カシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平17総使、第654号)
塔ノ倉 (716m 揖斐川町) 2006.5.4 晴れ 8人

聖心殿駐車場(9:27)→奥の院(9:56-10:08)→鉄塔(10:18-10:22)→塔ノ倉山頂(11:07-13:10)→奥の院(13:44-13:54)→聖心殿駐車場(14:19)

<参加者> sizukaさん、ブルさん、katakuriさん、BOGGYさん、楽遊Sさん夫妻、RAKU、らくえぬ

 大垣から揖斐川を遡ると揖斐の山々がぐんぐんと近づいてくる。左手の小島山、ムネ山を最前線に、飯森山や大立、間戸山が並ぶ。間戸山の奥にすらりとした格好のいい山が小津権現や花房を背景に頭を出している。これが塔ノ倉である。飯盛山から目の前に見えた山だ。また、この冬に雪の大立から樹間越しに見た山でもある。どうしても登りたい山の1つでもあった。

 この3月に貝月山でらくえぬが腰を痛め、2ヶ月ほど本格的な山歩きを自粛していた。今回はらくえぬのリハビリ登山を兼ねて、手頃なこの山に登ることにした。「kuの山小屋」の常連さんの参加を得て、8人の久しぶりのオフ会である。前日にBOGGYさんが山菜を採ってきたので山頂でのランチは山菜の天ぷらと決まった。これは楽しみな企画である。BOGGYさんの指示で、我々は大根と下ろし金を持った。

 塔ノ倉はあまり登られていないマイナーな山である。今回は、「雲よりも高く」さんと「むっしゅ〜野遊び録」さんのレポートを参考にさせていただいた。塔ノ倉へは国道303号線を揖斐川町に入り、新北山トンネルを抜けてすぐの信号機を右折して乙原トンネルに入る。トンネルを出てすぐの左への道を鋭角で曲がり込む。聖心殿の表示がある。谷川を左に見ながら舗装道路を走ると右手に新しい宿泊施設と思われる建物が現れ、通り過ぎると左に広い駐車場のある聖心殿に着く。駐車場にはトイレがある。

 ゴールデンウィークにつきもののミニ鯉のぼりをザックにつけてスタート。聖心殿の右手の道を谷川に沿って登る。本殿を左にスギの巨木が並ぶ山道を登っていく。この道は奥の院への参道となっており石の階段が整備されている。スギの落ち葉を踏んで歩く。katakuriさんがスギの枯葉の上を這う虫を見つけた。久しぶりに見るヤマビルである。最近、急に温かくなったので、ヒルが動き始めたらしい。沢沿いの道であり、これからの時期はヒルの道になるだろう。

 足元に注意しながら階段を登る。キケマン、ムラサキケマン、ミヤマハコベ、シャク、タニギキョウなどの草花を楽しみながら歩くと、すぐにスギ林を抜けて明るい道になる。参道とは言え、階段は消え、かなりのガレ場もある。渓流の苔むした岩にヒメレンゲが張り付いてきれいだ。コンロンソウやチャルメラソウ、そして大岩に張り付いたイワタバコの葉も見られた。がらがらの斜面もあり、落石に注意。かなり急勾配の谷の周りには巨大な岩が連なり、なかなかの迫力である。

 タチツボスミレを見ながら滑らないように斜面を登っていくと、やがて谷の水は伏流水となって消え、ツバキが多く見られるようになる。おもしろい形をしたアケビの花が垂れ下がっている。

 歩き始めて30分ほどで、谷の上に奥の院の建物が見えてきた。立派な石垣があり、手前に設置されたステンレスのシンクには水が引かれ、ヒシャクがいくつか置いてあった。冷たい水がおいしい。ここで休憩。

 登ってきた急な谷が見下ろせる。手前に間戸山、右にムネ山・小島山の山塊、正面遠方に池田山が霞んでいる。立派な奥の院の裏手には、2つの洞窟があり、水が勢いよく落ちていた。見上げれば奥の院の裏手右には垂直の巨大な岩壁。さらに頭上には大きな鉄塔が見える。104番鉄塔である。

 ここからのルートは奥の院の左にある小屋の後ろにある。鉄塔巡視路の黄色いプレートが目印。鉄塔巡視路ではあるが、黒いプラスチックの階段は崩れ落ちて、急斜面のガレ場になっている。落石に注意しながら斜面を登る。周りはツバキを中心とする常緑樹である。

 道は落ち葉に埋もれているが、はっきりしており間違えるようなことはない。奥の院から10分ほど歩くと、ツバキの林を抜けて明るい潅木地帯に出た。すぐ前に104番鉄塔が見える。鉄塔下は大きく切り開かれ、緑色の土嚢が並んでいた。ここからの展望もすばらしい。ムネ山・小島山を北側から見ていることになる。この角度で間近にこれらの山々を見るのは初めてである。池田山がこの山の左側に見える。池田山が少し東に飛び出ていることがよく分かる。間戸山が目の前に大きく横たわる。右には大立が大きい。どの山も木の芽を出し始めた美しい色をしている。右手の尾根には105番鉄塔が立っており、電線が緩やかな曲線を描く。巡視路は山頂を経由してあの鉄塔に至る。

