トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平21業使、第478号) 

南沢山・横川山 (1564m・1620m 中津川市) 2010.9.5 晴れ・曇り 2人

駐車場(9:09)→中間地点まで1km標示(9:44)→中間地点(10:11)→南沢山まで2.1km地点・ピーク(10:13-10:18)→谷コース分岐点(10:21)→南沢山まで0.4km地点(10:52)→南沢山山頂(11:01-11:04)→横川山山頂(11:28-12:29)→南沢山山頂(12:54-12:58)→谷コース分岐点(13:30)→谷出合(13:47)→コテージ群最上部・車止め(14:21)→駐車場(14:26)

 富山県方面の山に登る計画を立てて、出発直前にネットで天気予報を確認すると富山県は午後から雷雨が予想に変わっていた。急遽、方向を東方面に変更して、南沢山へ行くことにした。南沢山は5年前の6月に富士見台から歩いているので、今回は長野県側のふるさと自然園から登る。GPSの地図データを入れ替えて、地図を印刷して出発。

 中央自動車道を東進し、神坂PAに寄る。ちょうど出始めたリンゴが並んでいたので購入。恵那山トンネルを抜け園原ICを出て昼神温泉に向う。温泉手前の国道256号線に合流したところで温泉とは反対方向に左折。国道を北上し、しばらく走るとふるさと自然園への道が左にあり、橋を渡って園内を登る。管理棟を左に、さらに登ると南沢山登山口の標示があり、尾根コースに向って左折。すぐに大きな駐車場があった。1台の車が停まっており、駐車場の左隅に南沢山登山口の標示を見つけた。大きな看板に「(登山の)駐車場利用者へ 使用料として車両中小型500円で許可証を発行します」と書いてある。再び管理棟まで戻って許可証をもらう。
 
 駐車場に戻って靴を履き換える。ちょうど男性2人の車が到着したところ。駐車場の近くにはきれいなトイレがある。お父さんと男の子2人の家族連れ3人が我々よりも一足先に出発。男性2名は車道をさらに歩いて行く。どこに行くのだろうと思ったが、この後、謎が解ける。
 
 人工林の中、谷に沿って右方向へ登る。丸木で整備された道を歩くと、下り始めて、前方にコテージが見える。おかしいと思って引き返すと、左の尾根に沿って道が分岐しており、これが正しい道。ツリフネソウやツリガネニンジン、ホタルブクロ、ヤマハハコなどの花を見ながら登ると、道は左方向に向かい回り込むように進むと、駐車場で出会った3人の家族連れに追いつく。小さい子もしっかりした登山靴を履いており、山歩きに慣れているようだ。将来が楽しみだ。

 ササが茂る人工林を緩やかに登る。右手に古い金網が張られているところもある。南沢山まで3.4kmの標示を見て、遊歩道のような道を歩く。次第に、周囲は天然林となり、地面の木漏れ日を踏んで行く。風がなく汗が目に入る。頭に巻いたバンダナもぐっしょりと濡れている。先月登ったこの近くの網掛山のときも暑かったことを思い出しながら足を進める。「中間地点まで1km」と書かれた赤い看板が現れた。まだ中間地点まで1kmもあるのか。時計を見ると35分歩いたところ。急な登りはないが、距離があるコースだ。

 右手にヒノキの幼木が植林されたやや薄暗い道となる。人工林の隙間から右手にある山々が望めた。真っ白な積乱雲も見える。今回も大気は不安定のようだ。時折、やや急な登りになるが、長くは続かない。ゆるやかな傾斜の登りが多く、時折現れる急斜面に息が切れる。白い金棒のようなシロオニタケが面白い。明るい道となり、斜面をひと登りすると、イワカガミの群落を見る。「中間地点まで0.5km」の標示。先ほどの看板からまだ500mしか歩いていないとは・・・。今日も暑さにバテそうで距離感も掴めない。

 古い丸木がある急斜面を登り詰める。ロープが張ってあり、今までの登りに比べるとかなり急である。なだらかになったところでようやく中間地点の標示。カラマツ林で道はふかふかしている。この先で南沢山まで2.1kmの標示。ちょうどピークのてっぺんであり、1時間ほど歩いたのでここで小休止。道に座り込んでパンを食べる。水を飲むと、すぐ汗になる。ピークではあるが、風はほとんどない。顔にまとわり付く虫が多いのですぐに出発。

 ピークから一気に下る。下りきった小さな空き地に標示板や案内図があり、ここが谷コースとの分岐点となる。分岐点を後にササの道を右山で歩く。カエデやミズナラの気持のいい天然林で、道は登山道というよりは遊歩道のような雰囲気。右に大岩を見て、どんどん歩く。地面にはいろいろなキノコが顔を出していて楽しい。右山ではあるが稜線に出たようで、風が出てきた。鳥の鳴き声が聞こえる。ここから水平に近い道となる。天然林の緑が美しい。道のササはよく刈り取られて、草付の道をゆるやかに蛇行しながら歩く。GPSを見ると山頂までの距離はかなりあるが、等高線の密度は荒い。

 南沢高原まで1kmのプレートが地面に置いてある。まだ1/4の行程が残っている。この天然林もコハウチワカエデやミズナラなど落葉広葉樹が多く、紅葉の時期にはすばらしく美しいに違いない。変化のない単調な道ではあるが、緑のトンネルの中を木漏れ日を踏んで歩くのは気持がいい。
 
