トレースマップ (カシミール3Dで作成)
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)
高曝山 (457m 関市) 2006.11.26 曇り一時小雨 2人

登山口300m手前林道分岐点・駐車地点(9:11)→林道終点・登山口(9:16)→平成山・平洞分岐点・フェンスの稜線(9:27)→平洞・三角点(9:38-9:44)→鉄塔(9:51)→高曝山山頂(10:27-10:36)→鉄塔(11:11)→平洞(11:22)→平成山分岐点(11:30)→平成山(11:36-11:39)→平成山分岐点(11:43)→林道終点・登山口(11:52)→駐車地点(11:55)

 関・金山線を走るたびに、気になる山があった。高曝山(たかじゃれやま)である。6年前、県内の低山歩きをしていた頃、ガイドブックを見て、平成山(へなりやま)と近くにある平洞に登ったが、当時、その先にある高曝山まで歩けるとは思ってもみなかった。

 この休みは昼頃から雨の予報。午前中に手軽に登れる中濃方面の山を予定して、北に向かう。北に向かうにつれて、雲が薄くなり始めた。すぐに雨が降ることはなさそうだが、午前中に登ってしまえそうな、高曝山に決め、関・金山線を走る。「日本平成村・道の駅」を通過して、1km強走ったところにある、「平成自然公園」の道路案内板に従って左折。道が3つ現れるが、自然公園は一番左の細い道に入る。

 18年前に、年号が変わり一躍有名になった平成集落を通過して、平成川にかかる元号橋を渡る。橋の手前にトイレがあるが使用禁止になっていた。橋を渡って、突き当たりを右に向かい、2・3分でフィールドアスレチックや芝生広場のある平成自然公園に着く。ここには広い駐車場ときれいなトイレがある。正面に植林された山が望め、伐採された山肌は紅葉の木々で埋まって美しい。後に、ここで大きな発見をすることになる。

 この公園で舗装道路は2手に分かれるが、右の道に進む。左へ行くと、すぐにクサリのゲートがあり、車は入れないが、道をたどれば平成山の登山口に出られるようだ。ようするに、この左右の道はループになって繋がっている。右の道に入ってすぐに1匹のサルが車に驚くこともなく車道を歩いていた。離れザルであろうか。

 平成川に沿って、約1.3kmほど走ると、「平成山登山口」左折の表示。車幅ほどの細い舗装道路を、飛び出した草に車体をこすりながら登るとすぐに三叉路に出る。平成山登山口は右へ300mの表示。左の道は自然公園に戻るが車は入れない。登山口まで車を乗り入れることは可能であるが、枯れ枝や石などが落ちていることから、この三叉路の3台ほど停められるスペースに駐車。以前も、ここに停めた。

 靴を履き替えて、右の道を谷に沿って登る。林道周囲の紅葉が美しい。前方から単独男性が下りてみえた。すでに高曝山に登ってきたとのことで、道の状況を聞くと、ヤブを分けるようなところもあるらしい。林道を登り切ると小広場で道は終点となり、「平成自然公園遊歩の森」と書かれた案内図とたくさんの杖があった。平成の年号を記念して整備された登山道である。

 谷を左に見ながら登り始めて驚いた。イノシシの掘った跡がたくさんある。丸木の階段も破壊されている。おまけに人工林は荒れ、倒木が横たわる。草の露で靴を濡らしながら歩きにくい斜面を登っていく。フユイチゴがたくさん実っている。ヒヨドリジョウゴの赤い実が美しい。ほとんど水のない谷を登り詰めて「くの字」に折れ、緩やかになった紅葉の美しい道を歩く。シロモジやコアジサイの黄色い葉が美しい。

 登山口から10分ほどで稜線に出た。水色の針金が張られたフェンスが稜線に沿って設置してある。右の平成山までは274m、左の展望地である平洞は320mの表示。鉄塔巡視路の黄色いプレートもある。平成山は帰路に寄ることにして、まずは平洞を目指す。

 なだらかなヒノキ林をフェンス沿いに歩いて丸木階段のある急斜面の尾根に取り付く。一気に登り切って、一息つく間もなく、再び急登。根の張る斜面を滑らないように登り詰めると、展望のいい場所に出た。三角点のある平洞である。

 今回のルートで、ここが最も展望がいい。東方向180度の展望が得られる。曇り空とはいえ、御嶽山や恵那山が見えた。目の前に広がる名もない低山が重なり合って、その山並みが美しい。そして、目の前には丸い頭の山。これから目指す高曝山だ。車で上ってきた平成川の谷に沿って稜線を戻るようなイメージである。高曝山までの稜線はいくつかのピークがあることが分かる。西側はわずかな樹間から近くの山が望めた。

 天気が気がかりなので、先を急ぐ。少し下って、左回りに尾根を歩く。左手はヒノキ林。右手はアカマツの多い天然林。タカノツメの白く色あせた紅葉を楽しみながら、落ち葉の急斜面を下ると、前方が明るくなり、鉄塔が現れた。南〜西側が開け、人工林の緑と紅葉した落葉樹がパッチワーク状になった山に向かって、10本ほどの鉄塔が並び、頭上の鉄塔から伸びた電線が続く。反射板の有る山も見えた。

