トレースマップはカシミール3Dで作成
*この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用しています。(承認番号 平22業使、第490号) *点線は推定トレース 

象鼻山 (130m 養老町) 2011.1.23 曇り・一時小雨 2人

象鼻山登山口(8:34)→象鼻山東屋(8:56-9:08)→1番鉄塔(9:13)→34番鉄塔(9:59)→35番鉄塔(10:20)→1番鉄塔(10:38)→36番鉄塔分岐点(11:03)→送電線下展望地(11:08-12:23)→37番鉄塔(12:44)→境野集落農道(12:55)→象鼻山登山口(13:45)

 垂井町から上石津へ向かうとき、牧田川の堤防に出る手前にある「象鼻山登山口」という標示板が気になっていた。象鼻山をネットで調べてみると、ジオンさんをはじめいくつかのレポートがある。象鼻山から北西に尾根をたどれば南宮山につながっており、鉄塔巡視路を経由して南宮山まで歩けることが分かった。先日の大雪で積雪量はかなり多いと思われたが、象鼻山から南宮山方向に歩いてみることにした。1年前、大雪で南宮山まで行けなかったが、今回も雪は多そうだ。鉄塔巡視路は雪で不明瞭だと思われたので、GPSに取り込んだ地図上にウェイポイントを落としてルートが見えるようにした。

 国道21号線で垂井町に入り宮代の信号交差点を南へ曲がって、新幹線の高架を潜る。右に南宮山の山塊が迫る。この山塊の左端にある山が象鼻山で、山らしいピークは見えない。南宮山を象の顔に例えれば、山頂から南東に伸びる稜線はまさに象の鼻。地図を見ると象鼻山と名前がついた理由がよくわかる。道は象鼻山を回り込むようにして名神高速道路の下を抜けて牧田川に突き当たるが、高速道路を潜る200mほど手前に象鼻山登山口が山側にある。

 登山口の少し西にガードレールで仕切られた駐車スペースがあり、除雪された雪がまだ残っていた。この雪に乗り上げるようにして車を止めた。道の反対側には石材工場がある。 靴を履き替えようとして、スパッツを忘れたことに気づいた。山はかなり雪がある。やむを得ず、ズボンの裾をゴムバンドでしばって歩くことにする。ズボンは防水なので何とかなるだろう。
 
 雪に備えてワカンと6本アイゼンを持ってスタート。古墳群の入り口に入ると車止めのロープの脇を抜けて未舗装の道を歩く。除雪されており、タイヤの後が残っている。コンクリート舗装を抜け、再び未舗装になる。簡易トイレがあり、その先には古墳の発掘が行われていると思われる場所があった。ブルーシートで覆われた発掘現場付近にはテントや土嚢が置いてある。
 
 除雪してあるのはここまで。枯れたスギの葉が散乱した雪道を歩くと左に2番鉄塔がある。右に下れば3番鉄塔。1番鉄塔の左へ歩く。20cmほどの積雪であり、トレースがある。左回りで坂を登っていくと開けた場所に出た。たくさんのカラスが広場から舞い上がった。桜の木が植えられており、東屋や石碑、御社などがあり、ここが象鼻山である。この先、雪が増えることを予想してワカンを付ける。先行者のトレースはここまで。
 
 東屋を後に、広場を横断して北にある小山を目指す。この小山は古墳であり、左側から回り込むと前方に鉄塔が見えた。樹林帯を抜けて1番鉄塔の下に出た。この先、下り斜面となり、道らしきものはない。正しいルートは右に歩いて等高線沿いに進むのであるが、斜面を真っ直ぐに下ってしまった。浅い谷に下りて目の前のピークへ登り返す。広葉常緑樹が多いが、思ったよりも疎林で、どのようにでも歩ける。地図で道がこのピークの左にあることを確認して左方向に向かうと、黄色い鉄塔番号の表示板と道らしき痕跡を発見。この先は32番の標示がある。
 
