祐向山の写真
祐向山 (374m 本巣町) 2002.4.6 晴れ後曇り 2名

文殊の森公園駐車場(9:28)→展望台(9:58-10:09)→祐向山山頂(10:48-11:00)→展望台(11:31)→山口城址(11:51-12:47)→中之城址(12:55)→林道終点・山頂トイレ(13:00)→文殊の森公園駐車場(13:30)

 山々が緑に色づき始めた美しいこの時期に、静かな里山歩きを楽しみたいと思い、本巣町の法林寺という集落にある「文殊の森」から祐向山をめざすこととした。

 岐阜市周辺のサクラは、昨日までの強風ですっかり散ってしまったが、根尾村の淡墨桜は今が満開。国道157号線は淡墨桜目当てに北上する車で朝から賑わしい。文殊の森公園は織部の里道の駅のすぐ南にある信号を右折して、「文殊の森」の案内板を頼りに法林寺集落の最奥まで進む。この辺りは柿の大産地で、粗皮を削った芸術品のような立派な柿の木が道の両側に広がる。新芽の黄緑色が美しい。前方にはこれから登る山が萌葱色に染まり、山桜が色を添えている。展望台の避雷針がよく見える。

 文殊の森公園はコテージやテントサイト、長い滑り台などアウトドア施設が整備されたばかりであり、これらの施設を取り囲むように300mクラスの里山が弧をなして北側を取り囲んでいる。この山には尾根筋や谷沿いに幾本もの遊歩道が巡らされており、間伐や植栽が十分すぎるほど行われ、山歩きというよりは公園の中を歩いているといったほうがよい。ただし、主尾根をぐるりと一周するには、結構、歩きがいがあり、展望もよく、また、城跡など史跡もあることから、かなり満足した山歩きができる。

 駐車場を時計の6時の位置とすれば、この森で最も標高の高い展望台は2時、山口城址は11時、めざす祐向山は展望台から東へ稜線を40分ほど歩いた所にある。

 9時過ぎに、駐車場には、数台の車が止まっていたが、施設を利用する人が主であると思われた。園内の地図看板でルートを確認。まずは東尾根に出て、展望台をめざす。東への道はいくつかに分かれているが、居合わせた男性の登山者の話では、どの道を登っても尾根に出て展望台へ通じるそうだ。

 丸木階段でよく整備された広い散策道を登る。足下のスミレが美しい。終わりかけのシュンランもある。よく間引かれた森は明るく気持ちがいい。すぐに尾根に出て、北へ向きを変え、避雷針のある展望台をめざす。駐車場が小さく見える。後方には濃尾平野が広がり、池田山が霞んでいる。

 尾根の周囲に高木は少なく、北東には人工林の半分が大きく切り開かれ、伐採された木々が階段状に置かれている祐向山がよく見える。その南には、百々ヶ峰や金華山が浮かぶ。この角度から見る山容も美しい。

 丸木の階段は結構疲れる。頭上からの太陽と初夏並みの陽気に、汗が出る。歩きはじめてちょうど30分で展望台へ。展望台にはフェンスに囲まれた太陽電池で動く防災関係施設と大きな避雷針がある。ベンチで一服。北側は針葉樹で視界が遮られているが、南側はすばらしい展望である。

 さて、いよいよ祐向山へ向かう。展望台から東へ、薄い踏み跡を急降下する。いきなり道が分からなくなる。辺りを目を凝らして見回すと、赤いタフロープがある。左へかすかな踏み跡がある。赤いテープのほか、白や青のテープもある。まずは、このテープが目印。50本ほど用意した赤いタフロープを付けながら進む。かすかな踏み跡も手がかりになる。また、常に尾根を歩けば、間違いはない。

 途中、赤いテープは尾根をはずれて南側の灌木の中を進むが、やがて尾根に出てしっかりした道になる。尾根からの展望はないが、満開のミツバツツジや新緑が美しい。ツゲやネズミサシに行く手を阻まれ、小枝や蜘蛛の巣に悩まされる。2・3度、藪に迷い込み立ち止まってテープを探す。ルートファインディングの楽しみはここにある。尾根がなくなるところもあり、この辺りが迷いやすい。半袖で入り込んだことに後悔。両腕が擦り傷だらけになった。

 暗い人工林を抜けると、いきなり広い山頂に着いた。山頂までは、さほど大きな登りはない。広い山頂には、中央に三等三角点と杭があり、南側は大きく伐採されており、いくらかの木はあるものの金華山方面の展望が得られる。山頂で日向ぼっこをしている2匹のギフチョウが私たちを迎えてくれた。久しぶりに春の女神に出会ったことに感動。

 早速、今来た道を引き返す。今来た道でも帰りは全く道が分からなくなることが山の怖いところである。帰りも、2・3度ルートを踏み外した。展望台手前の急坂にコシアブラの群落がある。タラの芽に負けない山菜である。一部の芽が摘まれている。夕食のビールのつまみに少し芽をいただいた。

 展望台からは、主尾根を一周して駐車場に戻ることにする。展望台から一旦、大きく下って山口城址のあるピークに向かう。ウグイスに応援されながら、丸木階段を息を切らして登る。標高344m。山口城址は東西に長い平坦なところで城があったことを伺わせる。展望もすばらしい。眼下の根尾川を見下ろしながら、昼食を楽しむ。春うらら、すっかり雲広がり展望は今一つであるが、なんとも気持ちがいい。誰も登ってこない。ごろりと横になって昔はここで誰が何をしていたのだろうなどと思いを描く。山口城主は、1187年に梶原平三景時、1567年に古田織部であったと伝えられている。

 昼食の後、南へ急な丸木階段を下り展望台のある中之城址へ。さらに下ってトイレのある林道終点へ。鳥が鳴く展望台と東屋が南にある。ここから、東に続く未舗装林道に入り、途中から右手の階段を下った。ここでイワカガミの可憐な花を見つけた。駐車場の案内標識に従って学習の森を抜け、急なザレ道を滑りながら下り、再び舗装林道に出て、そのままバーベキュウを楽しむ人で賑わう駐車場に下りた。

ハイキング気分とヤブこぎが一度に楽しめる山は珍しい。夕食に食べたコシアブラのてんぷらは最高のご馳走であったことは言うまでもない。
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