネソウがいくつか見られた。潅木の道はブナ林となり、二の岳を通過。美しいブナを見ながら水平に歩いて下りにかかる。前方には三の岳のピークが見える。鞍部を目指して下る。北側の斜面には雪が残っている。白い雪とセピア色の落ち葉の地面、そこからすらりと伸びる銀色のブナの幹、そして黄緑色の若葉が頭上を覆う。すばらしい癒しの空間を歩く。

 鞍部から木の根が張った道の登りにかかる。この辺りのブナ林も見事である。落ち葉の地面からはちょうど双葉のブナの芽がたくさん出ていた。この芽のどれだけが生き残って大木になるのであろうか。折り返しながら一気に登って三の岳を通過。今度は前方に小屋のあるピークが見えた。野坂岳山頂は目の前。ロープが張られた尾根に出るといくつかのカタクリの花に出会った。ちょうど花の最盛期。カタクリの花に交じってイワナシやショウジョウバカマの可憐な花も見られた。この山の花が雪解けとともに一気に咲き始めたようだ。
 
 花を見ながら斜面を登りきると小屋の前に立った。小屋の前には何人かの登山者。小屋を後に、わずかに登ると方位盤のある野阪岳山頂に到着。強烈な風が吹いている。大勢の登山者がいる山頂からは360度の大展望。しかし、春霞がかかっており敦賀湾がかろうじて見える程度で遠望はない。それでも周囲の山や琵琶湖も見えた。敦賀三山といわれる西方ヶ岳や岩篭山も確認できた。パノラマ写真を撮る。しっかりした道は山頂からさらに東に続いている。少し下ってみたが、どこまでも下りて行けそうだ。
 
 方位盤で山の名前を確認し、山名標示板の前で写真を撮った。昼食の場所を探したが、山頂はどこも強風のため避難小屋まで戻って、小屋の前の芝生の上で昼食にする。小さな芝生広場の縁にはトクワカソウの群落があり、たくさんのピンク色の花が咲いていた。いろいろな花を見ながら登ってきて、最後にトクワカソウに出会えるという演出がすばらしい。踏まれそうなところにカタクリも咲いていた。

 昼食は雑炊とSAで購入した子アユと山菜の天ぷら。この天ぷらが最高に美味しかった。隣に単独女性が昼食をとってみえた。連休を利用して湖北や敦賀の山に来た大阪の女性で、交通機関を使って連泊での山行である。野坂岳へは東側のコースがあることを教えてもらった。コーヒーを飲みながらしばらく山談義。先に下山する女性を見送って、パッキングをした。避難小屋を覗いてみると板の間の隅に嶽権現安置所と書かれた立派なお社が置いてある。手を合わせて小屋を後にした。

 登ってきた道を下る。二の岳から一の岳に下るところで、一の岳の上部のピークに銀色の電波塔のようなものが見えた。その向こうには西方ヶ岳が薄く望める。花の写真を撮りながら一の岳まで下ると、山頂で出会った休息中の女性に、「ランの花が咲いている」と教えてもらった。シュンランの花が潅木の下でひっそりと咲いていた。栃の木地蔵のある水場でペットボトルに冷水を詰めて駐車場まで戻った。駐車場近くの道沿いにユキグニミツバツツジと思われる花を見つけた。最後まで、まさに花の山旅となった。

 展望は霞んで今ひとつだったが、たくさんの花に出会えて大満足。また、何といっても二の岳から三の岳にかけてのブナ林はすばらしい。野坂岳はアプローチもよく、また遊歩道のような道が山頂まで続いており危険な場所も無い。登る人も多く、まさに敦賀市民の山である。駐車場で再び下ってきた大阪の女性に出会った。粟野駅まで歩くというので車で駅まで送り、彼女と別れ、敦賀を離れた。
★野坂岳からの展望


★野坂岳の植物


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