 ここで地図とGPSを確認。鉄塔上部の左から斜面を上がっている。再びツバキの林に入る。美しい鳥の羽が落ちていた。楽遊さんによるとカケスの羽らしい。先ほどの104番鉄塔が右後ろに下がっていく。常緑樹の林が続く。後方、樹間越しに大立と紅白の鉄塔が見える。この冬、あの紅白の鉄塔を目の前に、雪深い大立山頂でのんびりとランチを楽しんだのが思い出された。

 リハビリ登山の主人公は先頭を軽快にとばしている。後方から誰がリハビリなのかとの声が・・・。松の落ち葉が敷き詰められた尾根で小休止の後、左山でトラバースしてツバキの林を歩く。所々に木に巻かれた赤テープがある。日当たりのいい開けた場所を通過。いくつかのカタクリの葉が見られた。さらにチゴユリが道脇を飾る。この山には花が少ないとの情報であったが、以外に花が多い。

 この辺りからミズナラやシロモジの天然林に変わる。所々に現れるプラスチックの階段を登る。カンアオイの群落がある。楽遊さんがギフチョウの卵がないか確認。ちょうどシロモジの葉が出始めたところ。春の日差しを受けて、透き通るような緑のトンネルを歩く。ふかふかの落ち葉を踏んで歩く天然林は実に気持ちがいい。

 急斜面に付けられたジグザグ道を歩く。かなりの急斜面で、楽遊夫妻が遅れ気味。左手にはヒノキの人工林。道は天然林の中。人工林は枝打ちの作業が行われたばかりだ。樹幹から105番鉄塔が望めた。山頂まではあと少し。足元にチゴユリを見ながら雪で倒れこんだシロモジをくぐって歩く。

 道が下り始める手前の木にテープが巻かれている。巡視路から左へ数mヤブをこぐと白い表示板に「塔ノ倉」の文字。地面には三角点が埋まっており、わずかな空間の山頂である。三脚を立てて、鯉のぼりを持って、全員で記念撮影。山頂からの展望はないものの、誰も登ってこない静かな山である。平らで広い山頂は、人工林が近くまで迫っており、隣の大立によく似ていると思った。

 ササと潅木に覆われた山頂でランチの場所を探す。人工林の境に平でササの無い場所があった。木に荷物を掛ける枝が結び付けてあることから、山仕事の人が休息する場所のようだ。遠くからチェーンソーの音が聞こえてきた。

 シートを敷いて、まずはsizukaさんの持ち上げた大量のビールで乾杯。運転手はノンアルコールビール。ブルさんが掘った竹の子をBOGGYさんがニシンと味噌和えにした美味しい前菜を肴に天ぷらの用意をする。天ぷらの材料は、昨日、BOGGYさんが採ってきた山菜。タラ、コシアブラ、ヤブレガサ、ウドなど、これに楽遊さんのアスパラとブルさんの竹の子が加わって、実に豪華。山で山菜の天ぷらを食べるのは初めてである。

 katakuriさんがオリーブオイルとサラダオイルの混合油で手際よく揚げた天ぷらを、BOGGYさんのこしらえた天つゆに大根おろしを入れて頂いた。さすが料理の鉄人2人。山で食べるものは何でもうまいが、表現ができないほど美味しかった。過去、山頂でいろいろなランチを楽しんだが、今回はちょっとレベルの高いこだわりメニューで、忘れることはないであろう。痩せたヤブレガサは苦いなど山菜の話しに花が咲いた。いつものようにあっという間に2時間が過ぎた。

 穏やかな春の木漏れ日を浴びて、一眠りしたいところだが、山頂を後にする。落ち葉の急斜面を一気に下って鉄塔を過ぎ、落石に注意しながら奥の院へ。奥の院で休憩。オオルリがさえずる谷を、かわいい草花を見ながら聖心殿に着いた。春一番乗りの蝶、ツマキチョウやコツバメが駐車場の周りを飛び回っていた。

 塔ノ倉は山頂からの展望もなく、あまり登られていないマイナーな山ではあるが、花の多い谷歩きからツバキの常緑樹を抜けて、ミズナラやシロモジの美しい天然林の山頂へと、実に変化のある静かな山歩きができる。比較的急登ではあるが、ゆっくり登っても2時間かからない山である。鉄塔巡視路であり道もしっかりしている。車のアプローチも悪くない。静かな山歩きにはお勧めである。ただし、夏にはヤマビルに注意。紅葉の時期も、山頂近くはシロモジの黄色いトンネルがすばらしいに違いない。
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