カシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)
寺田小屋山 (1505m 下呂市) 2006.9.16 雨 5人

林道のゲート(10:09)→登山口(10:43)→建物跡展望地(11:30)→ヤマハハコの咲く広場(11:38)→寺田小屋山山頂・手前建物跡(11:50-13:19)→登山口・林道(14:02-14:07)→ゲート・駐車地点(14:45)

【参加者】 ブルさん、katakuriさん、BOGGYさん、RAKU、らくえぬ

 この連休は1泊で北アルプスを計画した。ところが、台風の接近が影響して、3連休は傘マーク。遠出はあきらめて、前回に引き続き未登頂の近辺の山に登ることとした。3連休で最も天気が良さそうな土曜日に出かけることにした。

 前日、いつものように山を決めかねていると、katakuriさんから「BOGGYさんと愛知県の山に登らないか」とのお誘いがあった。我々は近場の取りこぼしている山に行くことを告げ、それからあれこれと行き先を検討して、下呂市の寺田小屋山に決めたことを連絡。なんと、ブルさん、katakuriさん、BOGGYさんが我々に同行していただけることになった。前夜、急遽、オフ会成立。「可児からの山歩き」さんやごっちゃんのレポートを参考にさせていただき、地図をGPSに取り込んだ。

 当日の朝、ウチの車1台に乗り合わせて、下呂市を目指す。(登山口までは白草山のレポート参照) 近年、白草山と併せて寺田小屋山の標識も道にいくつか設置されており、乗政からは道標に従えば道を間違えることはない。

 乗政の集落に入る頃、小雨が降り始めた。正面に見えるはずの寺田小屋山は厚い雲に覆われている。天気予報では、午後3時頃から雨のはずだったが、悪いほうに外れたようだ。乗政キャンプ場のトイレに寄る。ツリフネソウの花が最盛期。フシグロセンノウも見られた。キャンプ場の上で広い林道に出て左折。すぐに路肩に数台の車を見る。白草山への登山者の車だ。白草山登山口への林道がある変則交差点から道標に従って中央の道に入る。道はやや荒れているが舗装道路であり、普通車でも乗り入れ可能。

 対向車に注意して一登りで、右手に広いガレた広場のあるところに出た。ここから、未舗装となり、谷川を左に渡る道と、直進する道がある。左の道にクサリのゲートがあるとの情報を得ていたが、クサリはなかった。「乗政本谷治山工事」と「立ち入り禁止」の表示。そして寺田小屋山登山口まで1.7kmの表示。

 20台ほど駐車可能な空き地であるが、先客はいない。人気の白草山とは雲泥の差。と、思っていたところへ大勢の登山者を乗せたマイクロバスが上ってきた。これにはびっくり。この山も見捨てたものではない。岐阜100山の1つでもある。

 小雨は止む気配がない。山頂でのランチに備えて、車の中にあったブルーシートとビニール紐を持った。雨具を着て出発。昨年の乗鞍以来の雨具着用である。左の林道に入り、谷川を渡って折り返すように登る。道脇のゴマナやノコンギクが雨に濡れて美しい。紅白のイタドリの花が満開。ツリガネニンジンも可憐な花を咲かせている。

 林道を折り返した辺りで、下りてくる森林組合の作業車に出会った。「車はどこに止められましたか?」「工事中の広場です。」「それならいいです。」 ゲートのクサリを閉めるために駐車地点を聞かれたらしい。林道にたくさんのワイヤーや滑車が置いてあった。伐採の準備が行われているようだ。

 林道を折り返して、左山となる。GPSで確認すると、登山口は正面の尾根辺り。折り返してすぐに山側にコンクリート階段が現れるが、これは登山口ではない。折り返しから10分ほど歩くと、林道左右に白い板に登山口と書かれた表示がある。最近の作であり、以前には道路右側の「寺田小屋山1120m」と書かれた小さな表示と緑色のゴム手袋だけが設置されていたようだ。

 法面の細道を登ってヒノキの人工林に入り、右山で登っていく。崩れた橋や、今にも壊れそうな橋、大きな木の株などがある暗い道を歩く。道はよく踏まれている。いつのまにか天然林に変わっている。下から団体さんの声が聞こえてきた。何も書いてない鉄棒と標識がある地点で折り返して人工林を抜け、再び天然林へ。

 雨具を着ているので暑い。木々から落ちる水滴の音が林に響く。道には岩が増えてきた。ガスに満ちた森は神秘的だ。林床には苔むした岩が多く、たくさんのシダが自生している。美しい。雨に濡れた森は生きている。その潤いは癒しの世界。たまには、雨の森を歩くのもいい。

 急斜面の岩の道をジグザグと登って、1時間ほど歩いたので休憩。雨は僅かで気になるほどでもない。katakuriさんからいただいたキャラメルが美味しかった。数分間休んで出発。やがて、周囲の樹木の背丈が低くなりササがうるさくなってきた。急斜面。そして、ササヤブの急登になる。

