トレースマップ (カシミール3Dで作成)
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)
大洞山 (1035m 郡上市) 2007.5.19 曇り、晴れ、一時雨 2人

大月の森公園管理棟(8:49)→展望台(9:31-9:38)→鉄塔(9:43)→谷コース分岐点(10:22-10:27)→916mピーク(10:32)→965mピーク(10:58-11:04)→大洞山山頂(11:30-12:44)→大月の森公園分岐点(12:50)→伐採地(12:58-13:03)→大月の森公園分岐点(13:10)→谷合流(13:24)→林道終点(13:34)→大月の森公園管理棟(14:04)

 今月、郡上市の京塚山に登ったとき、木々の間を通して目の前に見えた山は大洞山。今回はこの山を選んだ。かつてはヤブ山であったらしいが、最近は明瞭な道があり、ネット情報も多い。山頂にある一等三角点が多くの登山者を引きつけているのかもしれない。ネットをいろいろと調べてみると、通常は大月の森公園から谷コースを経て稜線に上がり、大洞山を踏んで時計回りに周回するのが一般的。

 こうした山行記録が多い中で、HP「風花的日常」の風花さんのレポートでは、大月の森公園の遊歩道を利用して南側の稜線に上がり、時計回りに円を描くように歩いた記録が掲載されている。途中で谷コースと合流することになる。以前、風花さんから、このコースのすばらしさを聞いたことがあった。風花さんのHPに掲載されていた大月の森公園にある案内板の地図の写真を印刷し、2万5千分の1の地図も持った。GPSには展望台や各ピークのポイントを落とした。これだけ準備すればコースを間違えることはない・・・ところが・・・。
 
 東海北陸自動車道を美並ICで下りて、156号線を北上。八幡の町に入る手前で堀越峠に抜ける新道に入りそびれて、八幡町の市街地南側から久しぶりに堀越峠へのヘアピンカーブを登った。今朝まで降っていた雨は止んだが雲の多い空。回復方向の天気予報を信じて、旧和良村に入り「道の駅和良」の入り口を過ぎた直後の小さな橋を渡ったところで左折。
 
 左折して車を走らせると道は比較的広く、集落が続く。やがて鹿倉川を右に見ながら、鹿倉の集落に入り、大月の森公園・大洞山の案内に従って左折。直進は東洞の案内がある。1kmくらい走ったところに分岐があり、ここでも案内に従って左へ。さらにその先の分岐も案内通り左へ。最後の分岐点から1kmも走れば、りっぱなコテージが建つ大月の森公園に着く。
 
 管理棟近くの広い路肩に車を止め、駐車場やコースの情報を得るため管理棟のドアをたたくが、留守のようだ。車もなく、公園利用者もいない。やむを得ず通行の邪魔にならないよう広い路肩に車を止めて靴を履き替えた。コースは、管理棟前から「ねずこの小径」と名付けられた遊歩道を登って南の稜線上にある展望台に出る。管理棟前にある案内板の地図は持参してきた写真の地図と同じであることを確認。ここで思わぬミスを犯した。この地図は大洞山までの全登山ルートが描かれたものであり、公園内の遊歩道はかなり簡略に記されている。案内板には遊歩道の拡大地図もあり、これを確認しておけばよかったのだが・・・。
 
 管理棟前の階段を南に登り、20mほど先で地図に従って右に曲がった。正解はこのT字路を左に曲がり、池の左から「オオムラサキの小径」を経由して「ねずこの小径」を登る。右は「カタクリの小径」。遊歩道をクランクして急な石の階段を登る。確かこの階段は風花さんのHPの写真と同じであり、道は正しいと確信した。風花さんのHPを十分に読んでいなかったことが、再びミスを重ねた。我々と同じように風花さんたちも遊歩道を間違えて、引き返し「ねずこの小径」を見つけたことが、帰って読み直して分かることになる。
 
 遊歩道は登ることなく山腹をトラバースして、さらに進むと下りの分岐が現れた。直進すれば折り返すように登って展望台へとつながっていたのだが、その時は「ねずこの小径」を登ることしか頭になかった。「ねずこの小径」は何処? ふと見上げれば、疎林の尾根が稜線目指して上方に続いている。急斜面だが十分に登れそうだ。広葉樹が間伐されており、それとなく道もあるように思えた。これが「ねずこの小径」かも。GPSを確認すると樹林帯で飛び飛びの軌跡。当てにならないが、尾根の先は展望台に続いているようだ。
 