 さて、この先の道は? 下ってきた反対側の雑草の中を探すと、稜線沿いに踏み跡があった。ヤブを分けると、すぐに明瞭な道となる。テープもあり、鉄塔巡視路表示のものと思われる鉄杭もある。左に人工林を見ながら、大岩の間を抜ける。小さな登り下りを繰り返し、正面に現れたピークの右を巻いて、左山で歩く。

 ピークを巻いて、再び稜線に合流。少し歩くと、また右の巻き道が現れるが、稜線上を歩く。巻き道はすぐ先で合流していた。そして、岩の多い急登にかかる。急坂の途中に、東側に岩が飛び出して、テラスのようになった場所からは、眼下の平成川の谷を挟んで北側の山が望めた。こちらへも鉄塔が続いている。平成山が望めた。左の一段と大きな山塊は瓢ヶ岳である。今淵ヶ岳や矢坪ヶ岳も確認でき、この位置から見る瓢ヶ岳の山容は珍しい。この山の岩はチャートであり、ヒトツバが張り付き、金華山の植生に似ている。

 一登りで、なだらかなピークに出る。地面を多うドウダンが黄色く紅葉して美しい。ピークの端まで歩くと、前方に再び小ピーク。その向こうに見える山が高曝山のようだ。マツ葉やホウ葉を踏んで、登り下りを繰り返してピークを越える。この辺りも紅葉が美しい。鞍部から最後の登りにかかる。下からチェーンソーの音が聞こえてきた。道は明瞭。

 急斜面のテープを追うと山頂に着いた。木々に囲まれて展望はないが、西側の山が少しだけ望めた。石積みが2つほどあり、赤布がいくつかあった。山名がかかれていたと思われる透明のプラスチック板が割れていた。木にマジックインキで「高曝山」と書いてある。南と東に尾根が延び、テープが下がっていた。どちらも踏み跡は薄い。南に少し下ってみると、急斜面となっていた。

 展望のいい平洞まで戻って、ランチにすることとし、写真を撮って、引き返す。いくつかのピークを越え、行きに通った巻き道を抜ける。その先で、テープが多数付けられた左への分岐が現れた。行きには気が付かなかったが、巻き道があるようだ。好奇心が手伝って、巻き道に入る。こういう時のGPSは力強い味方である。ここも道は明瞭。落ち葉を踏んで歩く。

 GPSを見ると稜線から左にどんどん離れていく。先に歩くらくえぬから「テープ有り」の声。道はやや右に向きを変えたので、稜線に合流するかもしれないと、右山でそのまま進む。大きなコシアブラの木がある辺りで、右が開けて、鞍部に。前方に小ピーク。道が怪しくなった。鞍部からは、右手に稜線が見える。GPSで、その稜線が、登りで歩いてきた道であることを確認。

 GPSの地図と周囲を見比べながらルートファインディング。斜面を等高線に沿ってトラバースすれば、行きの稜線に合流することが分かった。少し下ってみると、鉄塔巡視路の標識と道らしき跡があった。倒木を除けながら、かすかな道をたどって、北に進むと、鉄塔が見えた。登りで通過した鉄塔である。草付きの急斜面を一登りして、鉄塔下に飛び出した。南西へ続く鉄塔の巡視路が草に隠れていた。ズボンに付いたササクサの種を取りながら、今日、初めて水を飲む。

 鉄塔から、急登して、平洞手前まで歩いたところで、小雨が降り始めた。樹林帯の中で、雨は落ちてこないほどの小雨であるが、大降りになるかもしれないので、平洞でのランチはパスして、早足で下る。小雨は降ったり止んだり。6年前の思い出をたどるため、平成山にも寄ることにした。

 フェンスのある分岐点を直進して、なだらかな尾根を5分ほど歩くと平成山の看板と落ち葉の乗った方位版があった。林の中で、全く山頂とは思えない。6年前と同じ状態である。写真を撮って、すぐに引き返す。分岐点から、イノシシに荒らされた遊歩道を下って林道に出た。小雨とはいえ、路面はすっかり濡れていた。

 車で自然公園に向かう途中、路肩で猟師が猟銃を構えていた。イノシシ狩りをしているようだ。自然公園の芝生広場にある東屋で、ラーメンとシュウマイにコーヒー付きのランチをゆっくりと楽しんだ。時折、車がやって来るが、公園を散策する人は誰もいない。猟犬を積んだ車が行き来していた。

 すぐ南に見える山の形が高曝山に似ていたので、GPSで確認すると、その通り。なんと、公園のすぐ上が、高曝山ではないか。雨が止んだので、ランチの後、フリースを着込んで公園を取り巻く木道を歩いてみた。小秀山の登山口である乙女渓谷と同じような木道である。駐車場の上の展望台から、高曝山がきれいに見えた。山頂から南と東に延びていた尾根をたどれば、僅かな距離で公園に出られるような気がしたが道はないかもしれない。山裾の林道を歩くと、伐採された潅木地帯と、人口林の尾根筋にテープが付けられており、薄い踏み跡が確認できたが、これが山頂に繋がっているかは分からなかった。いつか確認してみたい。

 時間がたっぷりあったので、雨に濡れた晩秋の静かな里山をのんびりと散策した。たまには何の目的もなく、自然の空間に溶け込むのもいい。高曝山の伐採された斜面は、草木が黄色や赤色に染まり、今、まさに紅葉の最盛期。山歩きの原点は里山であることを改めて認識し、美しい静かな空間を後にした。
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