 右山で歩くと分岐点が現れた。ここは赤テープのある右の33番方向に行く。右山が続く。オレンジ色の朝日が雪にいくつかのスポットライトを落とす。左手の樹間から養老山が見える。再び分岐点に。ここは34番方向の右へ。左は33番となっている。等高線に沿うように蛇行しながら小枝の散乱した雪の上を歩く。雪による倒木も多い。

 細いトラバース道を歩いて、人工林の斜面を登ると、明るい34番鉄塔下に出た。樹木が邪魔しているが目の前に養老山が見える。鉄塔下でワカンのバンドを締め直して折り返すように尾根道を歩く。この辺りは南斜面で雪は少ない。倒木を潜ったり跨いだりして、赤テープを追って一直線に近い尾根を歩く。15分ほど歩くと尾根に突き当たって左に向きを変える。この右にある小さなピークは標高235.6mの三角点があるピークのようだ。時間がないので三角点は確認せず、向きを左に変える。なお、ここを右に行けば栗原集落に下れるようだ。
 
 2分ほど歩くと35番鉄塔の右を通過。鉄塔下から養老山の山頂付近が見える。雪が深くなってきた。頭上に木がないところは特に雪が深い。樹上の雪が溶け始めて、シャワーのように水滴が落ち始めた。気温は2度C。歩き始めて2時間近くたっており、頭上に木のないところで休憩。パンを食べて地図と時計を見る。帰路の時間を考慮すると、このピッチでは南宮山どころか毛利秀元陣所跡展望台までも難しそうだ。見上げれば青空は消え、怪しい黒い雲に覆われている。

 先を急ぐ。皮がはがれたスギの木が多い。登山口から切れ間なく鹿の足跡が見られ、この山にはかなりの鹿が生息していると思われた。雪を跳ね上げながら歩くと前方が開けて鉄塔の下に出た。ここが1番鉄塔。この山の鉄塔は複数のラインが混じっており、番号は単純ではなく、象鼻山山頂付近にあった鉄塔と同様、ここの鉄塔も1番である。「深い!」 鉄塔下はワカンでもかなり沈む。南側には養老山が見えるが、黒い雲が山頂を隠し、今にも雪が降りそうな気配。冷たい風が抜ける。
 
 ここでトレースを発見。反対側からこの鉄塔まで来た登山者があったようだ。ツボ足のトレースはおそらく昨日のもののようだ。雪が深くなったこともあり、このトレースはありがたい。小雪が舞い始めた鉄塔を後に、トレースを追って急斜面を下る。滑らないように急な斜面を踵から踏み込んで下る。
 
 下りきったところに鉄塔巡視路標示板のある分岐点があった。トレースが36番鉄塔方向に続いていたので迷わずトレースを追った。この時点でトレースは南宮山方面から続いていると思い込んでいたが、実は南宮山方面はここを左に向かうのが正しかったようだ。「不破郡宮代・栗原村境」の石柱を見ながら人工林の尾根を歩く。
 
 GPSを見て驚いた。ウェイポイントを北に大きく外れている。ここで初めて、このトレースが南宮山方面からのものでないことに気がついた。地図を見ると1番鉄塔から北に続く巡視路にトレースがついているようだ。このトレースを追えば境野集落に下りられるだろう。分岐点まで戻ろうかとも思ったが、すでに11時近いし、空模様も怪しい。今回は南宮山方面を諦め、計画を急遽変更して境野集落へ下ることにした。

 黄色い標識が2つ立つ分岐点に出た。36番鉄塔が右となっている。境野集落へ下る鉄塔は2ラインあり、わずかな間隔でほぼ平行線に近い。先ほど通過してきた35番鉄塔のラインと1番鉄塔のラインである。トレースは標示のない道を下っており、たぶん1番鉄塔ラインの北への巡視路と推定できた。36番鉄塔に向かいそこからの鉄塔巡視路を下ったほうが、より東側へ下山できそうであるが、雪で巡視路が不明瞭なことも考えられるので、安全策としてトレースを追うことにした。なお、この分岐点から西へテープがたくさん下がっている道があり、おそらく尾根伝いに南宮山方面に行くコースではないかと推定されたが、この検証はまたの機会に。

