トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号) ※一部誤動作あり・赤点線は推定トレース

大御影山・滝谷山の展望と植物を見る

大御影山・滝谷山 
(950m 736m 滋賀県) 2009.5.9 晴れ 2人

ビラデスト今津駐車場(9:04)→登山口(9:12)→バイパス分岐点(9:22)→バイパス合流(9:40)→滝谷山分岐点(10:12)→展望地(10:34)→林道横断(10:43-10:48)→大谷山分岐点(10:59)→大御影山山頂(11:36-12:52)→滝谷山分岐点(13:49)→河内谷分岐点(14:42)→滝谷山山頂(14:29-14:38)→落合分岐点(14:53)→車道・東屋(15:21)→駐車場(16:05)

 岐阜県大野町の大谷山・滝谷山の名前つながりで選んだ滋賀県の高島トレイルにある大谷山・滝谷山を5月に登る目標を立て、先週、まず大谷山に登頂。残るは滝谷山。滝谷山は高島トレイルから外れた位置にあるが、隣には大御影山があり、2山セットで登る計画を立てた。大御影山にはシャクナゲの自生地があり、この時期はちょうど開花期に当たることから、フラワーウオッチングも期待できる。

 先週と同じルートで湖北の高島市を目指す。国道161号線の湖北バイパスを南下し、途中からビラデスト今津の案内に従って北上。舗装された山道を4kmほど走ると、料金所が現れ、「ビラデスト今津 森の交流館」に着く。駐車料金は1人300円。料金所で登山口を尋ねると、登山ルートの地図がもらえ、登山口までの歩き方を親切に教えていただいた。管理棟のトイレに寄って、広い駐車場に車を停めた。2台の車が停まっており、靴を履き替えている間に、3台ほどがやってきた。タクシーで来る登山者も見られた。

 今日の計画は、ここからまず大御影山に登り、帰路途中から尾根を移して滝谷山を踏み、処女湖(淡海湖)に下り車道を歩いてビラデスト今津に戻るというロングコース。比較的標高差は少ないが、歩行距離はかなりある。一日かけての周回コースである。車を後に、道脇のヤマツツジやツクバネウツギを見ながら川沿いに車道を下る。右手に平池を見ながら、車道を300mほど下ると右へ地道があり車止めの丸太が横たえてある。ここを右折して200mほど歩くと左側の人工林に登山口の標識があり、ここから杉林の山道に入る。

 すぐに人工林を抜け、小さな谷川を渡って掘り割れの道を登る。ウリハダカエデの幼木が道の両脇に続く。また、満開のオオイワカガミの群落が見られる。バイパスの標示が現れる。この道は日本海側に抜ける近江坂で尾根をたどるが、ここからのバイパスは尾根道をショートカットする。バイパスを進み、新緑のブナ林を右山でトラバースしていく。左の谷を隔てた山にピンク色の花が見える。ミツバツツジのようだ。足元には濃いピンク色から白に近いピンク色まで様々な色のオオイワカガミの花が見られ、チゴユリの花もまだ健在。

 バイパス分岐点から20分ほど歩いて近江坂と合流。この合流点のすぐ上が展望地となっており、琵琶湖が望めるが、今日は先週よりも霞んでおり遠くは見えない。この展望台から大きな溝を歩くと、土手の上にシャクナゲが現れた。たくさんの花が斜面に落下して美しい。望遠でシャクナゲの花の写真を撮ったが、この先、想像を絶するシャクナゲの花が我々を待ち受けていた。

 掘り割れの道から左山で展望のいい場所を通過。右に山が見えるが同定できない。帰って写真を見ると、大御影山が見えていたことが分かった。トクワカソウやシャクナゲが続く。道は溝に突き当たって左へ向きを変える。左手には人工林。右手に水溜りを見ながら、人工林を左回りに巻くように歩き、再び溝のなだらかな道を歩く。前方を歩く男女二名の登山者に追いつく。シャクナゲのトンネルに感動し、写真を撮りながら、時計回りに下って、二人を追い抜く。これでもかとシャクナゲの並木が続く。濃い色から淡い色まで、木ごとに色が違うのが面白い。また、まだ蕾の多いものや既に散り始めたものなど、個体差がある。両脇からシャクナゲの枝が道を塞ぎ、潜り抜けるようなところもある。シャクナゲの咲く広い場所に出て、黄色のボードに青い矢印の標識を発見。ここが滝谷山への分岐点となる。帰路はここから滝谷山へ向おう。

 シャクナゲの道はこの先もまだ続く。シャクナゲが切れると、新緑の道となり、道の両脇には黄緑色をした潅木が続くようになる。伸び始めている花から判断してハナヒリノキのようだ。それにしても美しい緑色をしている。ぬかるんだ溝の道で、いつしか靴は泥まみれ。ブナの林を抜けると明るい道となり、東の展望が得られるようになる。雪で曲げられた潅木帯の林床には、カタクリの花もいくつか見られる。右に芝生広場のような展望地が現れ、寄り道。東側180度の展望が広がり、今回のコースで最も展望のいい場所である。琵琶湖に浮かぶ小島も見える。この時、気が付かなかったが、南にみえる丸い山が滝谷山だった。