 そうこうしているうちに、らくえぬはすでに尾根に取り付いている。こうしたいい加減な判断は山ではタブー。戻るのが鉄則であるが、行けるところまで行くことに。昨夜の雨で湿った腐葉土の尾根には、たくさんのシカの糞が落ちている。足跡もある。尾根を直進する。急斜面やつかまる木がないような開けた場所などを通過し、息を切らしてひたすら登ると、遊歩道に飛び出した。
 
 すぐ先にベンチのある展望台があった。ここで一息。登りはじめの準備運動にはちょっとハードすぎた。西には電線が見える。北側が切り開かれて、山並みが美しい。ここからは遊歩道を離れて稜線上の山道を歩く。表示は全く無いので注意。小鳥の巣箱やプラスチック杭のある稜線を下っていく。数分で開けた鉄塔下へ。すばらしい展望である。前方から右へ、これから歩く稜線が連なる。916mピーク、965mピーク、そしてなだらかな大洞山の緑が青空に映える。その先は市島か。鉄塔から下がる高圧線が左右に延びる。白い雲の影が山肌を這う。初夏を思わせる日差しの中で、開放感を全身で感じた。
 
 展望を楽しんだら先へ進む。鉄塔巡視路の道を右に見る。公園から鉄塔巡視路を登ってくるルートもあるようだ。天然林の中を急降下していく。カワラタケの生えた朽ちかけた丸木階段を下る。80mくらいの標高差を下って鞍部に到着。ここから150m以上を登り返して916mピークへ向かう。丸木のベンチが見られる。急斜面あり、緩斜面あり。丸木階段が続く。後方には樹間に先ほどの鉄塔が見える。左にヒノキの人工林が現れなだらかに。ベンチがあり、頭上にはベニドウダンの赤い花が揺れる。
 
 小ピークを通過し、ササの稜線を歩き、岩のある場所を登り返してピークを越える。シカの糞が見られ、ヒノキ、コウヤマキ、モミの針葉樹が多い。ヒノキの葉を肉厚にしたようなネズコも見られる。丸木階段の急坂を登りつめていくと、コウヤマキに囲まれたピークについた。大洞山の方向を示す看板があり、右へ道が下っている。916mピークに着いたと思ったが、ここは谷コースの分岐点。
 
 5分ほど休んで、再び急登をこなし、10分ほど登ると916mピークに到着。展望はない。先ほどまで日が差していたが、青空は消え黒い雲が北から近づいていた。風も強くなった。大洞山が右手に見える。左は深い谷。痩せ尾根を下って、次のピークへ左山でトラバース。向きを北に変えて、ササの斜面をぐんぐん下っていく。50mほど下って、ヒノキの幼木を左に登り返す。
 
 左にササの茂る稜線を上ると、展望のいいササ原が現れた。ササ原に出てみると、ササの中に薄い道が登山道と並行して続き、後方には歩いてきた916mピークなどがどんよりした雲の下に見えた。南西の山並みが美しい。遠くに見えるのは高賀山群であろうか。前方には、これから登る針葉樹と広葉樹が入り混じる965mピークが大きい。
 
 気持ちのいいササ尾根を登っていく。965mピーク手前は、後方がすばらしい展望である。雲が通り過ぎ、再び日が差し始めた。南には黒い雲が流れている。光の濃淡が入り混じり、美しい山並みを作る。この稜線歩きはすばらしい。振り向きながら登っていくと枯れ木のある965mピークに着いた。展望を楽しみながら、パンを食べてエネルギーを補充。
 
 数分休憩してピークを後にすると、すぐに黄色いプラスチック杭があり、道が分岐している。ネット情報では、どちらも行けるようだが、左の道がまっすぐつながっている。左を選んで急斜面を下ると、すぐ先で右からの道と合流。この道が先ほどの右の道とつながっているようだ。左にヒノキの幼木を見ながら小ピークを越え、いつしか尾根はササ付きの天然林に変わる。日の光を浴びる頭上の新緑は透明感のある黄緑色のトンネルを作り出し、なんと美しいことか。この山の最大の魅力はこの尾根歩きだと思った。
 
 大岩が現れ、ヒノキが乗った岩も見られた。ベニドウダンも見られる。小鳥のさえずりは疲れを忘れさせる。最高の気分で、稜線を歩く。大岩が続き、岩の上の枯れ木を見ながら、ピークを越えると再び正面にピーク。小さなピークが連続する。丸木ベンチと黄色い杭のあるやや広いピークに出るが、これは山頂手前のピーク。左方向に下って50mほどの標高差を登り返す。最後の登りと、急登をひとがんばり。
 