 トレースを追って一直線に下っていく。右は明るい谷で、谷の先には集落が見える。下山する前に昼食にすることにして、適当な場所を探すと右の谷側に雪の積もったテラスを見つけた。送電線の下の樹木を伐採したところで、葉のないササの藪を抜けるとすばらしい展望地に出た。

 目の前には、広大な濃尾平野が広がる。遠くには金華山も見える。いつもなら逆方向に見る平野を、今日は南から眺める。すぐ下に鉄塔があり、ちょうど2頭のニホンジカが谷から鉄塔下に上ってきたが、我々の姿を見つけて、すぐに谷に引き返して行った。ニホンジカを見たのは久しぶりだ。この雪のテラスの上にもシカの足跡や糞があり、シカの多いことがわかる。

 ここを昼食場所に決め、ワカンで雪を踏み、ガソリンストーブに火を入れた。熱いおでんを食べながら雪の消えた平野を眺める。白い新幹線がミニチュアのように田園を横切っていく。新幹線の音が少し遅れて聞こえるのが面白い。頭上は灰色の雲に覆われているが、岐阜市方面は晴れているようで、建物が白く輝いている。すぐ下には境野集落が見える。ここは標高150mほどであり、下からもこちらの姿が見えるにちがいない。

 風もなく、時折、雲の隙間から日が差し込む。おでんの後、雑炊を作り、いつものようにコーヒーを沸かす。立ち上がる湯気の向こうから、正午を告げるチャイムが聞こえてきた。コーヒーを飲みながら、下山ルートを考える。このまま鉄塔を下ると南宮大社に近い西方向に下ることから、もう一度先ほどの分岐点まで戻って、36番鉄塔の巡視路を下ろうかと思った。ところが、そんなことを考えているうちに、小雨が降り始めた。急いでパッキングをして、引き返すのをやめ、トレースを追うことにした。
 
 明るい巡視路を下る。先ほどシカが上ってきたすぐ下の鉄塔を通過。小雨が降り、伊吹山は垂れ込めた黒い雲の中。下に続く鉄塔が左へカーブしている。溝状の道を滑らないように下っていくと、人工林の境の道となり雪が消えたのでワカンをはずす。少し下ったところで、東の鉄塔へ行く分岐点があった。ここでトレースと分かれ、ヒノキの幼木林へ。道が不明瞭だが、強引に下っていくと鉄塔巡視路の黄色い標示が現れ、下の鉄塔は37番、上は36番とある。下ってすぐに鉄塔下に出た。37番のようだ。
 
 人工林の中、明瞭な道を下って金網の張ってある細い橋を3つほど慎重に渡って茶畑の横に出た。夏ミカンの木があり、下方の葉はほとんどがシカに食べられて、実もいくつか落ちている。シカが田園に出ないように張られたワイヤ−メッシュの柵を開けて農道に出た。

 山すその道を歩き、境野集落を抜けて、車で南下した車道を象鼻山目指して歩いた。駐車地点手前で山裾にある3番鉄塔付近を散策しながら、車に戻った。下山してから車に戻るのに道草をしたので50分ほどかかった。帰路、栗原集落付近で象鼻山山中にある九十九坊や連理のサカキへの進入路を確認。今回歩いたコースの近くにあり、次回は、これらに寄りたいと思った。

 今回は雪が多く、道が不明瞭で自分の位置を把握するためにGPSが大いに役に立った。GPSがあっても、分岐点が多く、鉄塔巡視路を頭に入れておかないと、道を誤りやすいので、雪の時期には要注意。今回、雪のため象鼻山から南宮山へのコースの半分しか歩けなかったが、この山の鉄塔の状況が把握できたので、次回は雪のないときに再挑戦をしてみたい。
★象鼻山周辺からの展望

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