 1時間半、ノンストップで歩いており、休息しようと思ったが日陰が無いので林道まで歩くことにした。ブナ林の溝を歩いていくと、フデリンドウを見つけた。オオオバキスミレも見られる。赤テープで止められたところから、トクワカソウの斜面を左へ下っていくと林道に出た。林道を50m程歩いたところに「大御影山登山口」の木柱があり、ここで休憩。林道脇にカタクリの花が咲き、ウリハダカエデが金色のかんざしのような花をぶら下げていた。
 
 5分ほど休んで、山道に取り付き、再び彫り割れた道を歩く。頭上にタムシバの真っ白な花が揺れる。緩傾斜のためぬかるんだところが多く、道の脇に寄ったり、飛び越えたりして歩く。周囲は二次林の潅木帯で、根際から多数の細い幹が曲がりくねって立ち上がり、雪に押しつぶされて横に広がったものが多く見られ、独特の雰囲気がある。林道から10分ほどで大谷山分岐点に出会う。右の大谷山方向に少し踏み込んで、展望地を探したが見つからず、100mほど進んだところで引き返す。

 なだらかな道が続く。美しいブナ林となり、ブナの若葉が太陽の光を透かして黄緑色のベールを創る。銀色のブナの幹が無数に立ち上がって緑のベールを背景に美しいスリットができている。何か懐かしい感覚が湧き始めた。心が安らぐ。人類が誕生したときから、人は緑に包まれて進化してきた。今では、緑と縁の少ない生活空間に生きているが、人の遺伝子に残る記憶が、ブナの緑に呼び覚まされて、今、目覚める。人類の先祖から累々と受け継いできたDNAが自分の身体にも存在することを確信して黙々と歩く。

 無数の細い幹が燃え上がるように伸びる潅木帯に入る。葉が展開しておらず、樹種は分からないが、この異様とも思える光景は、他では見ることができない。ブナの林はますます美しくなる。大木も見られる。時折、曲がりくねったブナの木に出会う。雪が多いためであろうか。明るい尾根になり、左右の山が樹間から見える。右手に見えるササの山は先週登った大谷山だ。さらに北には赤坂山や三国山が見えた。赤坂山は今日も大勢の登山者で賑わっているに違いない。それに比べると、この山の登山者は少ない。

 ブナ林が続く。明瞭な道を、昨秋の落ち葉を踏みながら、ぬかるみを避けて歩く。ぬかるみにはこの朝歩いたシカの足跡が残っている。高島トレイルの黄色いテープが揺れる。初めて下山してくる単独男性に出会った。山頂には二名の登山者がいるらしい。右手前方に小高いピークが見え始めた。GPSで山頂が近いことを確認。緩やかに登って三角点のある山頂に着いた。

 樹木に囲まれた山頂ではあるが、東側に切り開きがあり、少し下れば赤坂山や大谷山の展望が得られる。山頂から少し先に反射板がある。コバイケイソウの株を見ながら反射板まで行ってみる。反射板の位置からはほとんど展望がないが、美浜町方面へ下るところに大きな切り開きがあり、北側の展望が得られる。雲谷山が堂々たる山容を見せ、その向こうには若狭湾が広がる。日本海は目の前だ。
 
 展望を楽しんだら、山頂に戻って、木陰でランチにする。メニューはドライカレーとラーメン。このところ、水無しで短時間にできて美味しいドライカレーのランチが増えた。ランチの間に、次々と登山者が到着。皆さん、それぞれ木陰でランチタイム。山頂にはタムシバの白い花が輝き、足元にはイワナシがかわいいピンクの花を咲かせている。
 
 1時間以上山頂でゆっくりして、下山開始。今日の目標の山である滝谷山を目指す。大御影山山頂から登ってきた道を引き返し、ちょうど1時間で滝谷山分岐まで戻った。分岐点から矢印に従って右に向う。この分岐点でY字に合流する尾根に乗り換えることになる。滝谷山は高島トレイルのルートから外れた位置にある山で、踏み跡は薄くなる。分岐の先で進む尾根を定める。やや分かりにくいが、登ってきた尾根に沿って派生する尾根に踏み跡がある。
 
 シャクナゲの群落を抜け、トクワカソウの花を足元に、左に杉林を見ながら歩く。小ピークを越え、古い色あせたテープを追う。広い尾根の右側を歩き、ブナやナラの稜線に出て落ち葉の道を進む。道は薄いが、踏み跡は読み取れる。左には午前中に歩いた稜線が見える。左に直角に折れ、隣の尾根に移り、さらに小さな谷を越えて次の尾根に移る。杉林に突き当たり右へ。水溜りを右手に見ながら谷を渡って杉林に沿って登る。息を切らして急な斜面を登っていくと、タコの足のように曲がりくねった何本もの幹を広げるリョウブのあるピークに付いた。
 
