柳島山
柳島山 (469m 洞戸村) 2004.3.28 晴れ 2人

寺尾神社奥の院(9:18)→北尾根合流(10:05)→柳島山山頂(10:13-10:36)→寺尾神社奥の院(11:17)

 現在、神戸市にお住まいで、かつては武芸川町の桜で有名な寺尾集落に住んでおられたUさんから、3月はじめに次のようなメールをいただいた。

 「千本桜で有名な寺尾から北を見ると、柳島山(468.8)が北側に屏風のようにそびえているのが見えます。寺尾で育った私はいつかこの山に登ってみたいと思っていました。ここは権現山や汾陽寺山よりも見晴らしの良い山だと思いますが、インターネットで検索してもこの山についての記載は無いようです。是非登山して記録をホームページで紹介していただければ幸いです。」

 確かに、柳島山の名前を聞くのは初めてであったし、岐阜県の山を紹介した本やHPにも紹介されていないようだ。車でのアプローチは簡単だし、距離も近い。今日は午後から、用事があるため山行は予定していなかったが、朝から雲1つない真っ青な空に誘われて、半日で登れる柳島山に行くことにした。

 寺尾の桜は開花前で混雑もないだろう。低山であることから、いつものザックではない小さ目のザックに水とお菓子などを詰めて家を出た。いつものザックを持っていかなかったことが、思わぬ事態を招くことを、この時点では全く予期できなかった。

 開花まではもう少しかかりそうな寺尾の千本桜を両脇に見ながら、寺尾の集落に入る。正面に三角形のかっこいい山が近づいてくる。柳島山である。中腹に白い建物らしきものが見える。登山口を探して寺尾小学校北辺りの山沿いの狭い道を車でぐるりと回ってみたが登山口があるような場所はない。

 地図を確認すると集落の一番北に神社がある。寺尾川に沿って下ると、川を隔てて神社が見えた。Uターンして橋を渡り、神社の前の空き地に車を停めた。寺尾神社と書かれている。神社の階段を登り、山際の登山口を探すが見つからない。山神様の石碑が祀られていた。ちょうど、お宮掃除の男性がみえたのでこの山に登ることができるかどうかを尋ねると、ちょっと困った様子で、「下に見える林道を登っていかれるようです」とのこと。

 神社の右に未舗装の林道がある。かなり悪路のところもあり、ゆっくりと車を進める。すぐに右手に社や新しい拝殿が見えた。寺尾神社の奥の院と思われる。周囲の木が伐採され、まだ工事中のようだ。ここでUターンして、路肩に停車。林道は折り返してさらに上っているが、このカーブのところから西に山道があった。林道を登るか山道を登るか迷ったが、山道を選んだ。

 明瞭な道がなだらかに続いている。山道に入ってすぐのところにバケツほどの大きさの三角形の石があり、石の横には提灯を吊り下げたと思われる木の枝が突き刺してあった。山神様であろうか。ササが現れ水の流れを渡る。ショウジョウバカマの花がいくつか見られた。樹間から差し込む光にピンク色の花が浮かび上がってきれいだ。

 道はしだいに怪しくなった。道があるといえばあるが、ないといえばない、という状態である。いつものザックを持ってこなかったので赤テープを忘れたことに気がついた。この時点で引き返して林道を歩こうかと考えていると、道は右に曲がり等高線に沿ってしだいに明瞭になった。幅は30cmほどであるが、明らかに道である。もう少し進んでみることにした。

 左の山側はヒノキの人工林で最近間伐されたばかりらしく、切り倒された木はまだ枯れていない。道は水平に北へ北へと向かっている。どうみても山頂とは反対方向であり、登りもない。これはおかしいと思っていると、急斜面の谷と交差して道は消えた。

 「やっぱりダメか。林道まで引き返そう」 戻りかけると、低いササ付きの尾根に道がありそうな気配。戻るべきか進むべきか。地図を広げて作戦会議。この山の東斜面は大きな尾根や谷がなく上へ上へ進めば必ず山頂に着くことは間違いない。問題は赤テープのない帰りである。下へ下へ降りれば駐車地点をはずしても短時間で車まで戻ることは可能である。東を振り向けば、樹間から板取川左岸の白い川原が見える。磁石で位置を確認。あの川原を目印にすればなんとか戻れると確信して、登ることに決めた。

 道はすぐになくなり、急斜面の人工林の登りになった。林の中の下草はそれほど繁茂しておらず、また間伐された直後であり、潅木をよけながら登る。かなりの急斜面で、枯れ枝をストックがわりに、ヒノキや潅木につかまって、一歩一歩登っていく。軍手を持ってきてよかった。