 南沢山まで0.4kmの標示を通過。ササの上を飛ぶシジミチョウを見つけた。こういう植生環境で見かけるシジミチョウはゴイシシジミが多い。チョウが止まるのを待つと、羽の裏に碁石のように黒い斑点のあるゴイシシジミだった。チョウの写真を撮っていて気が付いた。ササの葉の裏にアブラムシがびっしりと付いている。ゴイシシジミの幼虫は肉食で、ササなどに付くササコナフキツノアブラムシなどを食べる。今年は高温で乾燥したことからアブラムシも豊富だったに違いない。南沢山から下山してきた単独男性に出会った。南沢山はガスで今にも雷雨がやって来そうな空模様だったのですぐに引き返してきたとのこと。
 
 ササの道を歩き、木々がなくなるとすぐに南沢山山頂に到着。5年前と同じ光景。南沢山の山頂は全く山頂らしくなく、ササに覆われた通過点のようなところ。先ほどの男性の話のように黒い雲が迫り、ガスが流れていた。ただ、すぐ雨になるとは思えなかったので、横川山に向うことにする。

 カラマツの脇を抜けてササの高原を歩き、小さな林を抜ける。林の中の道は湿潤で、マイヅルソウの群落が見られる。カラマツ林を抜けると前方に美しいササの山がガスの中から姿を現す。この山の奥に重なって見えるのが横川山である。横川山へのルートは右方向に見える崩壊地の脇を抜けているのが分かる。足元の小さなオトギリソウはヒメオトギリのようだ。

 崩壊地の縁を登り、何本かの枯れ木の立つササの丘陵を右に見てよく踏まれた急斜面の道を登る。急斜面を登り切ると、山頂はまだ先。ガスが流れる。ササユリの実を見ながら一気に登り切ると、横川山山頂に到着。山頂には駐車場で出会った男性2名。どこから登ってきたのか尋ねると、駐車場の先から近道があり、我々の登ってきた道にすぐに合流したとのこと。管理人さんに教えてもらったそうだ。

 恵那山方面は雲の中。かろうじて富士見台が望めた。5年前に歩いた道が富士見台に向っており、ササの中の一本道が美しい。北には今歩いてきた南沢山の向こうに南木曽岳が見えるが、遠くの御嶽山や中央アルプスは雲の中。足元にたくさんのツルリンドウの花が咲いている。

 この付近は夕立の多発地帯。ぐんぐん湧き上がる雲を見ながら、早速、昼食にする。メニューは冷やしソバと缶詰。頭上を舞うツバメを見ながら、さわやかな風の中で昼食を楽しむ。男性2名を見送った後、誰も登ってこない。天気がよければ富士見台からの登山者も多いに違いない。

 黒い雲が近づいてきたので下山開始。左下には中津川市の田園が見下ろせる。下界は晴れているようだ。気持のいい丘陵を軽快に下って、南沢山に戻った。写真を撮って、下りにかかると登山口近くで出会った親子連れ3人が登ってきた。「いつもはハイキング程度ですが、今日は本格的な登山です」とお父さん。小さい子は4歳だった。この山は道がしっかりしていて、危険な場所もなく、家族連れ向きの山である。雲がなければ最高なのだが・・・。

 南沢山から30分ほどで谷コースの分岐点まで戻った。ここから谷コースを下る。森の家まで2.2kmの標示。カラマツ林の谷をジグザグと下る。こちらの道もササがよく刈り取られている。足元に見られる三角形の葉をした白い小さな花はミヤマタニソバ。南沢山まで2kmの標示板が地面に置いてある。さらに下るとヒノキの人工林となりすぐに谷に突き当たって道は直角に右に折れる。谷川の音が聞こえる。

 壊れかけた木橋を渡って、谷に向って下る。谷の幅は小さく水量も少ないので、簡単に対岸に渡ることができる。小さな滝もある。草の茂る道を歩くと中間地点まで1kmの標示。谷にはイヌアカバナやツリフネソウなどが咲いている。そんな花に交じってアケボノソウを見つけた。もう秋だと実感。木橋を渡って堰堤に上がり、丸木梯子で堰堤を越える。この辺りにはタニタデのユニークな形をした小さな花が見られる。
 
 谷沿いの荒れた道を下り、林道のような道に出る。道の脇を水が流れている。この先で草むらの道となった。頭上にはヤマハギが紫色の花をたくさん付けており、ここでも秋を見つけた。すぐに舗装道路となり歩道も付けられているが、草が覆い、全く整備されていない。この辺りまでコテージを建てる計画があったようだ。倒れた車止めのポールを跨いで、コテージ群の上部に到着。グランドを左に見て、右折し橋を渡ると駐車場に着いた。ふるさと自然園を取り囲む山々の上には過ぎ行く夏の忘れ物の大きな入道雲が立ち上がっている。駐車場に座り込んで食べた神坂PA産のリンゴが美味しかった。
 
 南沢山、横川山へ向う尾根コースは急登も少なく、道は遊歩道のようによく整備されており、危険な場所もない。南沢山まで約4kmと距離はあるが、初心者向きコース。谷コースは草が多く道は不安定な場所もあり、特に増水時は要注意。何といっても南沢山から横川山への天空トレッキングはすばらしい。今度は、残雪期や春の花の時期、紅葉の季節に登りたい山である。
★横川山からの展望


★南沢山・横川山の生き物



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