 GPSの電池を交換して、ピークを下り左方向の尾根を歩く。樹林帯を抜けると明るい尾根となり、左手に往路の稜線が望める。シャクナゲを見ながら、木の根が這う尾根を歩くと分岐に突き当たった。滝谷山は左、右は河内谷の標示。「夫婦でテクテク登山」さんのしゃもじに書かれた標示もあった。左へ向きを変え、人工林の中を5分ほど歩くと下り始めた。先行の登山者が左から下りて見えた。おっと、滝谷山山頂への分岐を見落とした。
 
 少し引き返して、何も標示の無い分岐から登ってすぐに人工林の中に立つ木柱と三角点を見つけた。滝谷山・川上三等三角点の表示。全く展望のない滝谷山山頂だった。片隅にタムシバが咲いている。写真を撮って、木漏れ日の中でグレープフルーツを食べた。
 
 10分ほど滞在して、誰も登ってこない静かな山頂を後にした。落下したオオウラジロノキの花やまだ咲いているチゴユリを見ながら下ると、西側が開けた場所を通過。杉林の中、ふかふかのスギの枯葉を踏んで下っていく。山頂から15分ほど下ったところでしっかりした道に突き当たった。黄色いテープに右は「落合」とある。ここは左。丸木階段を下っていく。一旦登り返したところで浮き島のある処女湖(淡海湖)が見下ろせた。階段が続く。急階段との事前情報を得ていたが、さほど急ではない。
 
 ロープ場をトラバースして、再び丸木階段に。情報どおり急になってきた。前方には対面する尾根の緑が美しい。ゼブラロープの張られた階段は、まるで螺旋階段のように渦を巻き真っ逆さまに谷に落ちている。ステップの幅は靴よりも短く、靴を横向きにして、ロープにつかまって慎重に下る。躓けば奈落の底まで転げ落ちる。ここの登りはきついに違いない。丸木階段で一気に標高を下げると、今度は岩場のトラバース。距離は短いが、緊張する場面。ロープにつかまってゆっくり通過した。
 
 新緑の斜面を下っていくと、水の流れる音が大きくなり、堰堤が現れた。川沿いに歩くと、トリカブトと思われる群落が見られた。足元には可憐なタニギキョウの花が咲き乱れる。ここのタニギキョウは白い花びらの中央に薄紫色のラインがあり美しい。飛び石で谷川を三度渡って車道に出た。右には東屋がある。現在地点は淡海広場とあり、この車道は林道酒波谷線と書いてある。
 
 ここから駐車場までは処女湖岸を歩いて30分ほどの距離である。林道は下りだと思っていたら、結構な上り坂もあり、ロングコースの最後にはこの登りがつらかった。だらだら歩いたが、それでも林道脇には様々な花や木があり、退屈しない。10分ほど歩くと、右に赤い鳥居があり、鳥居を通してみる処女湖が午後の陽にきらめいてきれいだった。ウワミズザクラやキブシ、ミツバツツジ、マムシグサ、ヤマエンゴグサなどを見ながら歩いて平池が見えるところまで来た。道端にひっそりと咲くイチリンソウの清楚な姿に感動。今日の花の山旅にふさわしい締めくくりとなった。大御影山から下山してくるパーティーと一緒になって駐車場まで戻った。
 
 靴を履き替えて、ビラデスト今津の管理棟のトイレに寄った。バスを待つ登山者が多いことに驚いた。我々の車のナンバーを見て単独男性から「岐阜へ行かれるなら、途中のマキノ駅まで乗せてもらえませんか」と声を掛けられた。聞けば、マキノ高原キャンプ場に車を置いて、赤坂山・大谷山・大御影山を縦走してきたとのこと。ちょうど「さらさ」の温泉に寄ろうと思っていたので、マキノ高原まで一緒に行くことに。愛知県の方で、花の多いこの時期には毎年、湖北の山に登ってみえるベテランの方だった。「バス・電車代です」と御礼を置いていかれたが、貰いすぎで恐縮。連休の混雑が嘘のような空いた温泉で汗を流してし、湖北を後にした。
 
 地図からも分かるように、登山口から大御影山までの標高差は450mほどしかないが、歩行距離は片道7kmと長く、登山口から稜線までの登りを除けば、後は緩やかな稜線歩きであり、登山というよりもトレッキングといったところ。この時期、登山口から林道まではオオイワウチワ・トクワカソウ・シャクナゲなどの花が続き、林道から山頂まではすばらしいブナ林が続く。何といってもシャクナゲの多さはこの山の自慢である。滝谷山は高島トレイルから外れ、山頂も人工林の中で展望は無いが、分岐点から山頂までの天然林の中のルートファインディングや処女湖に下る急な丸木階段は大御影山とは別の面白さがある。滝谷山を経由する周回はロングコースであり、歩行距離は16km以上ある。時間に余裕を持つことが必要。また、滝谷山からの下りは危険箇所もあり慎重な行動が必要。今度は、紅葉の時期に登ってみたい山である。
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