 赤テープが無く、この状態では確実に今歩いている場所を戻ることはできないと思った。何か印をつけよう。間伐されたヒノキの葉や下草のウラジロの葉をヒノキの皮に差し込んだ。これならかなり上の方からでも確認できる。後方には樹間から板取川の水面が見える。

 やがて少しなだらかになり人工林と天然林の境を登っていく。かすかな道があるようだ。その先で、かなり明瞭な道が北へ緩やかに上がっている。しかし、山頂とは逆方向。道を外して天然林のヤブに入る。常緑樹と落葉樹が入り交じった潅木の急斜面であるが、枝は下部で広がってはおらず、歩きやすい。山頂は近い感じだ。

 ここで、脱色したかなり古い赤テープを1つ見つけた。かつて、同じようにここを登った人がいる。ほっとする。他にテープを探すが見つからなかった。高い方向へひと登りして、稜線に飛び出た。汗だくである。稜線との出合いに枝を置いて目印にした。地図を確認すると山頂へ続く北尾根のようだ。

 稜線にも明瞭に道と言える踏み跡はないが、昔、潅木は少なく道があったようにも思える。ぼろぼろになったビニールテープがいくつかぶらさがっている。時折、樹間から西側の板取川が見下ろせた。ゆるやかに登って数分で山頂に到着。

 山頂はなだらかで広く、ヒノキに覆われ展望はない。三角点と「柳島山」とマジックインキで書かれた板、赤いプラスチック杭、三角点を示す白い杭があり、山頂らしい。なぜか標高は379mと書かれていた。ここを訪れた人がいたのはどいれくら前のことだろうか。しかし、人が適度に訪れていると思われる山頂である。

 西に続く稜線には新しいピンク色のテープがあった。林業用に使うテープのようだ。道もしっかりしている。この稜線づたいに下っていくと、50mおきくらいにテープが付けられていたが、道はしだいに不明瞭になった。3つほどテープを追ってみたが、西尾根を進むばかりで、下り道は無い。車の駐車地点とは逆方向に進んでいくので、これ以上進むことをあきらめた。

 山頂にもどり周囲を散策してみる。東の潅木に赤テープが巻かれているのを発見。2つほど見つけた。道はないが少し下ってみると、小さなアンテナが立っていた、NHKと書かれている。切り開きはわずかであり、その先に道はない。再び山頂へ引き返す。

 コーヒータイムにしようと思ったが、午後に予定が入っており、また順調に車まで戻れる自信もなかったため、簡単なおやつとお茶で一息ついて山頂を後にした。再び今登ってきた道を引き返し、稜線出合いをもう少し先まで進んでみたが、やはり道は不明瞭となっていた。

 さて、いよいよ赤テープなしの下りである。板取川を目印に、樹間を滑りながら下った。先ほどの明瞭な道に出て天然林と人工林の境を下る。行きには気が付かなかったが、少し北に踏み込むと展望のいいところがあった。板取川を挟んで正面に面平山が美しい三角形を作っている。その向こうにはかろうじて矢坪ヶ岳の山頂が見え、左へ今淵ヶ岳に続く稜線が伸びている。今回の山歩きの中での最高のビューポイント。

 さらに下って人工林に入ったが、来たときとはどうも様子が違う。木に付けた葉の目印もない。正面には樹間から権現山が望める。やはり南に寄りすぎている。北方向へ向きを変えながら下る。小さな尾根を越えると再び人工林。滑りやすいウラジロを分けながら下りると、ヒノキに付けた葉の目印が見つかった。正面には板取川が見える。一安心。

 一気に下って、等高線に沿った道に出た。ここからは不明瞭な道をカンを頼りに進む。「通ったところだ」「通っていない」と言い合いながら、ひょっこりと車の前の入り口に出た。道も印もない山では1時間前の通った場所さえ分からなくなる。山で道に迷うことがよく分かった。赤テープは必需品である。GPSも装備したいところだ。今回の山歩きはいい経験になった。

 柳島山に登ったことをUさんにお知らせすると、南側の中腹に観音様があることを教えていただいた。寺尾集落から見えた人工物がこれのようだ。観音様まではどこかから道がつながっているのであろう。

 今回は時間がなかったので、林道を更に奥に進まなかったが、この先も行ってみたいところである。いずれにしても、山頂には明瞭な道が見当たらなかった。西尾根へのテープが気になるところではあるが、ヤブを歩かないと山頂へは到達しない山だと思った。たくさんのショウジョウバカマの花が印象的であった。
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