 右手が開けて、大洞山の標識が現れる。山頂到着。登り始めでつまずいたものの、2時間40分ほどで山頂に着いた。山頂は東西に長く、中央に一等三角点があり、天測点の残骸と思われるコンクリート片が転がっていた。天測点とは、恒星を観測して経度、緯度を決める測量に使用されたもので、昭和26年から5年間で全国に48点を設置され、その1つがこの大洞山にあった。壊されており、本体を見ることができなかったのは残念である。
 
 東側が切り開かれており、正面には東洞岳の緑色の美しい稜線が望めた。雲が多く、下呂方面の山並みがかすかに遠望できる。北にはかろうじて市島が確認できたが、歩いてきた展望台や鉄塔は見えず、高圧線が眼下を横切っていた。山頂から西へ道が続いていたので100mほど歩いてみると、テントが張れそうな人工的とも思われる広場があった。木立に遮られて西側の展望はない。
 
 三角点の横でカレーうどんを作る。日が差したり、曇ったり、風が吹いたり止んだりと、目まぐるしく変わる天気の中、誰も登ってこない山頂でランチを楽しんだ。こんなにいい山なのに・・・、まだまだ知名度が低いのであろうか。コーヒーを飲み終わった頃、黒い雲が近づき、小雨がぱらつき始めた。急いでザックにコッヘルを詰め込んでいると、雨は止んだ。
 
 下山開始。急斜面を下って、なだらかな緑のトンネルを歩く。左に木々の間から京塚山が望めた。山頂から5分ほどで大洞山の標識がある三叉路に出た。下山はここを右に下りるが、十分に時間があるので直進して市島方向に歩いてみることとした。急に道が薄くなり、腰辺りまでのササが茂る。それでもヤブ状態ではなく快適に歩くこと数分、右側が伐採された見晴らしのいい場所に出た。伐採地にはモミの大木がいくつか残されており、すばらしい展望である。あまりの展望に気をとられて、切り株につまずいて転倒。ササの中の切り株には要注意。
 
 下って登り返し、大展望のピークへ。北には、谷を隔てて市島が特徴ある山容を見せる。東から登ってくる林道も見える。このまま尾根を伝って行けば、林道上部を通って市島に行けそうであるが、ネット情報によると道は消えているようだ。ガイドブックにも市島手前の尾根のヤブは濃いと記されており、市島へは林道経由のアプローチが紹介されている。いつか市島には登ることにして今日はここまで。振り返れば、歩いてきた展望台や鉄塔が望めた。
 
 引き返して三叉路から東へ下る一直線のササ付きの道へ。急緩繰り返しながら、気持ちのいい尾根を下る。コウヤマキの林を抜けると道は左へ折れ、急斜面をトラバースしていく。下方から水の音が聞こえ、すぐに谷に突き当たる。慎重に道を確認し、谷沿いに下る。尾根歩きが主体だっただけに、雰囲気が一変する。所々にテープが見られる。谷を左へ渡り、すぐに右に渡り返してササのある樹林帯を歩くとたくさんの石がある谷を横切って林道終点の広場に出た。
 
 林道は地道ではあるが、ここまで車を上げることはできそうであり、大洞山山頂を踏むだけであれば、ここから登るのが最短コースとなる。数分林道を下ると舗装道路となり、鉄塔が現れた。鉄塔下まで歩いてみると朝通過した稜線の鉄塔を見上げることができた。さらに林道を下り、谷コースへの分岐を通過して、コテージでバーベキューを楽しむ家族を見ながら駐車地点まで戻った。
 
 管理棟のオーナーと出会い、いろいろと話を聞くことができた。道を間違えた話をし、正しい道を教えてもらった。この辺りにはこれからヤマビルが出るようで、被害を防ぐために公園内の散策路の落ち葉を除去しているそうだ。また、シカが多く生息しており、標高の高いところはカモシカがいるとのこと。この公園は「癒しの道・南飛騨森林浴回廊21」の1つであり、コテージに一泊して登山を楽しむのもいい。
 
 この時期の大洞山は何といっても、新緑のトンネルとササの稜線がすばらしい。展望地もいくつかあり、充実の静かな山歩きが楽しめる。紅葉の時期にも訪れたい。帰路は下呂市金山町の「かれんの湯」に寄り、関・金山線を通って帰宅した。
 山のリストへ