 ササを分けながらぐんぐん登っていく。天気がよければ、後方の高森山が大きく見えるに違いないが、このガスでは寺田小屋山の山頂も見えない。稜線にはササが続く。この地方ではネマガリタケと呼ばれるササで、正式名はチシマザサ。クマザサはこうしたササを総称した呼び方らしい。

 足下にしっかりした道があり、迷い込むようなことはないが、背丈以上あるササ原。先行者の頭だけが見える。ストックの柄でササを分けながら歩く。ザワッザワッ。雨で濡れたササの葉は白く輝き、左から白いガスのかけらが次々とササの稜線を駆け上がってくる。小雨の中、このヤブこぎは苦痛というよりは楽しさを感じた。それにしても、この山にこんなに深いヤブがあるとは思わなかった。

 いきなり稜線上の開けた展望地に出た。一息。砕けたレンガが散乱しており、左右の尾根に踏み跡があった。ガスで前方の状況が分からない。GPSを見ると、山頂は直進で200mほど。こういう状態の時、GPSは威力を発揮する。再びヤブへ突入し、なだらかな稜線を歩くと再び開けた場所に出た。浅い窪地にはヤマハハコがたくさん咲いて、お花畑のようになっている。山頂かと思ったが、まだ先。

 ここから、少し下って樹林帯を通過し、鞍部から激ヤブを登り返す。頭上をガスが流れる。ヤブの下は泥道のため滑らないように登った。ひと登りで再び開けた展望地に出た。ここのもコンクリート屑が散乱しており、過去に建物があったことを伺わせる。この先、高いピークがないので、ここが山頂だと思ったが、事前情報では、確か山頂には木の櫓跡があったはずである。ここには三角点も無い。

 ブルさんとらくえぬがこの先を偵察。「こっち」との声に移動。30mほど先に山頂があった。木々に囲まれて、展望はあまり無い。狭い山頂の中央に三角点。やはり木の櫓跡が残っていた。この前で記念写真。さて、ランチの場所を探す。山頂は傾斜があったため、先ほどの建物跡戻ってタープのようにブルーシートを張った。

 まずはBOGGYさんの持ち上げた白ワインで乾杯。BOGGYさん定番のドライカレーに漬物、katakuriさんの肉巻きや赤飯、生野菜、ウチはフカヒレ雑炊を作った。デザートはブドウ。久しぶりの山談義を楽しんだ。ランチで盛り上がっている時に、駐車地点で出会ったマイクロバスの団体さんが到着。2グループでの登頂。20名以上の団体であり、山頂を踏んですぐに降りていかれた。下の広場で昼食にされたのだろうか。

 雨は降ったり止んだり。風もそれほど強くなく、寒くもない。雨の中の宴会も楽しいものだ。コーヒーを飲んで後片づけを始めた頃、南のガスが消えて、高森山とその向こうの白草山と思われる稜線が目の前に姿を現した。晴れていればすばらしい光景が見られるに違いない。

 1時間半のランチの後、下山。大勢の登山者が歩いた後でもあり、道はドロドロの田んぼ状態。滑りながらヤブをこぐ。ササの急斜面を下って、樹林帯に入ると濃いガスで夜になったように暗く、幻想的な森が続く。晴れていればこの雰囲気は味わえないだろう。

 人工林を抜けて林道に出た。ここから、おしゃべりしながらのんびりと駐車地点まで下った。ゲートのクサリが閉まっていた。靴を履き替えて車に乗り込んだ頃、雨は本降りになった。3時から雨という予報はまんざら外れてもいなかった。

 なお、今回、場所は特定しないがアケボノソウを2株ほど発見。我々は初めて見る花であり、この山を選んで良かったと思った。katakuriさんも、他の山へアケボノソウを見に行く予定にしていたとか。みんなで写真を撮りまくったが、風や雨でなかなかいい写真が撮れなかった。アケボノソウという名は花を見れば納得。あけぼのの空の様子が花に描かれている。花びらに描かれた星や月(太陽?)の模様に感動。月に当たる黄緑色の斑点は虫を集めるための密腺になっており、ここに水滴が付着して、本当の月のように見えた。自然はすばらしい芸術家である。

 ユニークな名前の寺田小屋山は白草山の影に隠れてあまり登られている山ではないようだが、最近、道標も整備され登山者も増えていると感じた。この時期、蕎麦粒山などと比べれば距離的に短いもののササは繁茂し行く手を阻む。長袖、軍手は必需品。ガスの時は道に迷う可能性も高いので、地図・コンパス類は必携。

 今回のように雨の時なら濡れたヤブこぎや幻想的な森が、晴れていれば御嶽山や高森山などの展望が楽しめる。もう一度、晴れた日に登りたい山である。
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